察は40分ほどかかった。一歳児の子どもを持つ中島くんが島田くんの

子どもを預かり、島田くんは妻と2人で診察室に入った。

 

医院長は話だけを聞き、診断はまだ下せないという。1日分の薬だけ出し、

明日もう一度診察に来るように、その時間を取ってくれた。

 

診断をすぐしてもらえなかったことに島田くんは不満げだった。

しかし、診断をすぐに下す、心療内科医なんて見たことない。

○○と思われる、などと言うことはあるが、それも患者を安心させたり、

納得させるために使っているようで、一度見ただけで判断する医者が

いれば、かえって信用できない。

 

次の日の診察は島田くんと妻と6ヶ月の赤ん坊の3人で行った。

待合室にはテレビがあり、ワイドショーではロシアのアメリカ大統領選への

サイバー攻撃のニュースが流れていた。島田くんはじっとそのニュースを

見ていた。

 

診察のとき、医院長は

 

「統合失調症と双極性感情障害の間、のような…」

 

といったニュアンスのことと、昨日一生懸命書いた役立たずの問診票を

もう一度書くように言ったという。

 

この三つの出来事で島田くんのご機嫌はすっかり斜めになってしまった。

具合の悪さが加速した、といっても良い。気に食わないことがあると

具合が悪くなるなんて、なんて都合の良い病気だろうか?

 

医師の曖昧な診断(診断ではないと思うが)で医師を信用できないと

疑い、二度も問診票を書かせることに馬鹿にしてる、と憤慨した。

そしてそれらの出来事を謀略や陰謀だ、と再び壮大な妄想の旅へと

出航してしまった。

 

妻の携帯から僕に電話がある。声の主は島田くんだ。

 

「まったくもって疑わしい!先生と織部さんが裏で何か糸を引いてませんか?

 でないと、僕が物書きになりたいなんて、あの先生が知っているわけない!」

 

島田くんが物書きになりたいという話は昨日、役立たずの問診票に

自分で書いていたはずだ。

 

突っ込みたいが、僕と先生は一度もそんなこと話していない、とだけ説明する。

すると

 

「そうかなあ。あまりにも偶然の一致が多すぎるんですよ。

 明石家さんまさんの話を突然タクシーの運転手がしたり、

 その運転手がわざと道を間違えたり、公安の車が尾行していたり」

 

理解できるどころか、何がどう一致しているのか?

まったく一致していることすら見当たらない。

 

「でなければあれか!」

 

突然、一人で納得し出す。

 

「トランプとロシアに巻き込まれたか!」

 

ヒラリークリントン級の大物ぶりを発揮して電話が切れた。