真田さんからのメールはまだ続いていた。

 

『さきほど事務所に立ち寄ったところFAXが届いていました。
 妹さんのいとこの娘 山崎かなこさんからのものです。
 こちらでどのように伝えたらよいか判断が付かないため、

 ご相談させていただきます。
 出来ればそちらでご連絡いただけないでしょうか?』

 

真田さんからのメールには画像が添付されており、開くと

「山崎かなこ」と言う人物からのファックスがそのまま写されたものだった。

そこには手書きで…

 

『おはようございます。お忙しいところすいません。私、織部の従姉妹の娘の

 山崎かなこです。さきほど、お電話させていただいたのですが、

 お留守だったため、ファックスさせていただきました。

 本日はお伺いさせていただきたいことがありまして、

 ご連絡させていただいたのですが、織部はそちらに出勤しておりますでしょうか?

 実は一週間ほど前から連絡が取れなくなっていて具合も悪いようでしたので

 緊急入院などをしているのかなと、とても心配です。なので、もし

 ご存知のことがあれば教えて頂きたいのです』

 

最後に「山崎かなこ」と言う人物の電話番号が記されていた。

従姉妹の娘…は僕にとってそれほど近い存在ではない。

 

父の兄妹の娘の娘か、母の兄妹の娘の娘か?僕には数人、母方の従姉妹の中で

仲が良いのがいるが、「山崎」という苗字ではない。

父方は妹が生まれた頃から父と叔母たちの仲が急激に悪くなり

連絡が途絶えている。妹が従姉妹と知り合うことすら難しい。

 

実際、妹が父方の従姉妹に初めて会ったのは昨年の祖母の葬式のときだ。

亡くなった祖母の遺体が入れられたお棺を挟んで父と叔母は

不穏な空気を漂わせていた。お別れの時、一人ずつ一輪の花を

祖母のお棺に声をかけながら乗せていく。故人を偲ぶ最大の

クライマックスだ。参列者の多くが涙を浮かべている。

 

密葬なので花が大量に余った。余った花が乗せられたお盆を持つ葬儀社の女性が

催促するように再度花を乗せるよう遺族の間を行ったり来たりしていたが、

その様子にじれた父がお盆を奪い、残った花を全て祖母の遺体の入ったお棺に

投げ入れた。

 

祖母の小さくなった体は顔も見えないほど花で埋もれ、お棺は

大量の花の入ったただの箱のように見えた。叔母の娘の、つまり僕の従姉妹の

三歳になった息子が言う。

 

「ばあばが見えない!いなくなっちゃった!」

 

叔母が父を怒鳴り散らしながら祖母の体を花から掘り起こす。

まあ父が悪いが、故人を間に挟んで父と叔母は10分ほど罵りあいを展開する。

祖母も死に切れない。随分とコミカルな葬式でドリフターズみたいだ。

もはや誰も泣いていない。

 

結局、父と叔母に気を使い、僕たち従姉妹同士は双方に別れ口をきくこともなかった。

だから、妹が父方の「従姉妹の娘」と知り合う環境はなかったし、この

ファックスを送れるような、そんな大きな従姉妹の存在が父母両方の親族にいない。

 

気が進まないが直接電話をしてみることにした。