【読物】ラグナロック、銀河警察誕生編
ラグナロック ![]()
銀河警察誕生”編
Miryu
■登場人物
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テラザリア
カミエル(ラグナロック・蒼月大介)…主人公。テラザリアの次期王。銀河最強のエスパーであり、テラザリアを失った後、銀河平和のために長い時間をかけて『銀河警察』を設立する。緑髪・右は黄金眼、左は蒼眼。テラザリアを失った後、ESP能力に完全覚醒してから普段でもオッドアイのままであるため、右目を隠すために右目に髪をかけている。またその時より不老不死の肉体となる。ESP能力MAX発動時は髪の毛とオーラの色が黄金色になり、魔法陣が出現すると、黄金の剣を召喚し戦う。
ビイ…カミエルの双子の弟。金髪蒼眼。
マリア…カミエルの兄以上の存在として慕う妹。金髪碧眼。
ラーラ・マーナ…太陽神ラーの娘。カミエルの恋人。死んだ後も度々、彼の夢などに現れ、彼を導くことになるが・・・
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銀河警察
ソフィア・グレイス…戦争孤児。銀河警察の天才科学者。サイボーグや戦闘用プロテクター開発に従事する。ラグナロックに異性として好意を寄せている。
RED…ラグナロックに近い境遇で、とある星の皇子。幼少の折、エスパー盗賊団に一族を惨殺され、星も破壊されたが、何故か妹だけが生きたまま連れ去られた。運良く命だけは助かった彼は全身の七割を戦闘用サイボーグ化し、一族の復讐と妹の捜索の為に銀河警察の特殊刑事となった。エスパーを毛嫌いしているが、命の恩人のラグナロックだけは「オヤジ」と呼んで慕っている。
ソフィエル(ゾフィー)…銀河警察副司令官。ラグナロック同等の権利行使できる。実質、裏で銀河警察を仕切っている。クールでやり手。金髪蒼瞳。
ローネル…銀河警察副官。司令の補佐。採決権などは持たない。秘書。藤紫髪緑瞳。
クロード…銀河警察特殊エスパー部隊総隊長。青髪青瞳。
レイディ…戦争孤児で一切の記憶を失っている。ラグナロックでも失われた記憶を呼び覚ますことは現段階では不可能。
未知数のESP能力を持ち、『銀河戦士』である。裕のパートナー。REDと同じく幼少の折にラグナロックに助けられたので、彼を養父として慕っている。蛍光緑髪ピンク瞳。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
◆地球とよく似た青い惑星、テラザリア
ビイ 「(怒って)兄上!
何をしているのですか?」
パイロット「…チッ(舌打ち)、もう見つかったか」
ビイ 「明日は戴冠式を控えた大事なお体です。
すぐに戻って下さい、良いですね?」
パイロット「(仕方なく)了解!」
戦闘機は地上の城めがけて急降下をかける。
◆城内・戦闘機の屋内発着場
ビイ 「兄上!お戯れが過ぎます!」
バイロットがヘルメットを外すと、深緑の長い髪がハラリと肩に落ちる。髪の色と髪の長さは違うが、パイロットの素顔は金髪の青年と瓜二つで、瞳の色は全く同じ蒼い色をしている。
カミエル 「(溜息混じりに)まぁ、そう言
うな…。明日の戴冠式が終わればこうした自由も全く失うのだぞ。
オレの身にもなってくれ!」
カミエルは話しながら傍に居た士官にヘルメットを渡し、ビイと共に足早に城の中へと入っていく。
ビイ 「兄上のお気持ちもわからないでもない。
しかし兄上のお体はもはや兄上お1人のものではないのです!
もう少し自覚を持って…」
◆城内・緋色の絨毯が敷かれた廊下
カミエル 「オレは元々、まつりごと政には向いていないし、
じっと玉座に座って誰かに護ってもらうのは性分じゃない。
むしろ、戦闘機を駆って“王”を護る立場の方がしっくりくる。
王位継承権は双子の弟のお前にもあるんだ。
お前が王の座に就くべきだとオレは思う」
ビイ 「父上が亡くなられてから・・・僕達が成人するまでの間、
それはもう何度も話し合い、元老院達も納得の上、
兄上が王位継承することを決定したのです。
今更そんな我侭は赦されません!
