文盲

本を読んでいて、なんとなくここが気になっていたり、このフレーズが好きだったりしませんか?

僕はそんな気になったフレーズや詩を、不定期で書きならべていきたいなぁと思ってます。


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河岸忘日抄

学校みたいに大きな組織のなかでも、友だちだけの集まりのなかでも、それからたぶんクラブや近所づきあいでも、内向きの愛着や忠誠心が強くなればなるほど、そこに属していないひとたちへの蔑みと憎しみが大きくなるんだって。

誰でも知っているそんな状況に特別な言いまわしを与えるまでもないと思うから、友達が使ってた言葉を借りるけど、「排除」ばかりに熱心なひとたちの群れから自由になるためには、ぜんぶ捨てなくちゃならないって、これまでは考えていたの。自分もふくめて、なにもかも全部。家族も、もっと大きなところなら国も。

でも、そういう集団の外へ出て行くには途方もない勇気がいる。わたしにはそういう勇気がないから、踏み出す気力がないからだめなんだって思い込んでた。

それがまちがってた。いまこの世界で他人から完璧に離れているなんてとてもできないことだから。自分の領土にあかの他人を引き込んだり、土地をほんのわずかでもひろくしてやろうと、そんな計算ばかりしているひとたちには、正真正銘の外側なんて理解できない。

外を理解するってことはうちにも目をむけるってことでしょ?嫌なものたちの環から外へ出るために、とっとと逃げ出すために切り落としてきた尻尾のほうにこそわたしの「ほんとう」があって、トカゲみたいにあとから生えてきた尻尾はその幻影みたいなものかもしれないって、そう認めることでしょ?

どっちが「ほんとう」かわからないにしても、そういうふうに考えることじたいに「ほんとう」があるんじゃないかな、そうすれば、他人との関係がずいぶん変わって見える。それは「やさしさ」とか「思いやり」とかとはちがう、「あたりまえ」のことなんだって、命の芯になるもんだって、そう思えるようになったの。
河岸忘日抄 (新潮文庫)/堀江 敏幸

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内戦

内戦

最近、「ホテルルワンダ」を見ることになった。ご存じルワンダ内戦の映画だ。
今呼んでいる「アニルの亡霊」はスリランカの内戦について書かれている。
この前に「悪童日記」の著者アゴタ・クリストフの書いた自伝を読んだ、まぁそれがなかなか良かったので、このブログにも「文盲」としたんだけど。
彼女もハンガリー内戦の中、亡命をしたのだった。


作家になるには・・・?という章が気にいっている。
作家になるためには書き続ける事 だそうだ、書いたものがだんだん人に読まれなくなったとしても、この先書いたものを誰も読まないことになったとしてもだ。
どうすれば、自分の思っていることをここまで堂々と書いてしまえるのか、僕はそっちが気になってしょうがない。
この先僕はたくさんの本を読むことになるだろうし、読みたいと思うけど、僕が僕として堂々と何か言い切る事のできるような事を見つけることは一生ないような気がする。
だけどね、そんな事を書いてある気になった所はまちがいなくたくさんあるので、そんなのをこの場でつたえられればと思ってる。

アニルの亡霊

アニルの亡霊

仕事さがしてボガラへ来たが

おりた穴ぐら七十二尋

蠅みたいに小さくなって、坑口からでは見えもせぬ


やっと地上へあがったときは、

命の心配せずにすむ・・・・・・


縦穴の底の足場はありがたや

坑口の命の滑車はありがたや

滑車のチェーンはありがたや・・・・・・

                      鉱夫の俗謡(スリランカ)