息を凝らし身を潜める・・
少しでも動けば物音がしてたちまち気付かれてしまう・・・
心臓が破裂しそうな緊張感・・・・
5分くらいたったか・・
皆黙ったまま目を合わせるだけ。まだ誰も動こうともしない。
一人が小声で言った。
「どうする?」
「この道歩いてくのはヤバくねえか?」
別の一人が答えた。
「こっちから行くか。」Mは草むらの方を指さした。
「道からあまり離れないように沿って行けば行ける筈だから。」
道なき道・・という言葉の通り。
戦争映画の1シーンのように草木をかき分けながら進む。
「おい、今年中に駅につけるのか?」
「山ん中で餓死とかシャレんなんねえぞ!」
ブツブツ言いながらも進む。進む。
2時間位は経ったのか・・
「おい、ホントにこっちで合ってんのかよ!電車の音が聞こえなくなったぞ!」
「うるせえな!一々文句言うなよ!」
「んだっと!コラッ!」
「おい、こんなところで揉めてどうすんのや!」
こんなやり取りが何回かあった。
途中休みながらもかれこれ5時間位は動いただろうか・・
辺りはすっかり暗くなってきた。
「この暗闇の中じゃこれ以上は動けんだろう?」
「それより、腹へったな~」
「一々言うな!こっちまで腹が減るやろ!」
「取り敢えず、ここで交代しながら仮眠をとるか?」「誰か眠いやつは?誰もいないなら先に休むぞ」Oが言うと、
「じゃ俺も」Aが言った。
娑婆にでたら先ずこれがしたい、あれがしたい・・・などと、起きてる3人は話しながら過ごした。
先の見ない状況・・しかも食料はゼロ・・・
あの時不安を抱えていたのは恐らく自分だけではなかっただろう。