それに、兄上は王になるべくして生まれてきたようなものだ。
人格・人望もあり、あらゆる分野においてもその才能は抜きんでている」
二人は王の部屋への直通エレベーターに載る。
◆エレベーター内
むしろオレよりも温厚な性格のお前の方が、
人々の上に立ち、統率するには向いていると思うぞ。
ともすれば感情で動いてしまうオレに…とても王が務まるとは思えない」
ビイ 「そんなことはない!
貴男はテレパスを持つ一族の中で、
ただ1人強大なESP能力を持って生まれてきたんだ。
それにはきっと意味がある筈です!」
エレベーターが止まり、扉が開く。
◆城内、上層階・王の執務室
カミエル 「…見てみろ。この平和で豊かな星にESP能力なんて必要はない。
逆にこんな特異な力を持つオレが星を治めることによって、
かえって諍いを呼び込んでしまうかも知れない」
ビイ 「確かに僕達の星は平和で豊かだ。
貧困に喘ぐ者もいない、銀河の理想郷です。
だからこそ、この星の豊かな資源を狙う者が後を絶たない」
カミエル 「ああ、そうだ。
そして、我々のいかなる戦争にも介入しないという
中立の姿勢を好くは思わない連中もこの銀河には多くいる。
今は良いが星間戦争でも勃発すれば、
どんなに中立の立場を守っていてもこの星にも戦火が及ぶだろう…」
ビイ 「ええ、そうなるでしょうね。でもそんなことにならないように、
僕達が手と手を携えて、
この星とこの星の人々を守らなければならないのですよ」
カミエル 「…その時はお前が止めてもオレは戦いに行くぞ!
この星の王ならば尚更、
王は命に代えて民を守る義務があるのだからな!」
ビイ 「(笑顔で)わかっていますよ、兄上。
その時はちゃんと僕もお手伝いします」
カミエル 「願わくば、そんな未来は来ないでもらいたいものだがな…。
(苦笑して)いくらこの星で最強のエスパーと言われても、
残念ながら、オレには未来を透視する能力はないがな」
ふいに彼らの背後に近づいてくる女性二人。
マリア 「…でも先に“未来”がみ視えちゃったら面白くないわ!
人生は明日何が起こるかわからないから楽しいのよ」
ラーラ 「ええ、そうですわ。
未来を視たり、時間を超越したり、死んだ命を蘇らせる能力なんて
人間が持ってはいけない“神の力”です」
カミエル 「マリア! ラーラ・マーナ!」
ラーラ 「でもほんの少し先の未来なら、私にも視ることは出来ますが…」
マリア 「ラーラ姉様は、太陽神の娘ですもの!
俗世の兄様とは違いますわ」
カミエル 「マリア~っっ!」
ビイ 「マリア、ほら、行くよ。
戴冠の儀が終わった後は続けて、兄上とラーラ様の結婚の儀なんだ。
二人だけの話もあるというものだ」
マリア 「あぁん、私もカミエル兄様ともっとお話したいのにぃ~っ、
いっつもビイ兄様かラーラ姉様がカミエル兄様を独占してばかりだわ~、
つまんない(ぷぅと頬を膨らませる)」
ビイ 「マリア、仮にも王女がはしたないぞ」
ビイ、マリアの背中を押しながら部屋を退室
ビイ 「では、兄上、ラーラ様とごゆっくり(悪戯っぽく笑う)」
カミエル 「あいつら…」
ラーラはクスクスと笑いながら、窓辺から眼下を見る。が、途端にその笑顔が曇る。
カミエル 「どうかしたのか? 何か心配事でも?」
ラーラ 「…明日はカミエル様の戴冠式だと云うのに、
何故か心がざわめくのです」
カミエル 「(そっと後からラーラの肩を抱き)
…明日はオレ達がやっと一緒になれる日でもある。
ずっとこの日を待っていたんだ。長かった…」
