画像引用元:https://eiga.com/movie/89090/
封切り当時、気になりつつも結局見に行けなかった本作をレンタルで見てみました。大泉洋という人は「水曜どうでしょう」はじめ、バラエティーも印象的な人ですが、やはり役者としても大変力のあるいい俳優さんですよね。
この鹿野靖明という個性的かつ魅力的な人物も、彼じゃないと演じられなかったのではないかと思うくらい。実際監督の前田さんもそうおっしゃっているようなので。役作りも、ダイエットをし視力はコンタクトをつけることで低下させてからメガネをかけたということですから…。
特に日本人は「他人に迷惑かけないように」とか「わがままは許されない」みたいな概念に重きを置く国民性だと思うんですが、自分の夢にいつも前向き、「自分では何もできないから他人に頼るしかない、頼るのも勇気」という鹿野さんの言葉には、思わずなるほどとうなづきました。
鹿野さんは実在した人物で、子供のころは体も普通に動かせましたが、12歳の時「筋ジストロフィー」と診断され、長く生きられないだろうと医師に宣告されます。
その後徐々に体の自由もきかなくなってしまったようですが、それにしても12歳まで、と余命を言い渡された人が42歳まで(2002年永眠)生き抜いたわけです。そこを考えてもすごい生命力・パワーだと感嘆します。
「夜中にバナナ買ってきて」「ビール飲みたい」など、わがままにボランティアさんをこき使うようにも見える鹿野ですが、「自己責任」ってなんだろう?とこの映画を見ると考えざるを得ないです。鹿野さんはもちろん好きで体が不自由になったわけじゃない、だからといって健常者がごく普通にできることをあきらめる必要がどこにあるんだろう?
旅行する・カラオケに行く、できる範囲でやりたいことをやる権利は当然あるはずで、そのためには人の力(介助)を借りざるを得ないわけですものね。
それにしても「鹿野ボラ」と呼ばれる鹿野さんの自立生活を手伝うボラさんたちは大変。痰の吸引など、本来なら医療従事者がやる、24時間油断できない仕事も睡眠不足に悩みながら行う。鹿野さんの「人たらし」でユーモアあふれる性格に魅せられて、というところもあるでしょうが、なかなかできることじゃないよな。
昔から長い付き合いのボランティア役を萩原聖人、渡辺真起子、宇野祥平という名優で固め、友達・家族のような絆を鹿野さんと築いているのもよく伝わってきました。
一見暴君のように見える鹿野に意見するのが、ボランティアとして新入りした美咲(高畑充希)で、美咲に鹿野は一目ぼれ(笑)この辺りはおそらくフィクションだろうと思うのだけど、美咲は本当に可愛くて真っ正直で。
助演女優賞(日本アカデミー)にノミネートされたのも納得です。だけどこれだったら主演の洋ちゃんはどうしてノミネートされなかったんだろう?不思議で仕方ないです^^;
美咲と田中(三浦春馬)のカップルも実に爽やかで素敵ですよ。絵になる二人でした。
「英検2級合格」「いつかアメリカに行く」という夢を結局果たせぬまま、鹿野さんは生涯を終えますが、かかりつけの医師とも喧嘩しながら「自宅で生活したい」自分の希望を最後まで貫き、努力した彼はすごい人だと思うし、ボランティアさんにも多大な影響を与えたんじゃないだろうか。
のべ500人のボラさんが参加したそうなので、関わった人数も半端じゃないですけどね。
あとびっくりしたのが、鹿野の母役で綾戸智恵さんが出演していたこと。綾戸さん=関西弁という人は多いでしょうが、北海道の話なので、綾戸さんも見事に関西弁を封印。お母さん役を熱演されていました。
鹿野が「親だからって介護をさせるのはおかしい。親にも人生があるんだ、『私のせいで靖明が…』と自分を責めてばかりいてほしくない」と話す場面がありますが、親と離れて暮らし、ボランティアに支えてもらって自立生活を送った理由もひとつはそこにあるのだと感心しました。
泣けるシーンも多々ですが、楽しいシーンも満載です。「障碍者」と「健常者」の関係の在り方、ボランティアってなんだろう?などと考えることが多くある作品でした。原作もamazonで今度買って読もうかなと。
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綾戸智恵さんが、大泉 洋さん演じる主人公の母親役を熱演!(家庭画報)
大泉洋主演『こんな夜更けにバナナかよ』に萩原聖人、渡辺真起子ら出演