今日は、ガーディナーのバッハのカンタータ全集「巡礼」からの1枚。今回は、聖母マリアお清めの祝日のために作曲された4曲です。

キリスト教徒でないと判りにくいのですが、この日は2月2日にあたり、シャンドルール(聖燭祭)とも呼ばれていて、クリスマスから40日後にあたります。イエス・キリストが、聖母マリアと夫ヨセフによって神殿に連れてこられた際の出来事を記念して祝うもの。欧米の多くの地域では、この日がクリスマス・シーズンの終わりとして、装飾品を外し、クリスマス・ツリーを燃やすそうで、息が長く心暖まる風習です。

さて、この日の機会音楽として、バッハが最初に作曲したのが、第83番「新しい契約を結ぶ喜びの時よ」。冒頭のアルトのアリアは、喜びの時を晴れやかに歌い、オケの響きがそれを支え、とりわけナチュラル・ホルンの響きが温かみを加えています。最終のコラールは短調ですが、滋味深く締めくくります。

第82番「私はもう十分だ」は、バス独唱のアリアとして有名な曲。幼子イエスが神殿に連れてこられた際の、シメオン老人の心情を歌っています。冒頭のアリアは、オーボエ・ソロと弦楽の響きは、穏やかな夕暮れの情景を思い起させます。3曲目のアリアは「眠りのアリア」とも呼ばれていて、地上の苦しみから逃れイエスと一つになるという願望がよくわかる、心の奥底深く訴えてくる曲です。最後のアリアは、死を予期した喜びの舞曲なのでしょう。

次の第125番「安らぎと喜びと共に私は逝きます」は、冒頭のコラールは死の恐怖を現しているのか暗く、フルートとオーボエのほの暗いアンサンブルに支えられ、死の意義について歌われます。次のアルトのアリアは、上記2つの管楽器に低弦を加えたトリオに支えられ、静寂の中にある種の瞑想の独白。そして、バスのレチタティーヴォとコラールを交互に歌った後のテノールとの二重唱からは、幸福感に満ちた響きとなります。「あらゆる信仰心は、その恵みの国へ招かれるのです」と。全曲を通じて、音楽と言葉が結びついた、素晴らしいカンタータだと思います。

最後の200番「私は彼の名を告げましょう」は、シュテルツェルの受難オラトリオのアリアを編曲した作品。4分程のアリアですが、穏やかな響きの中に信仰の確信が込められていると思います。

最後に、82番のカンタータが、全バッハのカンタータの中で一番録音が多いそうです。確か、ディースカウも何回か録音してましたね。