ラーラ 「カミエル様…」
カミエル 「二人だけの時はカミエルでいい。
王族とか神に仕える一族とか…
そんなものがなければ、オレ達はただの幼馴染だったはずだ
(ラーラの首筋に軽く唇を当てる)」
ラーラ 「カミエル…」
カミエル 「心配ない。明日になればその不安もなくなる。
これからは昼も夜もずっとキミを離さない、
愛しい人…(今度はラーラの唇に口付けようと)」
キスシーン・アップからひいて、窓からの光の中、二人の影が一つに重なる。
◆戴冠式当日(街・城外)
◆戴冠式(城内大広間)
広間の中、名だたる名士達、招待客がひしめきあっている。広間の中央から奥へと延びる緋色の絨毯の上を正装したカミエルが配下を伴って玉座に向かってゆっくり雄雄しく歩いてゆく。
カミエルが、ラーラ、マリア、ビイ、元老院達の前を通り過ぎていく。
◆惑星テラザリアを臨む宇宙空間
◆大型級宇宙戦闘艦・艦内
消してしまうには勿体ない星だが…」
副艦長 「しかし、銀河帝国としては
更なる侵略を進めるには最も妨げとなる中立国家。
この宇宙から跡形もなく消えてなくなる方が
都合がいいというわけですね」
艦長 「銀河帝国からの依頼というのは意外だったが、
報酬を頂いた以上は確実に“仕事”はやるさ。
その上、我々の開発した新型メガ粒子砲は
惑星をまるまる一つ宇宙から消し去る、という良い宣伝にもなる!」
船員 「メガ粒子砲、エネルギー充填まで残り六十%!」
副艦長 「今日は新王の戴冠式、他の星からのVIPも多数招いているはずだ。
そのVIPごと銀河の大資源の星一つ消えるのだ。
これは銀河宇宙の混沌のプレリュードだ、フフフフフ」
副艦長 「メガ粒子砲で一瞬で消え去る連中は
どんな気持ちで最期を迎えるんでしょうねぇ?」
船員 「メガ粒子砲、エネルギー充填まで残り五十%!」
艦長はじめとする船員が一斉に眼を護る保護マスを装着する。
艦長 「…ほんの一瞬だ。
空が白く輝いたのを見た瞬間に全てが終るだろうさ。
痛みも苦しみもない。
テラザリアの民は新王誕生の瞬間には皆で天国さ、
これ以上の幸せはないだろう、ワハハハハハ」
◆戴冠式(城内大広間)
ビイ 「(誇らし気に)兄上…!」
続いて、王のロッドを託されるカミエル。
城内に巻き起こる人々の歓声。
至極の笑みを浮かべる新王カミエル。
ラーラ 「(微笑)カミエル様…」
だが、次の瞬間にラーラの表情が凍りつく。
ラーラ 「! 悪魔の光が・・・来る!」
◆大型級宇宙戦闘艦
◆大型級宇宙戦闘艦・艦内
船員 「メガ粒子砲、エネルギー充填完了!」
◆戴冠式(城内大広間)
ビイ 「どうされました、ラーラ様?」
ラーラ、式典の最中であることも忘れ、カミエルの元に全力で駆け出す。彼女のただならぬ様子にざわめく城内。
危うくドレスの裾を踏んで転倒しかけたラーラを、カミエルが抱きとめた。
カミエル 「ラーラ?」
ラーラ 「悪魔の光がこの星を貫きます!
カミエル様、すぐにサイコバリアでこの星を包んで下さい!」
カミエル 「(ラーラの突飛な発言に怪訝そうに) ラーラ、何を言っている?」
◆大型級宇宙戦闘艦・艦内
艦長 「ターゲット、テラザリア!
撃て――っっ!」
戦闘艦の主砲が放たれ、一条の光がテラザリアの首都にむかって一直線に伸びる。
◆戴冠式(城内大広間)
ラーラ 「…間に合わない!
光が…光が命を喰らう!」
カミエル 「ラーラ?」
城の外がまぶゆい光に飲まれていく。
ラーラ 「貴男の未来に一緒に行けなくてごめんなさい。
…カミエル、どうか生きて!
