私たちは
それを
忘れることがないようにと
旅行を計画して知らない街へ
ふたり
とても楽しかったね。
そこにあの子がいたら もっと楽しかった、
そういう可能性があった、
絶対にあった、と思う。
思うけど、ない。
何を忘れないようにしているのか
ときどきわからなくなる。
ふたりで歩いた道を
眺めた景色や耳を過ぎた風の音を
あの子とも一緒に感じたのならまた少し
それらは違っていたんだろうな。
記憶の中にある情景に
「もしも」
を加えたら
熱くも冷たくもない
質量のない
四次元の思い出ができてしまう。
ごめんね。
なんとなく、悪いことのような気がする。
だから怖くなる。
でも例えば一夜限りの
幻想の夜行列車にあの子と同乗できるのなら
私はその切符がなんとしてもほしいです。