＂次男の織田信雄は、長男の信忠と同じく生駒家の娘・吉乃から産まれた。

11歳の時、父・信長の伊勢国司北畠侵攻の際に和睦の条件として、北畠家の養子となった。

更に北畠家の姫を娶り、元服した当初は北畠具豊、後に家督を貰い受けてから信意と改めた。

＂一方の信孝は、北伊勢の豪族の娘に産ませた子で信雄よりやや先に産まれたと言われている。

しかし、母親の家格によって三男にされたとも。

ここから二人の間には確執が始まっていたと噂された。

＂信意が北畠の家督を継いだ翌年に事件が起こる。

信意が信長と企て、義父の具教を始めとし北畠の義弟２人と主だった家臣を抹殺する。

更に残りの北畠一族と旧臣も悉く討ち果たしたが、難を逃れた北畠忠臣達が難攻不落と恐れられた霧山城に篭って激しく抵抗した。

信長はその鎮圧に差し向けさせたのが、羽柴秀吉と信孝らだった。

兄の不手際の尻拭いをさせられたと信孝は憤ったが、父の命令には逆らえなかった。

そして、伊勢一国を手にするのが信意なのも面白くなかった。

織田家家督争いの最中に諱を織田信雄と改め、これにより名門北畠家は滅亡した。

＂本能寺で信長が討死した時、信孝は長宗我部元親攻めの総司令官として指揮権を与えられ畿内で軍備を整えている最中だった。

総大将とあって力の入った信孝は、自領の北伊勢のほとんどの若者を徴兵した。

それでも数が足りぬと、信雄の伊勢兵も工面してもらい寄せ集めとはいえ14,000人の兵を集めた。

しかし信長死去の知らせが広まると、情勢を見た兵達が次々と脱走する。

明智光秀討伐に動こうにも、もはや軍としての体裁は保てていなかった。

そこに羽柴秀吉が中国地方から20,000人の大軍を持って現れる。

信孝が丹羽長秀と共に合流した時には秀吉は既に軍議を終えており、総大将には長秀を用意しておいたと勧められた。

直近にいながら兵を纏められず、即座に打って出られなかった後ろめたさもあり長秀は固辞したが、弔い合戦ならばと信孝を置くことで決まる。

表面上は見事に光秀を討ち取った信孝率いる討伐軍ではあるが、実質は秀吉の軍で秀吉の策で秀吉が差配し秀吉が討ち取ったに等しかった。

この時信雄は、伊勢の兵の多くを四国遠征にと信孝に渡していた為に数が集められなかった。

結果、信雄は甲賀を越えられず、戦わずして引き上げ何の戦果も残せなかった。

これもまた、諍いの元になっていた。

信雄と信孝