日ごろ、アンコール遺跡群という世界に誇る遺跡のある国に住んでいる。プノンペンに引っ越して来る前、そう10年前には、その遺跡のある街で暮らしていたので、日本に住んでいたときはさして気にならなかった「世界遺産」という言葉が何だか身近に感じていた。
沖縄の那覇市で首里城を見たとき、それが修復中と知った時、なにか「世界遺産」という言葉が胸にあふれてきて、感慨深い気持ちになった。日本に生まれてから、「これが日本の誇る世界遺産だ」と思って何かを見たことがあっただろうか・・・・と思うと、まったく記憶がない。
それで初めて見る首里城に大感動。
守礼門など・・・・修学旅行生でとにかく賑わっている那覇、そんな高校生に混じって?見学。
石造りの壁の向こうに見える、街並みと海。かつての琉球王国の王様はずいぶん美しい風景を見ていたんだなぁ。王宮から海が見えるなんて。
世界遺産に登録されるってすごいことなんだ、世界の遺産なんだもの・・・・・あぁ・・・・ため息。
本殿は朱色の塗り替え中。なんともあでやかで、日本のものではないみたい。修復の作業の人達を見て、自分の国の遺産の修復を自分たちの手でやっている姿になんだか胸を熱くする。
カンボジアでは、痛みの激しい遺跡の修復はもはや外国からの支援頼み。自分たちの祖先の遺産を、自分たちで守り抜くことは、今を生きる子孫たちの使命だ。それは、自分たちの歴史をこの世界に残していく作業でもある。
この美しい首里城、戦争で焼けたりもしているのだそう。悲しいことだ。平和になった今、この首里城が二度と焼けないように、日本国民全員で守り抜くべきだと思った。
華麗なこの王宮で繰り広げられただろう人間模様を想像しながら、歩く。20年前にも那覇に来て、首里城に行ったかもしれないのに、まったく覚えていない。感動した記憶もない。まだ「世界遺産」なんて言葉も知らなかった頃の私だ。
改めて、世界遺産に登録されるってすごいことなんだ、それを、守り抜くことはその民族の大事な仕事なんだって思った。
観光客の賑わいをよそに、もくもくと作業をしている発掘作業員たちとその風景を眺めながら、クメール人にも「アンコール遺跡群」を自らの手で守っていかれるような民族であってほしいと願う。
この石の壁に守られて王宮が鮮やかに息づいていた時代にも、こんな鱗雲が見えたのだろうか。琉球の歴史をもっと知ってみたいと思った。
また絶対に来たいと思った。
さとちゃんガエル、カンボジアの中の井の中の蛙だけど、日本という島国井戸から飛び出してみて、思うことがすこし立方的になって増えたみたい(笑)。
守礼門を出てすぐのところに幼稚園と小学校があった。世界遺産の脇の学校・・・・うーん、贅沢だ。この遺産の価値を胸に抱いて大きくなってほしいな、子供たち。
いろいろこみ上げてくる想いを胸に後にした首里城。そのあと池上永一の「テンペスト」を読んで、あぁ、もっとよく見ておくんだった~やっぱりまた行かなくちゃと心に決める(笑)。
琉球ロマネスク・・・・いい言葉。知性と美の国、琉球。日本は大事にしなくちゃいけないと思う、この遺産を。そしてやっぱり世界が平和でないと、世界遺産の命はいつも危険にさらされてしまう。
平和を構築した日本、平和を構築しようとしているカンボジア、その間を行き来してみて、平和って一人一人の辛抱・忍耐・犠牲の上に成り立っているんだ・・・・と思う。少なくとも、当たり前にあるものではない。そのことをかみしめたい。