皆さま、初めまして。
天下統一クロニクル(以下天クロ)」というゲームで
カードのアートディレクターをしております、古川麻生です。

今回は、イラストの描画クオリティを上げる以外でどのような取り組みによって
カード価値を創出しているかについて当ゲームの事例を紹介します。

『価値のあるカード』って何だろう?

まず、「価値のあるカード」と思ってもらうためにはこんな方法があります。

・有名な作家様に描いていただく
・構図を工夫する
・美男美女にする


以上のように、カードにおけるクオリティを上げるには
イラスト自体を良くすることが最も手っ取り早いです。

とはいえ、イラストを描いて下さる作家様も人間です。
体調や調子がイラストの出来に反映されることも少なからずあります。
ユーザーを求める「欲しいカード」を安定して供給することはとても難しいです。

イラストを楽しんでもらうために

そうなるとイラスト以外で努力しなければなりません。
天クロをはじめ、他社様も下記のような努力をしています。

・ボイスをつける
・パラメーターを強くする
・アニメーションする
・マンガが読める


上記のような付加価値は、多くのカードゲームで実装されています。
どれもキャラクターの魅力を引き出すには十分な努力です。
しかしそれらも徐々に目新しさがなくなってしまったり、
楽しさを損なってしまうのが現状です。

例えば、キャラクターの魅力を引き出すためにボイスやアニメーションは楽しんでもらえます。
しかし実装しすぎた結果、ゲームの読み込み時間が長くなり、快適に遊べなくなってしまいます。
それでは、せっかくお金と時間と労力を費やしてもゲームの魅力を伝えることができません。

天クロだからできること

天クロでは最もゲームとの親和性が高いものをシンプルに落とし込み、
実装まで持っていくということをしています。

日本を題材とした世界観にどのような付加価値をつけてきたのか、
それでは実例を見てみましょう。

その1【百人一首カード】2013年11月登場


・多くの日本人にとって、百人一首がなじみがある
日本の文化人で、短歌をたしなむキャラクターは天クロでも数多く出ています。
『和歌』という付加価値を付けることでグッと雰囲気が出ています。
戦国ゲームで実装しようとするとこういった文化人は世界観に合わず、
美少女ゲームだと、美少女と百人一首の繋がりが見えません。
天クロならではのやり方ですね。

・3進化というゲームの仕様と、「下の句」「上の句」という百人一首の仕様が合っている

もしも百人一首ではなく俳句をテーマにしたとしたら・・・

初めの五音が表示されていても、続きがなかなか連想されずテーマが伝わりません。

・筆文字が和の世界に合っている
和風と感じるものの一つに『毛筆』があります。
天クロという日本を題材としたゲームの世界観だからこそ、親和性を持たせることができました。

その2【名刀&剣豪カード】2014年1月登場


・武人+刀というキャッチーさ
【刀の擬人化】(刀に取り付いた精霊のようなキャラ)と【刀の持ち主】が
ペアになるようなテーマで絵を作っています。
共通のアイテムを持たせることはよくあるのですが今回の場合は、
詳細までのデザイン画を天クロ側で用意しました。
それに沿って作家様に描いていただくことで『武人との』パートナー感を演出しています。


今回は、それぞれの題材(「伊達政宗」「村雲江」などカード名になるもの)の
雰囲気を一番表現してくれる作家様に描いてもらいました。
多忙な作家様ではありますが、もし作成時間を確保できるのであれば、
二枚を同じ作家様に描いてもらうということもできます。

・ユーザーへのアピール
また、ゲーム内で名刀に関する豆知識を掲載し、ユーザーの興味がわくような紹介ページを作っています。
よく聞く名刀の詳細って、何だかワクワクしますよね!


その3【宝石カード】2014年3月登場



・天クロでは珍しい西洋モチーフ 
天クロは日本をモチーフにしたゲームです。
なので基本的には西洋風のものを登場させることはできません。
登場させるには何かしらの工夫が必要となります。
今回は宝石をテーマとすることで、普段は描くことのできない西洋風のモチーフを入れることができました。

・特別な「カード」としての魅せ方
背景部分は、西洋モチーフをより目立たせるために
タロットカードのようなレイアウトにしています。
普段は風景などを描いてもらうことが多いのですが、
今回は宝石を目立たせるためにもキャラ以外の情報量を抑える狙いがあります。



・「カードが光る」「宝石が光る」という2つの掛け合わせ
通常のキラカードとは違った「輝く」ことに意味を持たせています。
キラカードは特別感の演出として、どんなカードも全体が光ります。
宝石カードの場合は、「宝石は輝くもの」というシンプルな連想から宝石部分を主に光らせています。
※SR以上のカードが光ります。



カードの世界観のマッチング

このように、今回は3つの例を紹介しましたが
総じて「テーマとクリエイティブがいかにゲームの世界観にマッチするか」が重要です。

・テーマとユーザー層が一致しているか
・見る人がテーマを連想しやすいか
・世界観との親和性が高いか
・テーマを伝えるために最適なクリエイティブか


これらを検討して、初めて作家様への発注へ進めるのです。


まとめ

イラストだけがカードではありません。
カードと売り方を含めたものが「カードのクリエイティブ」です。
『カード』という限られた枠の中でも、創意工夫で新たな価値を生み出すことができます。
もととなるゲームが変われば、また違った試みができるでしょう。

これからますます面白く新しいカードが出てくるための、アイデアの参考となれば幸いです。

今後とも『天下統一クロニクル』のカードにご期待ください!