美丘
この前読んだ小説の感想も勢いで書いてしまおう。
美丘 : 石田衣良
最初読んでいるうちは、あまりに自己中心的な美丘のふるまいに苛立ちを覚えた。
しかし、読み進めるうちに彼女が抱える苦悩のかけらを感じ取った。
実際、その苦悩とは「自我を次第に失い死にいたる」病におかされているという途方もないものであった。
そんな美丘にであった太一は、彼女のもつ「今を生きる輝き」にひかれていく。
不安や恐怖と闘いながら彼らは全力で愛し合う。
そこにわたしが感じたものは、本能的な生に満ち溢れた愛情だった。
彼らをとりまく友情のかたちも、感動的な青臭さだ。
進行する病状をまえにどうすることもできず、無情にもその時はおとずれる。
その瞬間にみせる究極の愛の姿に、わたしは電車のなかにもかかわらず涙をながした。
もういちど時間をおいてから読んでみたいと思う一冊でした。
帰省
実家に帰ってきました。
ちょくちょく実家には帰ってはいるものの、忙しいこの時期に帰ることはなかったので、
地元の桜を見るのも何年かぶり。
花盛りにはまだ少し早いのだけれど、桜並木のしたをあるくと思い出やさしく舞い戻ってきます。
思い出のある桜並木をひとつひとつ訪れてみたいなぁ。
水恋 SUIREN
今日は最近読んだ本の感想を書いてみようと思う。。
水恋 SUIREN 作:喜多嶋隆
人と深く交わることを避け、自分を見出すことのできる仕事に没頭してきた沢田。
しかし、時代の流れの中で唯一のよりどころであった仕事での居場所を失い、自殺を思い立つ。
最後の場所に選んだのは彼が一年前に訪れた海だった。
そこで起きる一つ一つの出来事が、沢田を心に深い傷を持つ水絵とめぐり逢わせ、
沢田の人生を変えることになる。
沢田が持つ人生観の結果、死を選び流れ着いた場所で、その価値観ゆえに身に付いた、
スープ作りの腕や釣りの才能が水絵の心の傷を癒す薬となり、
また沢田自身が水絵の支えとなることが生きる理由となってゆく。
出逢わなければ終わっていたであろう二人の運命的な縁。
とてもはかなくて心許ないが、次第に沢田はそれまで経験した事のない感情を抱くようになる。
読み終えたとき、涙が自然と流れた。
決してハッピーエンドとは言えない。
結局沢田は一人になってしまうのだが、以前と決定的に違うのは、
人を愛するという感覚、愛する人に愛されるという感覚を持つようになったことだ。
また、ふとした瞬間に水絵の感触を思い出せること、そして何よりも、沢田が生きてゆくための理由を得たことと、
彼にとって「死」が自分の存在をけすためのものから、愛する人に再会するためのものに変えたことに、
沢田と水絵が短い間に育んだ愛の尊さを感じた。
やさしい風が心の中をそっとなでてくれるような、そんな読み心地の本でした。