私の心はいつも貴男と一緒――っ」
ラーラの言葉が終らない内に世界のすべてが白い光に飲み込まれてしまう。
◆惑星テラザリアを臨む宇宙空間
◆大型級宇宙戦闘艦・艦内
◆惑星テラザリアを臨む宇宙空間
エネルギーがテラザリアを貫き、テラザリア全体が白い光に包み込まれ一瞬にしてテラサリアは大爆発を起こす。エネルギー鉱物を多く含んでいるだけにその爆発は普通の惑星よりも凄まじいもので、戦闘艦も爆発の光に飲まれた。
◆大爆発が治まった宇宙空間
カミエル 「・・何? どうしてオレは宇宙にいる? ラーラ…は? 皆は? 戴冠式は?」
そう呟いたカミエルの脳裏にフラッシュバックがおこる。
(回想)
ラーラ 「悪魔の光がこの星を貫きます!」
そのラーラの頬に光る涙。
ラーラ 「…間に合わない!
光が…光が命を喰らう!」
城の外がまぶゆい光に飲まれていく。
ラーラ 「貴男の未来に一緒に行けなくてごめんなさい。
…カミエル、どうか生きて!
私の心はいつも貴男と一緒――っ」
全てが白い光に飲み込まれ、テラザリアが大爆発するイメージが、カミエルの脳裏に蘇る。
刹那に失われていく人々の命。
三十二億の魂がカミエルの“なか”を通り抜けて行く。
カミエル 「うわああああぁぁぁぁぁっ」
悲しみとも苦しみともつかない人々の断末魔の“念”をその身に全て受ける。
カミエルの頬に伝う涙がいつしか血の色に変わっていた・・・。
カミエル 「・・皆、死んでしまった。
ラーラも・・ビイも・・・マリアも・・・星の全ての人。
何の罪もない多くの人々。
誰一人・・誰一人、オレは護ることが出来なかった!
エスパーなのに!
何の為のESP能力だ!
ビイ、オレは何も出来なかった!
・・何がテラザリアの王だ・・・!」
静かな宇宙で泣き崩れるカミエルの前にユラユラと人の姿が浮かぶ。
悲しい微笑を湛えるマリア。
マリア(回想)「…でも先に“未来”がみ視えちゃったら面白くないわ!
人生は明日何が起こるかわからないから楽しいのよ」
カミエル 「マリア…オレに未来が視ることが出来たなら…こんな結果には――っ!」
涙しているラーラ。
ラーラ(回想)「悪魔の光がこの星を貫きます!
カミエル様、すぐにサイコバリアでこの星を包んで下さい!」
カミエル 「ラーラが…折角予知したくれたのに、
オレは何もすることが出来なかった・・・」
黙ってじっと見つめるビイ。
ビイ(回想)「貴男はテレパスを持つ一族の中で、
ただ1人強大なESP能力を持って生まれてきたんだ。
それにはきっと意味がある筈です!」
カミエル 「ビイ、オレを責めてくれ! オレを―!
何も、何もすることが出来なかったオレを・・・。
オレは何の為にESP能力を持って生まれたんだ?
オレは・・・」
カミエル、ハっとして顔を上げる。
何処かから、男達の嘲笑が脳裏に響いてくる。
男の声(艦長)「見事でしたね! 本当に一瞬だった。
テラザリアの奴等はどんな顔してあの世に逝ったか
見物したかったですね、ワハハハハ・・・」
カミエル、ざわッと全身が総毛立つ。
男の声(副艦長)「キャプテン、この粒子砲さえあれば、
帝国軍も連邦も敵ではありませんね」
カミエル、一度、眼を閉じる。オーラがゆっくりとたちのぼり、ゆっくりと全身を金色の光が包んでいく。
男の声(艦長)「フフ・・いっそ我々がこの銀河を手中に治めてやろうか、ウハハハハハ!」
カミエル、カッと眼を見開くと、右目が金色に、左目は蒼白い光を放っている。
カミエル 「奴等か! 絶対に赦さない!」
カミエルの全身が金色に揺らめくと、テレポートする。
◆大型戦闘艦・艦内
艦長 「エ・エスバーか? き・貴様は一体何者だ?」
艦長、副艦長、他、一斉に腰のブラスターを抜いて構える。が、次の瞬間、カミエルが右手を胸の前から外へ向けて払うと、全てのブラスターは暴発する。腕が血しぶきをあげる者、腕が木っ端微塵になる者、顔に火傷を負う者。
男達 「うおっ!」
「うわっ!」
「あつっ!」
「ぎゃっ!」
一瞬にして、その場の恐怖に色めきだつ。
カミエル 「――貴様らか? テラザリアを撃ったのは?」
艦長 「だ・だとしたら何だと言うのだ?」
カミエル 「あの星の何の恨みがあった?」
艦長 「恨みなどないな。我々は雇われ者だ。
星を一つ消せと、金を積まれればその依頼を果たすまでのこと」
カミエル 「星一つ・・・三十二億の人々の命を何だと思っている?」
副艦長 「ハッ、何とも思いやしないさ。
あの星の死に損ないか?
