ギターを弾く。改めて「こんな音を出したい」とか「あんな空気を創りたい」と思いながら、弾く。




 やはり、「僕は歳を取ったのだ」と感じる。特に、この数年で。出来ることと出来ないこと、そして方法論や感覚、あらゆるものが成熟している。




 それはナルシチズムでもなく、驕りでもなく、傲慢なわけでもなく、ただひたすらに感じてしまう。自己満足ではあるけれど。その満足度が、恐ろしく違う。「歳を取ること」の素晴らしさや、愉しさを感じる。




 もちろん、その成熟(あるいは、僕がそういう風に感じている何か)がいつまで続くのかは分からない。急に明日、僕の中の可能性が総て閉じ、これから先は多くのことで衰える一方かもしれない。もしかしたら、もっともっと先々には成熟を遂げて、愉しくなるのかもしれない。




 11月にはまた人前で唄える。僕は、幸せな人間だと思う。趣味でやっていることにある種の面白さや愉しみや、何かを抱いてくれて、僕の趣味に付き合ってくれる人達がいる。出来る限り、素晴らしい歌を唄いたいと思う。




 まだ出来上がっていない曲もあるけれど、どれもが素敵な曲だと思う。タイトルはほぼ決まった。ほとんどはカタカナでシンプルなタイトルになったけど、その中で個人的にすごく好きなタイトルがある。




 「夢に宿る鳥、胸に潜むライオン」




 なんだろうなぁ、語呂とかじゃなくて。とにかく、すごく大切な歌になる予感がする。そういう歌が幾つかある。自分で創っておきながら、自分自身を救い、大切にしなければならない歌。




 高校生の時には「幸せになろうよ」という歌(後に長渕剛が同タイトルの曲を作ったので、なんとも言えない心境になったけれど)。その後、「風のサカナ」、「つながり」、「満月」と。他の曲も大切だけれど、この曲たちはとりわけ大切に唄いたいと思う。




 そんな歌を、もっと創りたい。




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 月に一度は、大きな本屋に行く。それがジュンク堂の時もあれば(7割がた、そうなんだけど)、ABCの時もあれば、丸善の時もある。そうして本屋を訪れて、美術書や料理書や小説や雑誌や、いろんな本を見て回る。そして、気になる本をとにかく手に掴み、吟味に入る。




 本当にその本が必要かどうか。そして、その本が僕に何かを考えさせるかどうか。




 そんな風に本を買う。すごく多いときもあれば、全く買わないこともある。




C O H-ほん


 今回は、一回の量としては少し多いかもしれない。というのも、アルネとかまで混じってるから。




 ブルータスは言葉特集。村上春樹だから買ったけれど、春樹個人の言葉はすごく少ないから、村上ファンとしては特に響くものはない。けれど、他の言葉で面白いものは多いから、結果としては良かった。




 料理通信はやはり素晴らしい。今、数ある雑誌の中で最も好きかもしれない。というより、来年から購読しようと思う。小さい店特集、第二段。三茶の素敵カフェ(つーかレストランかなぁ)uguisuさんとか、我愛するパーラー江古田だとか、頑張ってるcimaiさんとか、空気が良いitonowaさんとか、とにかく好きな店が多い。それに純粋にチーズの特集とかのページも愉しい。料理、食べ物、そんなのが異様に好きなんだな、きっと僕は。




 アルネはいつも通り。でもそのいつも通りが、今年で終ると思うと感慨深い。まだまだ本屋でも小さな扱いしかうけなくて、「こういう類の本って無駄に高いよな」とか言われてしまっていた、あの頃。ここまでメジャーになって、ここまで読む人が増えて、ここまで影響がある本になるとは。大橋さんは今度は何をやるのだろう。僕は世代ドンピシャではもちろんないし、大橋信者でもないけれど、愉しいことをやって欲しいなと思う。




 リトルプレスの本。買うか買わないか非常に迷った。正直、本の構成だとか内容そのものはそんなに響かなかったんだけど。有益な情報もあったり、馴染みのリトルプレスも載ってたので。まぁ、うん。




 うつわ関連の本を三冊。赤木さんのは、やっぱり「美しいこと」の方が好きだ。でも「美しいもの」と一緒に読むことで、「赤木さんそのものの思考や成熟の流れ」が見えるのが良い。モノ好きには、読んでいただきたい本達。他のうつわの本も、面白い。いろいろなタイプの器を買うけれど、日本人の器はやはり素敵だなぁと思う。そしてまた、小泉誠さんの姿勢に頭がクラッとした。良い意味でね。




 あとは、クラフトエヴィングさんのまだ手にしてなかった本。読む人によっては、全く無意味で下らない本なんだと思う。でも、僕が素敵だなと思う創作の形はこれ。




 陶器や磁器、ガラスや木工、鉄や紙。素材もそうだけど、人の手による、人の頭によるプロダクトの本を欲している。といってもカタログ的な話ではなくて、もっと人間くさい側面を捉えた本。それは創り手の人間くささでも良いし、書き手の人間くささでも良い。そんな本が読みたい。いや、読むべきだと思う。




 そして足を運ぼうと思っていたところはお休みだったので、土曜日に行こうと思う。




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 もっと、地球に馴染みたい、と思う。なんだろう、どこの地にいても揺るがずにいられるように、なりたい。無論、ほとんどは今いるところの近くにしかいないんだけど。その小さな区画の中でも。あらゆる環境において、自分のあり方が狂わないように。




 その手段として、僕は洋服を使っているのだと思う。人によって、手段は違う。手段なんて必要なく、そう出来る人もいる。




 だんだん秋も深まってきて、寒くなってきた。




 僕は左手を、何度も握り締めている。     arlequin