生きている限り、争いは何処に行っても目についた。
キリがなかった。
何も争いの無い世界なんてものを、夢見てた訳じゃない。
ただ俺は、自分の知りうる限りの世界では…
誰にも…涙して欲しくなかっただけなのにな…。
一人を救えば
そこから視野は広がってしまうんだ。
一人の次は十人。
十人の次は百人。
百人の次は…さて、何人だったかな。
そこでようやく悟ったよ。
一人の男が抱いていたものは
都合のいい理想論だったのだと。
だが、そんな事はどうでも良かった。
初めから、感謝をして欲しかった訳じゃない。
俺はただ…
誰もが幸福だという結果が欲しかっただけだ。
一人を救う為に
何十という人間の願いを踏みにじってきた。
踏みにじった相手を救う為に
より多くの人間を蔑ろにした。
何十という人間の救いを殺して
目に見えるモノだけの救いを生かして
より多くの願いを殺してきた。
今度こそ終わりだと。
今度こそ誰も悲しまないだろうと。
…つまらない意地を張り続けた。
そうだ、誰かを助けたいという願いが、綺麗だったから憧れた。
故に自身から零れ落ちた気持ちなど無い。
これを偽善と言わず何と言う。
この身は誰かの為にならなければならないと、強迫観念に突き動かされて来た。
それが苦痛だと思うことも、破綻していると気付く間も無く、ただ走り続けた。
だが、所詮は偽者だ。そんな偽善では何も救えない。
否、もとより何を救うべきかも定まらない。
誰も悲しまない様にと口にして
その影で何人かの人間に絶望を抱かせ
それでも誰かを救えるのならそれで良い。
意味の無い殺戮も
意味の無い平等も
意味の無い幸福も
俺自身が拒んでも見せられた。





