3月を過ぎて新しい生徒も多くなって来ました。
武将會では入門して道着が出来るまでの間を練習生と呼んでいます。
道着を着て初めて道場生となります。
はじめのうちでも段階を追って自己の存在感を自覚させる為です。
実は桃子は武将會を立ち上げる頃は空手への(特に大会)テンションがかなり下がっていていつ空手を辞めてもおかしくない状況でした。
しかし、選手クラスの大会熱が上がって来た事と、道場内では大将と共に一番キャリアがあることから、自分が引っ張って行かなくてはいけないと言う強い責任感が芽生え始めたようでした。
後輩の前で自分を追い込む稽古姿は他の生徒達にも良い刺激になったと思います。
もう一つの要因は同世代の女子が数人入門してくれた事です。
それまではほとんど男子だけの中でやって来たからなのだと思います。
大会も女子戦には出場した事がありませんでした。
大将はと言うと、2年生の時には全くと言っていいほど勝つ事が出来ませんでした。
上級戦では全て一回戦負けで、私と大将、どっちが先に心が折れるかという状況でした。
当然桃子の大会成績も似た様なものでした。
そんな事があって道場を開く事にした理由の一つかも知れません。
しかしこの年に入って約半年、大会で入賞する事が多くなって来ました。時には優勝も。
確かに前年よりも出場回数は数段増えていますが、上手く書けませんが勝つ事の何かを掴んだ様でした。
前回にも書きましたが私の大会に対する考え方は、初中級戦は自己との闘い。上級戦は全てに負けてはいけない闘い。
と定義づけています。
大将にもリーダーとしての自覚が出て来ました。
あるいは二人とも勝つ事の快感がたまらなかったからかも知れません。
やがて武将會も一周年を迎える頃には更に生徒の数も増えて来ました。
この辺から初級クラスと上級クラスの線引きを明確にしました。
武将會の場合は入門時の説明ではっきりと保護者の方達に伝えている事があります。
一、組み手重視の道場である事
一、厳しい稽古内容(特に体力強化)。
一、小学6年生迄の尺でメニューを組んで
いる事。
もし、一つでもご理解頂けない場合は入門を再考してもらってました。
道場指導者の考え方は千差万別です。
正解などないと思っています。
どんな取り組み方でも同意を受け同じ気持ちで進んで行く者同士であれば間違いもないはずです。
皆、違うカラーで稽古を積んで来た者同士がオープンな場所で闘うから刺激的なのです。
秋を迎え、いよいよ全日本選手権のシーズンです。リアルチャンピオンシップ、総極真ジュニアチャンピオンシップ、新極真ドリームカップ、ジャパンアスリートカップなど最高峰の全日本大会が始まります。
この年は桃子、大将、鼓太郎、将志がリアルチャンピオンシップの出場権を獲得していました。
大将は二回目、他の生徒は皆初めての参戦でした。
権利を獲得した時に初めて貰ったワッペンは今でも道着の袖の一番上に縫い付けられています。
この年の大将は出場権をなかなか取れずに愛知県の選抜大会にも出場しましたが失敗に終わり、夏合宿の初日に最期のチャレンジで石川県まで遠征して権利を獲得しました。
前年の話です。
大将が初めて出場したリアルチャンピオンシップは兵庫県宝塚市で開催されました。
大将と二人で前乗りする予定でした。
桃子は残念ながら権利を取る事ができなかったのですがどうしても一緒に行きたかったのでしょう。
大将のスパーリングパートナー兼身の回りの世話や雑用係で同行させました。
(かばん持ちと言った記憶もあります。)
道場を開設して初めての全日本大会、ワクワクドキドキの開会式の始まりです。
入場式が始まった時、大きな衝撃が起きました。
暗転された広い館内にスモークのカーテンができ、そのスクリーンに何色もの光?レーザービームがアップテンポの入場曲に合わせてまるで生きているかの様に交錯し入場して来る選手達をライトアップし続けました。
宮野代表のセンス抜群の演出に大会のスケールの大きさを感じました。
さて、試合の方は当然勝つ為に仕上げてきたのですが、緊張なのか実力なのか初戦敗退でした。
前乗りして飛行機で来て、1分30秒で終わりました。
これが現実です。
やはり予選大会を優勝通過しなくては高いハードルなのかも知れないなぁ。と感じました。
帰りの飛行機迄かなり時間が空いたので三人で道頓堀で食事をする事にして電車で移動しましたが、あの日、あの時と同じ雰囲気でした。
そうです。以前、横浜で女子選手に完敗した時の帰り道と。
食事をしながら聞いてみました。
「来年も出ような!」
「あたりまえじゃん」
絶対に来年もあのスポットライトを浴びたい!2人共心の中で同じ事を考えていた筈です。
その言葉通りに今回は仲間4人とこの舞台に戻って来る事が出来ました。
この年はさらにグレードアップした演出でした。間違い無く大会とメンバーが進化してます。
武将會のメンバーも進化してました。
入賞者はいなかったものの少し前進しました。
鼓太郎 三回戦敗退
大将 二回戦敗退
桃子 初戦敗退
将志 初戦敗退
初参戦の鼓太郎があと一歩でベスト8でした。
大将も一回戦を突破できました。
なんとなく、なんとなくですが何かが見えて来た気になりました。
0にいくら数字を掛けても0ですが、1に5を掛ければ5になり、10を掛ければ10になります。
1勝を作る事が出来た事が大きな収穫でした。
また私も全日本大会での闘い方が少し見えて来た感がありました。
翌12月にはこちらもトップグレードで恒例の総極真ジュニアチャンピオンシップが愛知県で開催される事になっていて武将會からは4名が出場権を獲得していましたが、土壇場で大問題が起きました。
続きは次回に書きます。