事の起こりは、2020年8月。


お気に入りのドラマCDの、キャストトークCDを手に入れたのが始まりだった。


本編のドラマCDは、その半年前からmp3プレイヤーに入れて、毎日のように聴いていた。


どの声優さんも、めちゃくちゃ上手い。


セリフの一言一言、間、息遣い、その他にも…全てが、とにかく全てが素晴らしい。


素晴らしい演技は、何度聴いても、何十回聴いても飽きない。


そんな風に夢中になって聴いていたドラマCDの、キャストトークCDを聴いていた時、あれ?と、引っかかった一言があった。


声優さんの一人が、出身地の事を話していた。


それは、私の地元にほど近い…というほどの事もないが、とにかく同県の地域の名前が出て、はて?となった。


慌ててそのCDのジャケットを見て、キャストの名前を見ると、そこには20年近く前に、毎週見ていた名前があった。


正確には17年前の、声優養成所のクラスで。


まさかそんな偶然がと思いながら、当時の担任の先生の奥さま(養成所退所後、縁あって連絡を取り合っていた)に連絡し、事の真偽を確かめた。


『この、Aさんて、あの、Aくん?』

『そうだよ〜!』


今や超人気声優となったA氏の、デビューや売れてきた頃の、実に義理堅い素敵エピソードに始まり、私が養成所にいた頃のお話まで、久しぶりにも関わらず、その電話では随分と盛り上がった。


懐かしくもホッコリした気持ちでいっぱいになり、その日はなんだか幸せな気持ちで眠りについた。


……のだけれど。


明け方見た夢で、翌朝の気分は散々だった。


その夢を見るのは初めてではなかった。


かれこれ10年も前から、繰り返し見ていた夢だった。


夢は大体2パターン。


一つは、15年前にやめた劇団に戻っている夢。


もう一つは、養成所を退所してすぐに、担任の先生からかかってきた、声優事務所に推薦するけど、行く気があるか?という内容の電話の夢。


事実としては、私はその推薦をお断りした。


オーディションを、受けには行かなかった。


これが、事実。


夢は、その時の、断る直前のところでいつも終わる。


今でもはっきり思い出せるのは、私は一分の迷いもなくお断りした、という事。


あんなに確信をもって断ったのに、何で今になって夢になんか見るのか?


しかも、この夢を見た翌日は、とにかくものすごく気持ちが悪い。


気持ち悪さに引きずられて、仕事効率が下がる。


その上この日は、養成所に通っていた当時の記憶が一気に押し寄せて、ちょっとしたパニックになった。


(件の超売れっ子声優A氏に、アフレコのレッスンでご迷惑をおかけした事まで思い出してしまった)


私は現在、音楽系の自営業と、旦那の自営業の事務と、三児の母の、三足の草鞋を履いている。


はっきり言って、のんびりやさぐれてなどいられないのだ。


ーーさっさと立ち直ろう。


こう決めて、私は一通のメールを打った。


続く⭐️