民間企業への就職を志望する学生が行う「企業研究」のような活動を、公務員志望者もすべきではないか?この点に気付ける者は案外と少ないものだ。自らのキャリアとして公務員を選択するのであれば当然に知っておくべきことであるし、面接試験等の採用選考に臨むことを想定するのであれば当然に必要となる準備である。しかし、「自治体研究」に対する公務員志望者の熱量は、あまり高くはない。

 公務員試験と民間就活との大きな違いの一つに、筆記試験の難易度の高さがある。最近では、民間企業と同様の筆記試験(SPI3,SCORE等)を導入している自治体も増えてきたが、依然として「公務員試験」の割合は多く、公務員志望者の多くはその対策に追われている。

 筆記試験の対策としては、予備校に通う学生が多い。一部の予備校は大学と連携し、授業料の割引サービス等も展開している。もちろん、独学で勉強を進める者もいる。書店に行けばわかるが、昨今は公務員コーナーが非常に充実している。いずれの参考書も分かりやすく、読みやすい。公務員志望者が独りで勉強を進めるためのツールは十分に整っている。

 

 このように、勉強のノウハウが蓄積され体系化されている公務員受験対策においては、予備校の指導法であれ、書店に並ぶ書籍であれ、実に無駄なく作り上げられている。そのため、公務員志望者の多くは、効率のよい最短ルートで受験に臨む準備を進めることができる状況にある。

 こうした状況下におかれてしまえば、「自治体研究」など後回しになるもの納得だ。調べたところで何を得られるかもわからない、そもそも何を調べれば合格に有利なのかもわからない。そのため、時間の無駄になる可能性が高い行為に他ならない。無駄なことをしている間にライバルたちはどんどん勉強を進めていくに違いない。そうであるなら、非効率な「自治体研究」などに時間を割くよりも、確実に力を蓄積できる筆記試験対策に取り組んでおいた方がストレスがない。

 

 こうして、「自治体研究」に一生懸命に取り組もうとする公務員志望者はいなくなる。

 

 しかし、本当にそれでよいのだろうか?ここで首肯する人はいないだろう。言うまでもなく、「自治体研究」には取り組んでおかねばならない。仮に得られるものがなかったとしても、それは「無駄」ではなく、「必要な労力」だったと受け止めるべきだ。自治体研究をせずに熱意を伝えることはできない。自分が就職しようとする職場なのだから、必死で知ろうとするのが自然な行為であるはずなのだ。

 

 公務員志望者の中には、「筆記試験に通過しなければ元も子もないから、筆記試験が終わった後で調べ始めればよい」と考える者がいるかもしれない。しかし、その方法は危険だ。

 例えば、防災施策に関心があったとする。この場合、6月の筆記試験を終え、8月の面接に向けて防災施策を調べようと考えるだろう。しかし、防災イベントがそんなに都合よく開催されているだろうか?多くの自治体では、防災イベントは秋口か春先に開催されるケースが多い。結果、関心のある防災施策のリアルを見ることなく、面接に臨むことになるのだ。

 

 以下のやりとりを見てほしい。

 

 

(学生):「防災施策に関心があります」

 

(面接官):イベントなどに参加してみましたか?

 

(学生):「…いえ。」

 

 

 本当に関心があるのであれば、大学入学当時から防災施策にアンテナを張っているはずである。上のような面接官とのキャッチボールは、間に合わせ(やっつけ)で対策してきたことを露呈するものだ。熱意の欠片も感じられない残念な面接と言わねばならず、合格は遠のくだろう。

 

 公務員試験を「資格試験」と考えている限りにおいて、「効率」の罠から抜け出すことは難しいだろう。忘れてほしくないのは、公務員試験は「キャリア選択」だということだ。自らのキャリアの貴重な時間を過ごす仕事、職場を知ろうとすること、そして、それは無駄な作業ではなく必要な労力であることを自覚し、早い段階から自治体研究に向き合ってほしいと思う。