昼をとっくに過ぎたというのに、胃袋が静かに抗議してくる。
カップ麺じゃ物足りない、コンビニ弁当も気が乗らない。
俺の中で、何かが騒ぎ始める。
──「肉をくれ」
だが、焼肉のテンションでもない。ステーキに向かう元気もない。
そうじゃない、俺が求めているのは……あの、揚げたての衣と、とじられた玉子。
そうだ、なか卯があるじゃないか。
◆ あの店の、あのかつ丼。
暖簾をくぐると、独特の安心感がある。
注文は決まってる──かつ丼(並)。
タッチパネルの操作も迷いなし。
席に座ると、厨房から油の音が聞こえてくる。
待つこと数分。
出てきたかつ丼は、期待を裏切らない姿をしている。
やわらかく煮込まれたタマネギ、つややかな玉子、
そして、分厚いトンカツが白飯の上にドンとのっている。
◆ 山椒をかける。ただ、それだけでいい。
ここで俺は、いつもの“儀式”を始める。
卓上の山椒。これを、ひと振り、ふた振り……いや、ちょっと多めにかける。
このひと手間が、味の世界をガラリと変える。
サクサクの衣と、ふわとろの玉子。そこに山椒の爽やかな香りが走り抜ける。
──うまい。いや、うますぎる。
じんわりと汗をかきながら、俺は一心不乱にかきこむ。
甘辛いタレ、ピリッと香る山椒、白飯の安心感。
この三重奏が、腹だけでなく、心まで満たしてくれる。
◆ 静かな満腹。誰に見せるでもなく。
気づけば、丼は空っぽだ。
誰に褒められるわけでもない、特別なグルメ体験でもない。
だけど、この一杯が、今日の自分にちょうどよかった。
「ごちそうさま」
そうつぶやいて、そっと席を立つ。
外はまだ、暑い夏の午後。
だけど、胃の奥から湧いてくる小さな満足感が、
俺の背中を軽くしてくれる。
肉の日に、派手な肉じゃなくていい。
なか卯のかつ丼に山椒をかけて食べる、それが今の俺にちょうどいい。
よく食べる肉料理は?
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