だったら、とっと仲間のとこに逝っちまいな――っ!」
副艦長は別のブラスターでカミエルを撃つが、ブラスターのエネルギーはカミエルの前のサイコバリアに弾かれる。
副艦長は連射するが、全てバリアに弾かれ、エネルギー切れ。
カミエル、副艦長の前にテレポートすると、彼の頭をがっちりと鷲づかみにし、ギッと彼を睨みつける。副艦長はガチガチと歯を鳴らし、恐怖する。
カミエル 「見せてやるよ、三十二億の人間の最期の瞬間を――っ!」
副艦長の脳に直接流れ込むカミエルの記憶、人々の死の瞬間。彼は己れの胸を狂ったようにかきむしりショック死する。
男を手から離すカミエル。
それを目の当たりにし、腰を抜かす者。
カミエルに向かってブラスターを乱射する者達。
カミエル、攻撃してきた者を同時にサイコキネシスでクラッシュ。ブリッジが血の海になる。カミエルもその血を浴びて、夜叉のようになる。
流石の艦長も恐怖を隠せない。
艦長 「貴様は一体誰だ?」
カミエル 「オレはテラザリアの王・カミエル!」
艦長 「ハ・・ハハハハハ! これは傑作だ!
王だけが一人生き残ったのか?
星も人も失って、何が王だ? ワハハハハ!」
艦長は狂ったようにけたたましく笑う。
カミエルは冷たい表情のまま、右手にエネルギーをため、光の剣を作り出す。
カミエル 「ああ、自分でも情けなくて笑えるね、
一人生き残って何が王だってね…。
でもそれでも、生き残って良かったと思うこともある!」
カミエルの放つ光の剣が艦長の胸を貫く。
カミエル 「生き残ったからこそ、逝った人々の無念を晴らせる!」
艦長、口からガボッと大量の血を吐く。
カミエル 「地獄で詫びるがいい!」
艦長、息絶える。
カミエル 「貴様ら全員、生かしてはおかん!
そして、貴様らを雇った帝国の腐った奴らも!」
ブリッジの船員、逃げようとするが、カミエルのサイコクネシスで全員壁や天井・床に叩き付けられ、グシャという音をたてて息絶える。
カミエル、宇宙船の外にテレポートする。
テラザリアを撃った主砲がカミエルを睨みつけているかのようにギラリと光った。
カミエル、憎悪に完全に身を任せると、彼の全身がより一層金色に輝きだす。すると、長い緑の髪も金色に変化し、彼の足元に何やら古代文字が描かれた金色の魔法陣が浮かび上がった。
カミエル 「人の命を奪う物――!
こんな物があるからいつまでたってもこの世界から戦いが終らない。
悲しみが終らないんだ…」
足元の魔法陣から、巨大な金色の剣が排出され、それを手にして構える。その頬には涙が
滂沱と溢れ出ている。
カミエル 「オレは悲しみの連鎖を断つ――っっ!
はあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
カミエル、巨大な剣を振りかざし、憎き砲門ごと戦闘艦を真っ二つに一閃した。
戦闘艦は暗い宇宙にまぶゆい光を放ちながら大爆発し、宇宙の海に沈んでいった。
◆漆黒の宇宙空間
カミエル 「…まだ、まだだ。まだ、オレは
死ねない。オレから全てを奪った者達を、
何の罪のない人々の命を平気で奪い、
私利私欲を肥やす者達を根絶やしにするまで…オレは死ねない!
