ムビチケの当日券を買えるポイントが当たったので、気になっていた本作を見てきました。「またすごいの見に行ったな~」と思う方もいるかもですが^^;三島由紀夫という人に興味があるんですよね、以前から。その割に作品は「春の雪」ぐらいしか読んでいませんが…

 

「花ざかりの森」という三島のデビュー作(14歳の時書いた)を読んで、当時同世代だった私は非常に衝撃を受けたのです。14歳でこの作品の完成度!この人すっごいぞと思い。結局晩年は体を鍛え「筋肉マッチョ」になり、最後は自死(割腹自殺)をしてしまうわけなんですけど。あの時彼が死ぬとは楯の会のメンバーも思ってもいなかったようで、依然として謎が残る死に方のようです。

 

その1年半前に東大生と討論したときの映像が残っており、今回それを編集し、当時三島と議論した人のコメントなども加えて作られたのがこの映画です。東大全共闘(学生運動でも一番過激だった団体)に招かれて、三島由紀夫は一人東大の駒場キャンパスの大教室に乗り込みます。

 

まず入り口に三島を揶揄するようなポスターが。「近代ゴリラ」と文字が書かれ、上には三島を面白おかしく描いたイラストがありました。飼育料100円~というカンパの書き方も実に挑戦的で(笑)しかし三島は怒ることもなく微笑みながら見つめている画像もありました。

 

東大の全共闘では、考えが異なる(右翼と左翼)立場の三島を論破して、壇上で切腹(というのは言葉のあやで、困らせて言葉に詰まらせようということだろうと思います)させようとの魂胆だったようです。ともすれば暴力沙汰にもなるんじゃないか?と最初は思われ、三島の側近(楯の会のメンバー)も教室の前の方の席にこっそりと控えていたらしい。

 

だけれども三島さんは、最初から丁寧にユーモアを交えて話をはじめ、「カンパ料を君たちにもうけさせるためにここに来るなんて甚だ本意ではないし、そのくらいなら分け前を半分、楯の会に欲しいぐらいだ」(大体こんなような内容)と言って学生の笑いを誘う。

 

すでに大作家で、ノーベル文学賞を川端康成と争ったほどの人物だったにも関わらず、三島由紀夫はおごり高ぶらず、学生たちに常に紳士的であり、彼らの意見にも耳を傾けて議論しようと努めていましたし、何より敬意を表していたのが素晴らしかったです。考え方は違えども「諸君の熱情を評価する」とも語っています。

 

さすがの全共闘も、三島さんの真摯な姿勢には打たれたんじゃないでしょうか。それは当時その場にいた人のコメントからも感じ取れました。おひとり「一番の論客」とうたわれた芥正彦氏は強烈でしたね。まずあの場に自分のお嬢さん(しかも赤ちゃん)を連れてくるとは。場が和んだメリットもあるのでしょうが。

 

三島と自分の考えはすれ違ったまま、このまま議論を続けても無駄だ、と悟った氏は途中で議論をあきらめ、教室を出ていきます。芥さんには「国籍」はなく日本人でもない、「自分は自分の国の国民」という確固たる信念があるようで、その辺もなかなかいない存在だなと舌を巻きました。早くから前衛芸術に目覚め、現在もお芝居の世界などでご活躍のようです。

 

三島さんは、自分より20歳以上も若い学生たちを本気で説得しようとしていたといいます。右翼左翼の違いはあれど、「反米感情」を抱き、国を憂う思いは一緒だから、「一緒に闘えないものか?」と。実際この討論会で司会を務めた木村修氏は三島さんに楯の会に入らないか?と誘われたのだとか。

 

1969年に学生時代を送っている全共闘の彼らと、三島さんには生きてきた環境に大きな差があったんですね。三島由紀夫は終戦を多感な時期に経験し、学徒出陣などで戦死せずに自分は生き残ってしまった負い目がある。かつては絶対権力だった天皇が、今は「象徴化」されている。その辺にも内心忸怩たる思いがあったようです。

 

だから「天皇」にこだわり、敬意を持ちながらも、人間宣言をされた天皇陛下に疑問も抱いていたんだろうと思います。第二次世界大戦を経たか否か…激動の時代ですから、ジェネレーションギャップも半端ないんでしょう。

 

その他にも雑誌「平凡パンチ」のミスターダンディの1位に選出されたのが三島氏であったり(2位は三船敏郎でした)マスメディアを上手に操作して、自分をかっこよく見せる才能にもたけていた人のようです。

 

コメントを寄せられた方の中に「学生運動は東大の学生が盛んに行っていたのでテレビも注目し、放送したのだ」とおっしゃっている方がいましたが、確かにそうかも…。今だって東大生は絶対的な存在ではありますよね。クイズ「東大王」も人気ですし、さんまさんが東大生と絡む・いじる、「さんまVS東大生」も何度も特番が組まれています。

 

あ~しかし三島さん、45歳という若さで死を選んでしまったのは、瀬戸内寂聴さんもおっしゃっていましたが、「もったいない」。生きていたら名作をさらに生み出していたんじゃないかと思うと…。自分で選んだわけですから、そんなこと言っても仕方ないんですけどね。

 

私には大変興味深く、面白い映画でした。三島さんの動く・しゃべる姿ってほとんど見たことなかったので。いや~それにしても当時の喫煙率の高いこと。討論しつつみんな煙をくゆらせていました。学生も三島さんも…。私ならけむたくってきっと耐えられんなww

 

このブログを書くにあたって、検索して出てきた記事がありますので、もし関心お持ちでしたら読んでみてください。

三島由紀夫と川端康成、文豪2人の自殺の原因に「新事実」(クローズアップ現代+私見・J-cast)

閲覧注意・三島由紀夫 割腹自殺の全容(NAVERまとめ)

三島由紀夫没後40周年、都内で「憂国忌」営まれる(AFP通信)

 

You-tubeで表示された三島由紀夫に関する特番(NHK)です。後半でこの討論会の話も出てきます。