1 野郎と一緒のクリスマス
2 彼女と一緒のクリスマス(無機編)
3 彼女と一緒のクリスマス(有機編)
なんか、
娘hu-→ドキッ、男だらけのクリスマスパーティ
IKD→チキンを食べているそうで
BOSS→定番の女子飲み
らしいです。
1 野郎と一緒のクリスマス
浮かれた街は寒波を跳ね除けるようなジングルベルに包まれていた。
俺は一路自宅へと向かっていたのだった。どいつもこいつもうかれくさりやがって。全人類の半分が野郎で半分が女の子だというのに、大学生になってもなぜ一人なんだ。浪人をしていた去年ならまだしも、もう大学生なのだからさぁ……。
俺は意識の外で何度も何度も溜息をつく。別に人肌が恋しいというわけではないのだ。ただ周囲の甘ったるい遅れた空気がひたすら頭に来る。
交差点。通りを転がる車に乗るのはパパにママに娘に息子。もしくは野郎と女の子。
信号の向こうに居るは手を絡めるバカップル。学生だっているじゃねーか、くそう。
ついつい癖で携帯電話を開くとメールが来ていたのだった。受信時刻……3分前?続けて4通来ている。
いづれもほぼ似た内容で、要約すると飲むから来い。つまみを買ってきて欲しい。
どうせ、暇なんだろ?
「うるせーバカ、お前らも暇だから飲むんだろうが!」
「で、来るのか?こないのか?」
「十分で行く」
こんなクリスマスだっていいじゃないか。
2 彼女と一緒のクリスマス(無機編)
浮かれた街は寒波を跳ね除けるようなジングルベルに包まれていた。
デパ地下で買い込みそのまま家へ。周りなんて見えていない。ただ「彼女」の生誕祭に間に合うことだけを考えなければならない。
俺が彼女と出会ったのは奇跡以外の何ものでもなかった。なにせ、人類64億人の中のたった一人がこの俺なのだから
悠久を超越した時を生き、縁をつくり畏れを司る。
昼の世界を厳しみ、夜の世界をただただ愛でる、そんな彼女だ。
もう家だ。今夜は彼女と一晩語り明かそう。
ちなみに人は俺をこう呼ぶ。
「厨二病」
3 彼女と一緒のクリスマス(有機編)
浮かれた街は寒波を跳ね除けるようなジングルベルに包まれていた。
先程からちらちらと雪が舞い落ちてきている。まだ彼女はやってこない。俺は今一度今日のシミュレーションをし直した。
「待ったー?」
いやいや、待っていない。そう繕おうとしたがその笑みよりさきに彼女を見とれるニヤケ顔が出てしまっていた。
普段の清楚な音大生なはずなのに、どうして今日はこんなにも輝いているのだろうか。高貴な一輪の牡丹。まさに紅一点。
俺はコートの内ポケットから封筒を取り出す。
「ほら、今のうちに渡しておくよ」
そこにあったのはクリスマス・ハレルヤコンサートのチケットだ。ヘンデル作曲のオラトリオ、クリスマスにはまったくもってぴったりな演目だった。
まさか、彼女が俺以上のクラシックキチと知ったのは10月のことだった。その時に音大生ということもわかった。類は友を呼ぶと言うが彼女を俺と同類にするなんてたとえ神が許したとしても俺は許さない。彼女に追いつけるためにただただ精進しているのだからして。
二度の休憩を挟んで3時間を超えたコンサートのあと、彼女はずっとメサイアについて語り続け、しまいには有名なアレルヤ・コーラスを歌い始めた。俺はその姿にとけそうになる。
彼女はその賛美の歌詞を歌い終えると、ただこう言ったのだった。
「メリー・クリスマス!」
俺はその笑顔にできるだけ答えられるようにこう返す。
「メリー・クリスマス!」
クリスマスデートはこれでおしまい。周囲から見たら呆気無いと思うだろうが、熱心なカトリックの彼女は聖夜を過ごす家族がいるのでまだ客の少ない電車に乗り込んだ。
俺はというと、浮かれながらも友達のところに押しかけて飲む算段なのだった。
こんなのが大学生のクリスマスなんだ、と思う。
今日はずっとオラトリオ聞いてましたよ俺。
歌はいいね。リリンの生み出した……
ということでメリー・クリスマス。
シャンメリー、あんまり美味しくなかったぜ。