いや、絶対に死ぬことは赦されないんだ・・・」
カミエル、再び、テレポートする。
◆銀河帝国・闇の元老院
男 「き・貴様は一体何者だ?」
カミエル 「オレは神々の黄昏――ラグナロック! 神が裁けぬ悪はこのオレが裁く!」
カミエルの全身が光輝き、その場が光に包まれる。
次の瞬間、街の中のとある建物が大爆発していた。
ラグナロックと名乗ったカミエル、天空よりそれを見下ろすしていたが、やがて、テレポートして姿を消す。
◆漆黒の宇宙、星が光の速さで流れていく。
ラグナロック「ラーラ・マーナ!」
ラーラ 「私は貴男と同じ時間を歩むことは出来なくなったけれど、
いつでも私の魂はこの宇宙に在って、
いつでも貴男に逢いに行けます」
ラグナロック「ラーラ・・・」
ラーラ 「・・どうぞ一人で苦しまないで。
貴男を待っている人達がこの世界には必ずいます。
仲間を・・貴男と同じ時間を紡いでいける大切な仲間を見つけて下さい」
ラグナロック「・・すまない。キミ達だけを逝かせてしまった」
ラーラ 「(首を横に振って)いいえ、私達は誰も貴男を恨んだりしていません。
貴男はこの銀河を救うために特別な力を持って生まれてきたのです。
それを信じて生きて・・・」
ラーラの姿が妹・マリアに変わる。笑顔のマリア。
マリア 「私はラーラ様のように
いつまでも魂をこの世界に留めておくことは出来ないわ。
――私は生まれ変わって新しい私になる。
でも、きっと兄様を見つけて傍に行くから…。
今度は妹じゃなくて、カミエルの恋人になるために…」
ラグナロック「マリア…!」
マリアの姿がビイになる。
ビイ 「――こんな時に兄上の力になれないのが悔しいけれど…」
ラグナロック「ビイ…お前はオレの誇りだ。
オレ達は双子。生まれる前は一つの魂だった。
だから・・・お前の魂はいつだってオレの中に“在る”と思っている!」
ラグナロックは両手で自らの胸を押さえる。
ビイ 「兄上…ありがとう。
いつか・・・生まれ変わって貴男の力になりたい・・・」
ラグナロックと同じ瞳をしたビイの目から涙がこぼれおちたると同時に、
ビイの姿が光の粒子となり、それはちりぢりになって消えてしまう。
ラグナロック「ビイ!」
彼の頬に一筋の涙。
ラグナロック「――これはオレの最後の涙。
これからは何があってもオレは二度涙することはない。
涙を捨て、
オレは銀河の平和のためにこの身が滅びるまで全てを賭ける!」
再び、ラーラ。彼方を指差す。
ラーラ 「行って下さい」
ラグナロック「ああ、そうするよ。ラーラ、キミ達のことは忘れない」
ラーラの幻影ははかなげな微笑を残して漆黒の闇に消え去る。
幾年もの刻が流れる――
◆とある戦場跡
ラグナロック「・・チッ! 遅かったか・・・」
テレポートしてきたラグナロックだが、一遅く人々は息絶えていた。が、足元にすがる緑の髪をした一人の少女。服はボロボロだ。
グレイス(少女)「助けて・・」
ラグナロック「・・オレと行くか?」
グレイス(少女)「(コクリと頷く)」
ラグナロック、少女を抱きかかえて何処かへテレポートする。
◆とある惑星
ラグナロック「何てことだ!
もう少し早く気づいてここにたどり着いていれば・・・」
頭を振って悔しそうにしていると、彼の部下の1人が息のある十歳ぐらいの少年を見つけた。その装束からして、どうやら皇子のようであるが、右腕と左脚をサイコキネシスで無残にひきちぎられ出血多量で息絶え絶えになっていた。
ラグナロックが応急処置に治癒能力で捻じ切られた部分を止血する。
少年(RED)「畜生――っ!
アイツら、父上も母上も殺した!
その上、妹を連れていきやがっだ!
オレは絶対に生き残ってやる!
