【メカラウロコ】
●まえがき●
ココは都内にある小さなデザイン事務所。
その中で働いている2人は先輩と後輩の関係。
世間は5月のGW真っただなか。
2人は休日出勤で仕事に追われている・・・のだが、どうも後輩の様子がおかしい。
先輩はその原因と解決方法を見つけ出そうとする。
さてこの話、最後に「落ちた」のは一体・・・
■□■□■□■
【明転】
後輩「はぁ~~(ため息)」
先輩「ココの部分、修正しておいて」(原稿をわたす)
後輩「わかりました。はぁ~~(ため息)」
先輩「・・・お前さ、最近様子おかしいぞ」
後輩「そうですか?はぁ~~(ため息)」
先輩「ほらそのため息とか。全然こころここにあらずって感じで仕事になってないじゃん」
後輩「やっぱり先輩にはわかりますか?」
「当たり前だろ。ほぼ毎日お前の様子見てるわけだから。悩みあるならなんでも言ってみな」
後輩
「実は、ボク・・・」
先輩
「実は、どうした?」
後輩
「最近全然こころここにあらずって感じで仕事になってないんですよ」
先輩
「まんま言ったよね。それ」
後輩
「そうでしたっけ?はぁ~~(ため息)」
先輩
「ダメだおまえ重傷だわ。原因不明、心の病」
後輩
「どうしましょう?」
先輩
「仕事に集中して忘れるのが一番だよ仕事に。せっかくGW返上で仕事しているわけだからな」
後輩
「そうですよね!よし仕事仕事!」
プルルルルッ プルルルルッ(携帯が鳴る)
先輩
「ん?携帯鳴ってるぞ?」
後輩
「あ、すいません。LINEです」(内容を確認だけして携帯を閉じる)
先輩
「めずらしいな。おまえが携帯いじってる姿なんてあんまり見ないよな」
後輩
「3ヶ月くらい前から取引先の担当が変わったんですよ」
先輩
「それのやり取り?」
後輩「そうです。女性の担当者に変わったんですよ」
先輩
「女性なんだ。お前初めてじゃないか?担当が異性って」
後輩
「はい。しかも新卒の女の子なんですよ。だからわかんない事あったら気軽に聞いてって言ってLINE交換したんです」
先輩
「へー。女っ気ゼロのお前が自分からアドレスを交換するとはは意外だな」
後輩
「そこは仕事ですから」
先輩
「今の返信しなくていいのか?何」
後輩
「仕事の内容じゃなかったんで大丈夫です」
先輩
「仕事の内容じゃない?」
後輩
「相手は今日休みなんでプライベートな内容でした。だって世間はGWですよ」
先輩
「プライベートでもメールしてんだ。いいじゃん。返信しちゃえよ」
後輩
「だ、ダメですよ!」
先輩
「なんで?」
後輩
「今は仕事中ですよ!?集中しなきゃ集中!!(スマホにチラッと目をやる)」
先輩
「・・・あ・・・もしかして・・・」
後輩
「な、なんですか!?」
先輩
「わかりましたお前の心のやまい」
後輩
「わかったんですか?僕のやまいの原因」
先輩
「さっきも言ったろ。これだけ毎日一緒に仕事してるんだ。おまえの事なんておれが一番よくわかってるよ」
後輩
「教えてくださいよ」
先輩
「でもなぁ。こう言うのってなかなか本人は認めないからなぁ」
後輩
「いやいやいや、ちゃんと受け止めます」
先輩
「そう言っときながら、否定するんだよなぁ」
後輩
「そんなことありません!このままじゃ先輩とか色んな方にも迷惑かけるんで教えてください」
先輩
「わかった。んじゃズバリいうな。お前それね、恋だよ。恋。恋に落ちたんだよお前は」
後輩
「な、なに言ってるんですか。そんなわけないですよ!」
先輩
「ほら。否定した」
後輩
「すみません!いや、でも・・・ボクみたいなものが・・」
先輩
「こういうのはな、本人はなかなか自覚しないもんだ」
後輩
「自分にかぎってそんな事はないと思うんですが・・」
先輩
「そう言ってるヤツほどそうなんだって。恋は盲目って言うからな」
後輩
「目が見えなくなるんですか!?」
先輩
「そういう直接的な意味じゃなくて。恋に落ちると理性が失われて周りがみえない言動をしてしまうってこと。だからまずは自分で認めな」
後輩
「認める・・・んですか」
先輩
「そうだ。そうすることで次に進めるから」
後輩
「・・・わかりました。認めます」
先輩
「よし!よく言えた。それじゃまず自分で宣言しな。『私は、恋におちました』って」
後輩
「私は・・・私は・・・」
先輩
「言い切れって。随分とラクになるから」
(後輩、息を思い切り吸って)
後輩
「鯉に落ちましたっ!!!」
先輩
「いい思い切りだ!!お前にも人間らしいトコロあるんだな。恋に落ちるなんて!」
後輩
「人間だったのになぁ・・・まさか鯉に落ちるなんて!」
先輩
「ほら少しラクになっただろ?」
後輩
「凄い事をカミングアウトした感は多少ありますが、確かに少し楽になった気がします」
先輩
「がんばれ!恋を経験することで、オトナへとなるわけだからな!」
後輩
「え!?いちど鯉に落ちてもオトナへなれるチャンスがあるんですか!?」
後輩
「私は・・・私は・・・」
先輩
「言い切れって。随分とラクになるから」
(後輩、息を思い切り吸って)
後輩
「鯉に落ちましたっ!!!」
先輩
「いい思い切りだ!!お前にも人間らしいトコロあるんだな。恋に落ちるなんて!」
