私のブログのお友達(!?)が
動物を飼うことについてのブログ記事を書いていて
その中に出てきた
【自称動物好き】
という言葉を見て、思い出したことがあります。
* * *
私にはもう10年以上前から好きな歌手がいます。
彼女は「動物好き」を公言していて、
プロモーションビデオにも犬といるシーンがあったり、
歌詞にも時々動物が出てきていたので
「本当に動物が好きなんだなぁ~(‐^▽^‐)」
と思いながらいつもそのアーティストの歌を聴いていました。
ある時彼女が出演したバラエティ番組で、
子供の頃から飼っていた
たくさんの動物たちの思い出を話していました。
たくさんのインコ、ハムスター、犬、猫…と
マンション(それもペット禁止だったらしい)で飼っていたとは
思えないくらいの数と種類の動物名を挙げた後、
『飼っていたカメ』のエピソードを紹介しはじめました。
彼女は父親と一緒に
近所の公園の池だか噴水だかに
飼っていたカメを放しに行ったことがあるというのです。
しかもただカメを置いてきただけではなく
父親はそのカメのお腹にマジックで
自分(父親)の名前を書いたのだそうです。
そこで彼女が
「どうして名前を書くの?」
と聞いたところ、彼女の父親は
「俺のだから」
と答えた、というところで
番組では笑いが起こったのですが、
私はそれを見ていてすごくショックでした。
カメを「置いてきた」という表現だったと思いますが
私はそれは「捨てた」ということだと感じました。
加えて「マジックで自分の名前を書いた」というところのどこに
笑いの要素があるのかなと、ただショックというより
失望に近いくらいの衝撃を受けました。
カメのお腹に名前を書いたところで
そのカメが病気になるとか、
生きていく上で不利になるというわけではないと思うし
そもそも自分が何をされたかということすらも
カメが認識することはないだろうけれど
動物の体に名前を書く、というのは
「やってはいけないこと」だったと思います。
彼女が子供の頃はまだ
「捨てられた動物によって生態系が狂う」
とかいった環境保全や動物愛護の意識は
今よりも薄かったかもしれませんが
その記憶を回想していた彼女、
その番組がオンエアされていた時には、
もう十分に問題意識が高まっていた時代でした。
せめて笑い話ではなく、
あんなことをしてしまった、
という想いで語って欲しかったです。
当時の私は、彼女の音楽に夢中で
そんな大好きな彼女の
受け入れがたい一面を知ってしまったことを
自分の頭の中できれいに整理することができなくて
ショックを受けた時の嫌な感じを
ただギュッと固めて記憶の奥へ奥へと封じ込めました。
何の曇りもなく、それまでと同じように
彼女の歌を楽しむ方を選びたかったんだと思います。
それから何年も経ってから
その歌手とはまた別の
小谷美紗子さん
という歌手のことも好きになりました。
小谷さんの曲をいくつか聴いていて
「ハイ、まずわたしから」
という歌を初めて聴いた時
歌詞の中に
『お腹に文字を書かれたカメ』
が出てきて
この時何年ぶりかに昔忘れようと押し込めた
ショック・衝撃の負の感情を思い出して
当時正体をつかめずに丸め込んだ気持ちを
やっと本当に捕まえられた気がしました。
人は考え方が変わるものだし
一つの考え方を好きになれなかったからといって
他の全ての部分を同じように見てはいけないでしょう。
最近は読んだ本の影響で(汗)、
人間のいくつかの面を個別に捉えようと努力しているので、
動物好きだという歌手の歌を聴く時にも、
歌の上手さだけに焦点を合わせて
ただただ歌を聴く、というつもりでいます。
彼女の曲は今でも好きなのです。
それでも時々彼女の歌を聞いていてふと
カメのことを思い出すと
その瞬間まで楽しく聴いていた音楽も急に白けて
CDを止めてしまったりします。
最近はTV出演を追いかけるほどの
熱烈なファンではなくなったのですが
時々見かける雑誌などで
彼女が「動物好き」であることを表すような
動物と一緒に写っている画像なんかを見ると
なんとなく不快というか、
ぶっちゃけて言うと「おまいうw」状態になるのです。
鳥を100羽飼っていても、
ハムスターを50匹飼っていても、
「動物が大好きだ」と言っていても、
TVで「昔カメを置いてきた」と平気で言えてしまう、
「父がカメに名前を書いた」と笑えてしまうんだから。
大好きだった歌手への気持ちの中に
一つの黒いシミがあるのです。
何年も前のたった一つのエピソードを
いまだに忘れられないでいる
こんな自分は好きじゃないんだけれど、
このシミは一方で
「動物を好き」という個人の自覚と
「動物への考え方」が必ずしも万人に共通ではないことを
考えさせてくれるのです。
同時にひとりの歌手を盲目的に崇拝していた
私の若者時代が終わったな、という
すこし寂しい成長記念碑かもしれません。
なんてね
< 今でも一応ファンだけどね!