地の果てまでも追いかけて・・・アイツらを見つけ出して、
絶対に妹を取り戻す!」
少年は血まみれの左手で、妹のものと思われる翡翠のハートのピアスを握り締め、気を失った。
ラグナロックは無言で少年を抱き上げた。
ラグナロック「(M)この少年はまるで昔のオレのようだ・・・。
今はただ復讐心だけしかないだろうが、
やがてはオレと同じ志でこの銀河の為に戦ってくれる強い戦士となる!」
◆銀河警察本部最高司令官室
ローネル 「司令! 無謀です、司令自ら、地球に行くだなんて!
地球はまだ知的レベルDの惑星ですよ?」
ラグナロック「レイディ1人には任せておけない。
能力だけならA級エスパーだが、
あのおっちょこちょいぶりは目も当てられないからな…」
ラグナロック、腰のホルスターに銃をセット。
ローネル 「しかし、司令が行かなくても
他にいくらでも人材はいるじゃないですか?
いっそ、エスパー部隊本部の教育指揮官のクロードに一任してみては?
地球のヒヨっ子エスパーの教育にはうってつけでしょ!」
ラグナロック、長い緑の髪を後で束ねる。
ラグナロック「いや、地球には行かなくてはならないんだ。
――夢を見たんだ、ラーラの」
ローネル 「ラーラ・・って、司令の昔の恋人の?
(ローネルはラグナロックの過去を知っている)」
ラグナロック「ああ、彼女がオレに地球へ行けと言ったんだ。
地球へ行けば、オレの生まれたきた本当の意味が解ると言ったんだ。
だから…オレは地球に行く」
ローネル 「でも――司令のいない間、
一体誰が銀河警察を取り仕切るんですか?」
ラグナロック「もうすぐ副司令のゾフィーが遠征から帰ってくる。
アイツに任せておけば大丈夫だ!
それに副官のお前もいる」
ラグナロック、ニヤリと笑う。
ラグナロック「そうそう…オレは銀河警察最高司令官ラグナロックとしてではなく、
銀河警察第2010太陽系支部リーダー・蒼月大介として登録しておいてくれ!」
ローネル 「はあっ?
偽名使うほどの…ましてや支部作ってそこのリーダーなんて、
Dレベルの惑星監視に酔狂が過ぎますよ!」
ラグナロック「当分帰らないから、ヨロシクな!」
ラグナロック、その一言を残してテレポートしてしまう。
ローネル 「あ、司令――っ!
っとにもう、子供みたいな人なんだからっっ!
あれでよく銀河最強のエスパーって言われてるよ…」
勢いよく、司令室に入ってくる白衣の女。
グレイス 「司令!」
辺りを見回すが、ローネルしかいない。
ローネル 「司令は第2010太陽系の長期任務に…」
グレイス 「――カミエル、逃げたわね。
今日こそは百二十回破ったデートの約束を
きっちり守ってもらおうと思っていたのにっっ」
眉を吊り上げてそう言ったが、途端に肩を落として落胆の表情。
グレイス 「カミエル・・・子供の時に私を拾ってくれて、
教育してくれたのはいいけど・・・
こんなにイイ女に育ったって云うのに見向きもしてくれないのよねぇ~。
REDのメンテだけ私に押し付けて…ズルーイっっ!」
ローネル 「ははは・・・」
グレイス 「何が可笑しいのよ、ローネル?」
ローネル 「司令のことはいい加減諦めたら?
司令にその気はないのは日を見るより明らかでしょ?」
グレイス 「はぁ?」
ローネル 「司令は――グレイスの養父なんだろ?
彼にしたら、君って娘みたいなものだから、
異性として眼中にないんじゃないのかな?
・・ってか、永遠の命を持った不死身のエスパーは
女になんて興味ナシってカンジに見えるんだけど」
グレイス 「・・・・・・・」
グレイス、つかつかとローネルに歩み寄ると、その胸倉を掴む。ギョッとするローネル。
グレイス 「私が絶対カレのハートを射止めるのよ。
よぉく憶えておきなさい!
でも・・ま、年中無休の仕事の鬼もたまには、
辺境の地で息抜きするのもイイんじゃない?」
グレイスがそう言って、ローネルを放すと、同時にまた司令室の扉が開いて、今度は片耳に翡翠のハートのピアスをした真紅の戦闘スーツを着た体格の良い青年が入ってきた、が、その右腕の肘から下がない。
RED 「オヤジ~っ! ま~た右腕ヤっちまったんで、
メカフェチ女に見つからない内に新しい腕を・・・」
そこまで言い掛けて、司令室にグレイスがいるのに気付き、ギョッとする。
グレイスの眉が途端に吊りあがった。
グレイス 「だ~れがメカフェチ女ですってぇっ?」
RED 「げっ!」
グレイス 「また壊したの、右腕?
