文左衛門の旅行鞄

文左衛門の旅行鞄

どこかに行って、印象に残った時に書くかもしれないし、書かないかもしれません。
旅行の多くが出張ですが、出張だって「旅」と思えば楽しいものです。
あと、趣味がランニングなので、走るためにどこかに行くこともあります。
そんな話題が多くなるような気もします。

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2013年9月14日から21日まで、シベリアに行ってきた。

女房が所属するアマチュア合唱団の「シベリア公演」にくっついて行く旅行である。


正午に成田空港に集合とのことなので、京成上野を1040に出発するスカイライナー21号に乗り込む。


文左衛門の旅行鞄

新宿区内のわが家から成田に向かうには、何通りかのルートがある。

新宿か東京からJRの成田エクスプレスを利用する、あるいは新宿駅前からリムジンバスで行くという手もある。

しかし私は、必ず京成上野からスカイライナーで行くことにしているのだ。


初めての海外旅行は、社員旅行だった。

当時30人にも満たない小さな会社だったが、バブルのおかげでそんなことができたのだろう。


大学を出て三カ月目で、行先は香港だった。

京成上野の駅前に集合して、みんなでスカイライナーに乗って成田に向かったのだ。


その社員旅行がすごく楽しかったというわけでもないのだが、以来「海外旅行は京成で」という自分の中での決め事になってしまったのである。


女房もそのことには特に反対することもない。

反対どころか「京成は安いからね」と、好意的に受け止めているようでさえある。


今回は上野に早めに着いたので、アメ横を歩いたりした。

女房は「ありえない値段だ」と言って、お洒落なババシャツのようなものを買い込んでいた。

シベリアは寒かろう。

役立つといいね。


空港第2ビルに1121着。

正午から「結団式」なるものに参加。

何人か知っている人もいるが、基本的にはあまり知らない人たちの集団なので気疲れする。

早々に出国手続きを済ませて、数少ない知っている人たちと昼食をとる。

「当分飲めないから」と、日本のビールも飲む。


我々が乗るのはS7航空の566便ウラジオストク行き。

S7航空というのは旧シベリア航空であり、驚いたことに日本航空と同じワンワールドに加盟している。

この便も日本航空との共同運航便なのでマイルが加算されるという。

ありがたい。


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窓の外には黄緑色のエアバスA320が停まっている。

ロシアのエアラインだからツポレフとかアントノフとか、それっぽい飛行機かと思っていたのだが、ペレストロイカから四半世紀を経た今となっては、もはや西側の飛行機なのである。

少しがっかりして、大いに安堵する。


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1415搭乗。

1440になってようやく動き出し、1445離陸。

太平洋側に向かって飛び立ち、九十九里の海岸線上で右旋回でUターン。

いままでいた成田空港を右に見ながら新潟方向に向けて高度を上げていく。


どういう手はずになっているのか知らないが、「合唱団」として一括りにされているので、女房とは離れ離れの席である。

隣の二人は合唱団員であることは間違いないのだが、まったく知らない人だ。

ウラジオストクまで会話なし。


座席は最後方に近い26F。

3人掛けの窓側なので、トイレにも行きづらい。

なんとも面白くない旅立ちである。


離陸から20分で軽食が出た。

なぜか表紙に香港の写真が描かれたランチボックスである。

ロシアから見れば、日本も香港も変わりないのだろうか。


コーヒーか紅茶かというのでコーヒーを頼んだらえらく薄いコーヒーが供給される。

揺れてこぼれそうなのですぐに飲み干す。

トイレに行きづらいのに。


成田からウラジオストクまでは、羽田から旭川に行くより少し遠い程度の距離である。

それでも食事が終わると機内の照明が暗くなり、一応国際線の雰囲気は出してくれた。


1620、再び照明が明るくなると降下開始。

ロシア語と英語のアナウンスの後に、テープだが日本語のアナウンスが流れた。


1632、窓の下に地面が見えた。

ユーラシア大陸であり、シベリアの大地であるが、見た感じは帯広あたりの眺めと変わりはない。

雲が多いうえに夕闇が迫っているので、それだけでも寂しい雰囲気になる。


1647、ウラジオストク空港に着陸。

ボーディングブリッジを通ってターミナルへ。

去年ここで開催されたAPECにあわせて空港も整備されたらしく、中は小ぎれいである。

日本の地方空港(米子とか高松とか)と似たような感じだ。


入国審査を経てロビーで待機。

団体旅行なので、いちいちこうした「待機」がある。

しかも長い。


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空港のトイレもきれいだった。

ただし、アサガオの位置が高い。

少し踵を上げ気味にしないと不安になる。


添乗員の指示に従い、時計を2時間進めて現地時間に合わせる。

1940、空港を2台のバスに分乗して出発。

APECに合わせて整備されたという高速道路を飛ばして、2035にホテルに着いた。


ウラジオストクを訪れる日本人の大半が利用するといわれる「ホテルプリモーリエ」。

プリモーリエとは沿海州と言う意味である。

日本でいえば「ホテル房総」とか、「相模屋旅館」みたいな名前でしょうか。


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さすがに部屋は女房と一緒だった(あたりまえだ)。

しかし、与えられた3階の部屋は、窓の真下で道路工事をしている面白くもなんともない部屋。

室内も殺風景で、「ああ、ロシアに来たんだな…」と逆にうれしくなる。


この日は夕食がない。

飛行機の中で軽食が出たんだから、それで我慢しろということらしい。

仕方ないので、スーパーに買い出しに行く。


ホテルから歩いて5分ほどで、シベリア鉄道の終点「ウラジオストク駅」に出る。

その正面に24時間営業のスーパーがあるのだ。


海外とはいえ、成田からたったの2時間である。

しかも着いたばかりなので、みんな元気で賑やかだ。

あれも食べたい、これも食べたいと迷っていると、店員がやってきた。

腕時計を指さし、ロシア語でなにやら訴えかけてくる。


どうやら午後10時を過ぎるとアルコール類の販売ができないらしい。

このとき時刻は2145。

みな慌ててレジに並び、すったもんだの末に買い物終了。

ホテルに戻り、いくつかのグループに分かれて小宴会となる。


私は日頃から仲のいいY氏、Y氏と同室のA氏、それに女房の4人で部屋飲みとなる。

各自買ってきたラザニアみたいなものとかポテトサラダをどうにかしたようなものなどをつまみにロシアのビールを飲む。


ロシアのビールは思ったほど不味くはないが、「こりゃ美味い!」と膝をたたくほど美味くもない。

銘柄にもよるのだろうが、早くも日本のビールが恋しくなる。


ビールはそうでもなかったが、膝をたたくほど美味いものもあった。

正体のわからない魚の干物である。


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ビール売り場の近くに、いかにも「ビールのお供にどうぞ!」といった佇まいでぶら下がっていたのを何気なく購入したのだが、これがじつにしょっぱくて美味いのだ。

シシャモと同じか、それより少し大きいくらいのサイズで、受け口のなかなか愛嬌のある顔の魚だ。


商品名は「Корюшка Вяленая」。

値段は153ルーブルだから日本円で500円弱。


上手に飲めば、これ一匹で缶ビールのロング缶を2本くらい行けるしょっぱさ。

結局このあと一週間ロシアに滞在するのだが、その間に食べたものの中で、この干物が一番美味かった。


酔ったせいか部屋の中が少し暑い。

窓を開けてちょうどいい。


現地時間で2430に解散。

日本はまだ10時半だが、この日は早起きしていたので、あっという間に眠りに落ちた。


【2013.09.14】