私はチェロの響きが好きです。楽器は全く弾けませんが、一番人の声に近く、深く美しいその音色を気に入っています。というわけで、チェロを独奏としたチェロ協奏曲もいろいろと聴いてきました。通称ドヴォコンなんかは月一で聴いていると思います。そして、藤岡さんのエンター・ザ・ミュージックで話題になったのが、吉松隆のチェロ協奏曲「ケンタウルス・ユニット」。初演から20年近く経つのに、難曲のせいか再演の機会がなく、一昨年日本の誇るチェリストの宮田大さんと原田マエストロと東京交響楽団によって、とりあげられた曲です。
ケンタウルス・ユニットという名称は、演奏者と楽器、弓とエンド・ピンという姿を上半身が人間で、下半身は馬という獣神にみたてたもの。なかなか的を得た名称だと思います。この曲は初演と録音で演奏した、チェリストのピーター・ディクソンに捧げられています。元々、英Chandosで吉松隆シリーズの第1号、交響曲第2番の録音を行った際、BBCフィルハーモニック管弦楽団の首席チェロ奏者ピーター・ディクソンの演奏(冒頭のチェロ独奏)に感銘をうけた指揮者の藤岡幸夫マエストロが、彼をソロとしたチェロ協奏曲の作曲を作曲者に依頼してできた曲。吉松隆は交響曲作曲家でもありますが、多くの協奏曲をいろんな楽器のために書いています。
上述した宮田大さんのライヴCDも出ていますが、ここは敬意を表してChandos盤を紹介したいと思います。2003年の録音で、藤岡さんの写真も若い!
第1楽章は、テンポが頻繁に変わりますが、一貫してチェロの響きが美しい割に、オケがめまぐるしく変化するのは吉松流でしょう。時に幻想的に神秘的に混沌として、チェロに絡んでいきます。第2楽章の冒頭は和の世界。琵琶と琴の音色を模したようなピツィカートが印章的。寂寥とした感じと言った方がよいでしょうか。日本人でなければ書けない音の世界です。第3楽章は一転して春の野の風景を描きます。明るく伸びやかなチェロの響きに、オケはいろんな曲からの引用の旋律が柔らかく溶け込み、フィナーレは映画音楽のようにカッコよく終結。
今後、何度も演奏されるべき、チェロ協奏曲と思います。
