「エル・トポ」 監督/アレハンドロ・ホドロフスキー

出演/アレハンドロ・ホドロフスキー、ロバート・ジョン、マーラ・ロレンツォ 他

オススメ度 ★★★★★★★7

カルト度 ★★★★★★★★★★10

◆内容など何も予備知識ないまま、単に「フリークスがいっぱい出てくる映画」という言葉につられて(死)とりあえず最後まで観て、そして、「なんじゃこりゃ」と言った。ホントに言った。人間、本当に自分で処理できない不可解なものに出会うと、このセリフを呟いてしまうもんなのか(笑)。

この映画は超カルトムービーとして有名らしいので、ホラー映画としてレビュー書くのはいかがなものかと自分でも思うが、私がレンタル店で借りてきたビデオのバーコードには「ジャンル/ホラー」と表示されていたので、ま、ホラーでいいや!!と(死)。
まあとはいえホラーとかそんなんで括るのはどうかと思われる途轍もないカルト映画。

荒野を延々と旅するガンマン・エル・トポとその幼い息子は、途中で山賊めいた虐殺で町を全滅させたガンマンたちの存在を知り、根城になっていた修道院でガンマンとそのボスである「大佐」を討って、その場で息子を捨て、大佐の愛人にされていた修道女を連れてまた旅を続ける。
女が突然に、「私を愛しているなら、この砂漠にいる4人のガンマンと勝負して」とエル・トポをそそのかす。
それぞれに己の境地を極めた最強のガンマンたちを、卑劣な方法で殺していくエル・トポ。
全てのガンマンを倒した先には虚無しかなく、存在意味をなくしたエル・トポを銃で撃って捨てる女。
――数十年後、植物人間状態だったエル・トポは、薄暗い洞窟の中で近親相姦を続けた末に奇形ばかりになってしまった一族の「神」として奉られていた。目を覚ましたエル・トポは、近隣の町の住人に虐げられている一族を助けるため、町に出て金を稼ぎ、洞窟と町をつなぐトンネルを掘り始める。そのとき、偶然町で神父をしていた、昔捨てた息子と再会するエル・トポ。しかし事態は、悲劇的な結末に向かっていく。

ホドロフスキー監督が、監督脚本音楽主演というほとんどの仕事を一人でやって作ったまさに「俺映画」(笑)。
聖書にインスパイアされたように数章に分けられた物語のそれぞれに「創世記」「預言者たち」「詩編」「黙示」と付けられている。内容は大きくわけて2つにわかれていて、それはエル・トポが堕落するまでの物語、そして「神」になった後の物語。

とにかく、映像、人物、展開、全部意味難解。
「僕にはこの映画が何を示しているのか手に取るようにわかる」という人にぜひ一日中説明してほしい。
ただまあ内容を理解しよう、というのを放棄して観ると、個人的にはいい映画だと思います。おもしろい。映像のシュールレアリズム的な造形がすごい。何もない砂漠に、何十匹ものウサギの死骸が並べられ、轟々とした炎に焼かれるなどのシーンはなんか頭がくらくらしそうだ。前半はそんな夢のように不確かで不可解な映像が連続するが、後半になってがらりと様相が変わり、西部劇的な町が現われ、そこでは着飾った人々が、奴隷を弄んでる。そんな町でエル・トポは小人の女とともに滑稽な道化芝居を演じて小銭を稼ぎ、町外れでトンネルを掘り続けるという実に地道な生活を続ける。だが結局、トンネルが開通した瞬間流れ出てきた奇形の人々が突然町に押し寄せたところで、結果は目に見えていた…。

という内容ばかり書き連ねてもなんだかよくわからない(笑)。ただ映像として突きつけられたイメージは圧倒的で、何度も繰り返してみたくなるような映画。ただまあ立て続けにはしんどいので3年くらい間をおいてから観たい(笑)。単に奇形好きにも楽しめるほどこの監督が明らかに愛着を持っている奇形オンパレード。特に秀逸なのは手無し足無し合体ガンマン。(03/10/8)