英語バイリンガル育成プログラム予告編が終わり、本編に入る直前、必ず少しだけ居住まいを正し、「さて見るか」と構える。ポップコーンはマイクの袋詰めからカップに代わっても、この緊張する瞬間だけは子供時代から同じだったし、たまらなく好きだった。
１２０分前後、銀幕に集中する度合いも、場所が単館劇場からシネマコンプレックス（シネコン＝複合映画館）に代わっても変化はない。月１回に足を運ぶ程度の映画好きにとって、この時間は金を払ってでも得たいと思っている。
そんなファンが注目するニュースが流れた。シネコン大手ＴＯＨＯシネマズが４月から、一部の地域限定ながら一般入場料を１８００円から１５００円に引き下げるという。１８歳未満は１０００円（現在、大学高校生１５００円）に統一し、効果を見て来春から全国に導入するかを判断する。
ＴＯＨＯ側は、値下げの理由について「デフレの中、１８００円は映画ファンの期待に応えていないと反省し、映画の作り手と送り手、ファンの３者が納得できる料金体系にしていきたい」と話している。背景には、近隣シネコンとの過当競争が激しくなっていることや入場者が頭打ちになっていることもあるのだろう。先頃、発表された昨年の年間興行収入は約２２０７億円と過去最高を記録したが、料金が高い３Ｄ映画が牽引（けんいん）しただけで、入場者数はあまり変化していない。
諸外国と比較して日本の料金は高いことで知られている。料金体系の複雑さも不評で、今回の企業側の努力は映画ファンには朗報に違いない。牛丼チェーンの価格競争ではないが、ＴＯＨＯの試みが成功すれば、他のシネコンも追随する可能性だってある。
今月５日からは、名画ばかり１００本を上映する「第二回午前十時の映画祭」が始まった。第一回が好評だったため、５０本を新たに加え、全国５０劇場に拡大された。こちらは一般１０００円、学生５００円とリーズナブルだ。あまり劇場に行く機会のない若い人たちが映画の魅力に触れることができる絶好の機会といっていい。少子高齢化の時代、やはり若い学生たちが劇場に足を運ばなければ、映画産業はじり貧になってしまう。
中学時代、その世界に魅了され、洋画のパンフを初めて衝動買いした「スティング」。「ジョーズ」に仰天した高校時代…。若い頃に見た、いい映画は、いつまでも記憶に残る。１２０分の集中は銀幕でしか味わえない。（編集長 勅使川原豊）
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