母さんが昏倒してから約二年。
と同時に俺が碌寺家で執事として働
き始めて二年。俺は様々な出来事に
遭遇し、様々な不可解な謎と直面した
それらの謎は俺に打開策の一つもくれ
ず、ただ。ただ俺を困惑させる要素に
しかならないのだ。そうして過ごして
いると次第に焦燥感に駆られることが
多くなっていき、段々考えることに疑
問を呈すようになった。まぁそうなる
と辞めたくもなるし挫けたくもなった
それでも何故やめなかったのか。
勿論、母さんを救いたいっていうこと
も当然ある。
だがおそらくそれだけでは続けていけ
無かっただろう。
俺にはいつも気にかけてもらっている
人がいる。
姫子お嬢様だ。お嬢様は俺がくじけそ
うになった時も諦めそうになった時も
俺を励ましてくれた。それがいつしか
俺の働く糧となりやがて俺の心の中枢
を巣食うようになった。主と従の関係
であるのは確実な事。
だが最近その確定事項が俺の中で少し
燻っているように思える。
生まれてこの方誰にも干渉されない生
き方を貫き通しているわけだから他人
の心配もどこ吹く風だったのだが執事
として働く以上どうしても主人に干渉
されるのでどうしても以前より人と関
わることが多くなるその中でお嬢様だ
けなにか違う感覚に見舞われる。
こう、ふわふわする様なおかしな感じ
世間巷でいうとどんな感情なんだろう
これが恋というものなのか。
いかにも少女趣向の感情らしく俺には
少々眩しいようだ。
とりあえず今は母さんの意識を戻すこ
とが最優先課題だ。こうもヤケになっ
て探しているのに見つからない。
俺はもう少し原点に帰って探るべきな
のかもしれない。
俺の意識は同時に大蛇の電話の内容が
フラッシュバックした。
ー桐生が戻ってきた
それを思い出すと同時に俺の顔は蒼ざ
めていった。
#
俺はお嬢さまの元へと戻った。
「桐生?顔色が悪いわよ?どうかした?」
お嬢様は相も変わらず俺にお慈悲を掛けて
下さる。それがおれにとってのなによりの
喜びだ。
「いえ、大丈夫です。それはそうとお嬢様、
お時間あまりございませんが朝食召し上がられます
でしょうか?」
お嬢様はふと自分の時計を見る。
そして慌てた調子で急き込んだ
「時間がないわ。仕方が無いけど食パンいただけるかしら?」
俺はお嬢様のご要望の通り、食パンにストロベリージャムを
幾ばくかのせお嬢様に差し出した。
「お待たせしました。せめてお席についてお召し上がりくだs...」
俺が小言を言い終わる前に、口にトーストを咥え、家を飛び出していた
「お嬢様は相変わらずですね...」
...俺は不意に目が眩んだ
#
.....目を覚ますと俺は、執事室で寝ていた。
いや、今まで夢を見ていたと言った方が正しいだろうか
そんなことはどうでもいいのだ。
今は...今は
いや、ココデハオレハコウカイシナクテモイイノカ
俺の中の記憶の断片が脳裏に再生された。
『...........めて!......けて!』
『........ですよ.......様。......らずとも』
『...って.....は.....じゃない!』
『....ます。...お嬢様』
『...めて....めてよ。はな....! ヒトゴロシ!』
目の前には、男が横たわり、一人の女性がおののいていた
彼女の目は、まるで猫に追いつめられたネズミのようだ
俺は、右手にもっている血塗れのアンティークナイフをふと
それとなく眺めていた。
第2章 Fin