アンタ、一体何度腕やら脚やら壊せば気が済むの?
生身の人間だったら何回死んでると思ってるのよ?」
RED 「え? ほら、オレ、
司令とかと違ってエスパーじゃなくてサイボーグだし
…の割に任務は結構ハードだしさ~
ま、腕の一本で凶悪な犯罪組織ぶっ潰して来たんだから、大目に見てよ~」
グレイス 「だからって一人で任務に行くな!
《銀河戦士》部隊から一人アシスト入れるのは常識でしょ!」
RED 「だって、オレ、エスパー大嫌いだもん♪」
グレイス 「司令だってエスパーでしょ!」
RED 「オヤジだけは特別。でも他のエスパーは大嫌い。
絶対一緒に仕事はしない。死んでもしない」
今までお茶羅家ていたREDは急に真顔になり、そのまま司令室を出て行てってしまった。
ローネル 「アイツ…、幼い時に犯罪エスパーの奴等に
目の前で家族を惨殺され、
彼自身、腕やら脚やらPKで引き千切られたって話だろ?
――だから、エスパーを嫌って・・・」
グレイス 「ええ、知ってるわよ。
でも銀河警察に自らサイボーグ戦士となることを望んで所属したんだもの、
いつまでもガキみたいなこと言ってもらっちゃ困るのよ。
図体だけデカくなって色気づいてるバカ男…」
ローネル 「グレイス~」
グレイス 「ああ、面倒臭いけど、
直してあげるわよっ、バカRED!」
そう言って、グレイスはREDの後を追いけて司令室を出て行った。
残されたローネルは深い溜息をついた。
ローネル 「容姿端麗・美人天才科学者は司令に首ったけ。
エスパーである司令の次に遣える男は無鉄砲のサイボーグと・・・。
ここのヤツラは皆ワケありばっかだけど、
皆が皆、銀河の平和を願っている。
司令がそんな人間ばかりを集めて創った、
どんなに圧力にも屈しない銀河の平和を守る為の私設組織・銀河警察。
――そっか、そういうと随分長いこと司令と一緒に仕事をしているけど、
確かにあの人が仕事を休んでるトコなんて一度も見たコトないし、
浮いた話も聞かないもんなぁ…。
フッ…、留守の間ぐらい、
貴男が選んだブレーンの僕達だけでも何とかしてみせましょう、
カミエル司令!」
ローネルはそう言って、司令の椅子に座って、デスクの上のバーチャルキーボードをたたき始める。
◆銀河警察・銀河戦士用の超光速宇宙艇。
白い船体には『GALAXY ANGEL(銀河の天使)』と刻まれている。
その宇宙艇のコックピットにラグナロックが座している。
ラグナロック「コンピューター、オールグリーン!
蒼月大介、出る!」
宇宙空間に浮かぶ銀河警察の巨大要塞から白い宇宙艇が飛び出して行った。
ラグナロック「待ってろ、地球!
そこに何が在るのか、
オレのこの目で確かめてやるぜ!」
宇宙艇、次の瞬間に超高速飛行・ハイパードライブ(いわゆるワープ)に入り、白い宇宙艇は暗黒宇宙の次元空間の闇にその姿を消してしまうのであった。
◆地球
今はまだ全てが静かに息を潜めている蒼い惑星(ほし)。
いずれ・・その惑星はこの“世界”の全てを賭けた天使と悪魔の戦場となる・・・
ラグナロック
“銀河警察誕生”編・終り
地球で長期滞在するので・・・
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参加中ま・・一応願ってみようw
――って言っておかないとマズイだろう![]()
本人(白いワンピース)が目の前にいるんだから![]()
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カノジョとつきあうって・・・
男としては、色々とムズカシイよ┐('~`;)┌
ブログネタ:【アメーバピグ】Pontaとどんな写真撮った?
参加中








