さぁ、桃子に続き表彰台圏内まで駒を進めました。


初対戦となる相手選手の強さの噂は以前から耳に入って来ていました。

動きの速さと突きの強さ。
彼の所属道場は全国的にも名の知れた道場で全日本の上位クラスの選手が多数在籍しています。

準決勝までの彼の試合を全て見ていた大将は無言でコートに向かって行きました。

準決勝前くらいから何となく大将との会話がなくなって来ました。

親子でありながら話しかけづらいオーラを発していました。

いつもの大会なら距離の取り方や闘い方などコミニュケーションを取っているのですが全て好きなように、悔いの残らないように闘わせました。

何とかここをクリアして入賞を確定させたい。
この時点では入賞する事の方に頭が行っていました。

セコンドに着いてどんな指示や檄を飛ばしたのか、記憶にありません。

ただ覚えているのは延長になった時に

「これが最後だと思え、自分の方が強いと信じろ。」

そこだけは覚えています。

後で動画を見ると壮絶な打ち合いでした。

対戦相手のスピードに手を焼き、正確なショートレンジからの強い突きがバシバシと大将のボディーに突き刺さりました。

試合時間全体の圧を評価してもらったのかも知れませんが勝つ事が出来ました。

「突きが凄く痛かった。」

試合後、大将の第一声でした。

これが3回目のリアルチャンピオンシップ挑戦。

初回は一回戦負け、二回目は二回戦敗退、今回は決勝まで来る事が出来ました。

ここ迄全くのノーマーク選手だったと思います。

正直、ここ迄来れた事で来れた事の達成感がありました。

更に決勝戦は関東同士の対戦。
何度も手を合わせている選手でした。

大将が最近迄最も苦手としているスタイルの選手です。

この一年で何度も手を合わせ、決勝戦で当たる事も多く最初の頃は負け続けていました。

この大会でも決勝までの闘いも上段への技有りを決めて勝つ試合が多かった印象が残っています。

お互いに手の内は解りきっています。

勝つための戦法としてあらゆるタイプへの対応はかなりやり込んで来ました。

その大会でのルールを最大限に活用し、自分のスタイルに持ち込む。

当然、自分のスタイルに持ち込まれると相手はやり辛くなります。
勿論、その逆もあります。

そこで生まれるのが動揺であり焦りです。

何度も何度もこの動揺、焦りで空回りして負けて来ました。

決勝前に、同行していた父兄の方が
「大将、どうせ取るなら大きいのを取ってかえろうよ!」

と声をかけてくれました。

いざコートに送り出す時が来ました。

「頑張って来い」

これしか言えませんでした。

「取るから!」

この一言はこの先忘れる事はないでしょう。

試合が始まりました。

この試合の記憶は鮮明に覚えています。
対戦相手の戦法に対し大将は田辺先生からの指導を正確かつ冷静に実行し続けました。

ただ、このままでは勝敗の付け所が見出せません。
案の定本戦は引き分けでした。

一発で決めなくてはならない水面蹴りも二回目は注意を取られる可能性もあります。

太ももへの下段への後ろ回し、後ろ蹴りも中々出せないようでした。

「もらってもいいから組め!組む空手に持ち込め!」

自分のスタイルに持ち込ませる事を指示し続けました。

結果、減点絡みではありますが優勝する事が出来ました。

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もし優勝を決めたらその瞬間、感動で涙が出るかも、と思っていましたが

ほっとした。疲れた。と言うのが実感でした。

大将が試合後に言った言葉です。

「減点絡みだったから自分も相手選手も勝った気も負けた気もしないと思う。」

この大舞台で私よりも冷静でした。

二人の決勝戦はまだまだ続きます。

いつもは姉弟ゲンカばかりしている桃子も決勝戦は全力で大将のサポートに回っていました。

ある意味で家族が一つになっていました。
武道、大会が対戦相手や家族の絆を作ってくれる素晴らしい点です。

強さだけでは全日本大会で優勝出来ない事がよく分かりました。

その日の体調、テンション、メンバー、運、ルール、タイミング、全てが桃子、大将に味方をしてくれたこの1日だったということです。

ただ一つ心の中で褒めてあげたかったのは将志も含め、年間30試合にも登る大会に出場して多くの経験をし、大将15回、桃子10回、将志10回の優勝をしました。

倒して来た相手の気持ちを背負って結果を出した事です。

数日経って多くの方々からお祝いの言葉をかけて頂き、これからの道のりが大変だな。と実感し始めました。

この連載「空手への挑戦」を書き始めた時はタイトルと連載ブログの内容の結びつきがあまりありませんでした。

桃子、大将、将志の成長記録的になっていましたが、このリアルチャンピオンシップ優勝、入賞によってうまく完結する事が出来ました。
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ここまで二人をサポートして下さった武心会の田辺先生、頻繁に出稽古を受けて頂いた一狼塾の木村先生、一狼塾の皆さん、何よりもこの二人に空手のいろはを教えて頂いた尾谷先生、稽古仲間、大会での戦友、全ての方々に感謝です。

空手への挑戦はまだまだ続きます。


6年前、全てはここから始まりました。
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次回は完結編として

私が生徒の親の立場から道場を立ち上げ指導者として生徒、父兄と接しての実感と様々な体験をリアルに書きたいと思います。
もう少しお付き合いください。