随分と涼しくなって、長袖シャツが平気で着れるくらいになってきてくれた。なんと素晴らしいことか。




 帰ってきてそうそう、爆睡しながら伊勢丹へ行き、オーダーしていたシャツを取り、そそくさと家に戻りマンガを売りに行く。なんとまぁ、現実的なことか。旅行の後味とか、ないのか、僕は。




 ということで、帰ってまいりました。雨に降られたり、雷に襲われたり、「コレ、雨っていうか、台風並みじゃなねぇかい」ってくらいやっぱり雨に降られたり、大変な金沢でしたが、総合するとそれなりに良かったのかもしれない。




 21美術館や兼六園は勿論のこと、様々な雑貨屋やカフェにも寄りました。途中、「雑貨ばっかり見てたら、これ旅行にきてるんだかなんだか分からないな」と思ったりもしましたが、まぁそれはそれとして。




 しばらく金沢雑記が続くと思いますが、何卒。




**********




 総評として、まず。えーと金沢市内って話だったわけですが、まず思うのは「なるほど、観光地としては、まだまだなのだ」ということ。というよりは、金沢を目いっぱいに楽しむには、あるいは楽しめるには、ある程度のハードルがある、と。




 交通手段とかそういうのも勿論なんですが、何よりもその街としての特色。和の伝統もあれば、現代の新しさも取ろうとしている。なんともはや、ハイブリッドな谷中みたいな空気感。しかし。




 それってすんごく難しいですよね。へんな話、「伝統とか和を満喫するなら、京都のほうが数倍良いし、嘘っぽくない」ですし「現代を楽しむなら、都会の方が数倍楽しめるし、やっぱり嘘っぽくない」わけですし。つまりその微妙なラインの観光地というわけで。




 つまるところ、楽しむには「和の伝統(焼き物も木工も何もかも)も、モダンな雑貨も、あるいはいろんなモノを飛び越えすぎた現代美術も、そのほか他範囲もろもろ、総てに興味があり、何でも楽しめる」ような人じゃないと、まず退屈する。それとまた、確かな意志と趣向。




 その点、僕は大丈夫でしたけれど。美術館とか兼六園とかその他雑貨屋の記事は、おいおい書いていきます。




**********




 そんな中から一つ。最高に良かったのが、「あうん堂」さん。カフェ兼本屋なんですが、どちらもすごくしっかりしている。本に関してはチョイスも面白いし、なにより店主の好みがありありと分かる。それでいて、様々な範囲に手をだしていて、魅かれる部分が多く。




 またコーヒーに関しては、中川ワニをはじめ、幾つか豆を用意して淹れてくれているけれど、淹れ方も良いし、個性は少し薄いけれど間違いなく美味しい。席数なんかもすごく少ないし、アットホームなカフェだけれど、ここはすごく楽しい。ゆっくり、ゆっくりできる。




影追い1


 そんな中での、出会い。本をつらつら見ていて、背表紙のガーっと漁っていたのですが、そこで妙に引っかかったこの本。竹谷内桜子さんの『影追いの街』。カルチャー的な棚だったかと思いますが、タイトルとその背表紙の装丁に引かれ、ふと。中を除くと、詩というかなんというか、すごく面白い。




 空想上の影追い街のいろいろなことを100個文章にしています。一言のページもあれば、少し長いページもある。それが100個。上田風子さんの挿絵とともに、ただ延々とそれが続きます。




 あまりに素晴らしい。全然知らない人だけれど、この素晴らしさは、買うしかない。装丁も中身も、コンセプトも良い。




影追い2


 こんな背表紙。




影追い3


 カラーのページもありますが、この挿絵が滅法恰好いい。




 コーヒーを楽しんだ後、この本と一緒に会計をお願いすると、微妙に店主がビックリするので何事かと。そんなにこの本を買うのがおかしいか、とも思いましたが理由を聞くと納得。




 竹谷内さんというこの方、金沢というかもはや「あうん堂」さんとこの結構近くに住んでる方なんだそうな。「あうん堂」さんにも時々コーヒーを飲みに来るとか。アレでしょうね、全然アピールもせず棚に差してあっただけなので、それでこの本を持ってきたのが意外だったんでしょうね。んー、売れないのかなぁ。




 「竹谷内さんに、うちで売れましたよ」って言っておきます、と。いや、マジで売れてないのかコレ、と変な気分にもなりましたが、良い本には違いないので、良しとして。このサイズの本としては、少々高めの価格。まぁ、ロットうんぬんとか、もうけうんぬんの話もあるので仕方ないですが。




 書店でもし見かけたら(つーか、都会で出回ってんのかな、ISBNはついてるけど)手に取ってみてください。面白い本です。




 コレをはじめ、「あうん堂」さんには良い本がたくさんありました。レアとかそういうのは少ないけれど、センスが良い。ヘタしたら、カウブックスとかより普通に楽しめる。というか、趣向が近いからだけれど。




 あ、肝心のコーヒーを写真とってないや。店の雰囲気もとってない。まぁいいか、ホームページをご参照ください。ショップカードで、勘弁。




あうん堂


 ということで、金沢にこれから行かれる方は、とりあえず「あうん堂」さんは行ってくださいね。まぁ、観光スポット(東山周辺)の近くだから、分かりにくい場所とはいえ行く価値はあるかと。コーヒーは、二三味、東出、ワニとありますが、東出がおススメです。あっさりと、クセを完全に殺しているコーヒー(良い意味で)。




**********




 会社の後輩女史が、この後金沢に行くような感じらしいけれど、良い部分は伝えておきたいなぁと思ったりもする。「ここは行くべきだ」とか「ここは楽しい」とか「雨をなめるな」とか。後輩女史も楽しめれば良いけれど。つか、来年あたりにもっとゆったりと、もう一回行こうかなぁ。ちょっと今回は急ぎすぎた。     arlequin