自閉症の19歳の青年が「走る」ことで生きる楽しさを見出していくお話
といえばいいのでしょうか?自分の気持ちをうまく表現できないのが
この病気なので、途中まで彼は本当に走るのが楽しいのだろうか?と思ったりして。
お母さんが熱烈で、お酒(ビール)が大好きなコーチの家に押し入って
部屋の片づけをしてまで、「この子の指導をしてください」と頼む込む。
コーチは「それはあなたのエゴなのでは?」と問いかけ、
母親は息子と少し距離を置くことにするのだが。

私が知らないだけかもしれませんが、それほど有名じゃない俳優さんを起用してるところ
がいいのかなと。母親役もコーチ役の役者さんもとても良かったし
(母親役のキム・ミスクは二十年ぶりのスクリーン復帰とか。
そんなことみじんも感じさせなかった)
チョウォン役の彼はチョ・スンウ、何の作品に出てたんだろうと思ったら
「ラブストーリー」に出てたんですね。何を考えてるのか図りかねるものの
心はとても純粋なチョウォンは素晴らしかったです。

母親がコーチに正面きって怒鳴ったり、シマウマ柄(チョウォンはシマウマ好き)
のバックをチョウォンにいきなり触られて怒る女性に文句言ったり。
日本ではあまり考えられないことかなとも思いましたね。
自分の信念に自信を持ってるということなのかもしれませんが。

その母親が次男の反発に合う。「大事なのはチョウォンだけなんだろう?」
夫の心も離れつつあった。家族がひとつになるのは
こんなスムーズに運ぶかなと思わんでもないのですが。
母が昔、チョウォンの手を動物園で一瞬はなしたことを息子は覚えていた。
「うちの子は障害があるんです」と母の言葉をオウム返しに叫ぶ姿。
彼自身『自分は差別されている』とどこかで気づいていたのだろう。
罪の意識にさいなまれる母親と共に観客も息をのんだのではないかと思う。

「JSA」でも軍隊で支給されるお菓子として「チョコパイ」が
出てきてましたが韓国ではポピュラーなお菓子なんでしょうかね?
チョウォンはチョコパイも大好き。マラソン中にチョコパイが
給水所で供されるのは不思議な気もしたんだけど。

母の手を振り切ってマラソンに参加するチョウォン。
今までの感じだと10キロマラソンしか出てなかったようなので、
いきなり4倍以上の距離走るってんだからお母さんが止める気持ちも十分わかる。
受身だった彼がはじめて自分で決断して走る。
シマウマのように走りたい!と念じながら・・・
最後の写真も一人で写ったところに意味があるんでしょうね。
母親も彼の自立を認めた。彼は芯から走ることを愛しているのだと。

しかし日本版のテーマ曲が「そして今も」(小田和正)なはずなのですが、
最後まで流れませんでした。どうして~why?(by真島茂樹←マツケンサンバ振付師)
あんだけCMで流しておいて。ファンとしては肩透かしだったよなぁ~~。
いや、全編に流れるピアノの音楽も素敵でしたけどね。

この映画は、お子さんがいる方だと、一段と身にしみる、
共感するところの多い作品なのだろうと思いました。
子供を育てるって、何が正解なんてないし、
とても難しいことなのだと痛感しました。

あ、ひとつ付け足し。人を受け入れられないはずのチョウォンが
コーチにペットボトルの水を差し出すシーン。
今まで自分の食べ物は一人で食べ、コーチの食べ物には手を出さなかった彼が
コーチとの絆を築き始めたのがわかるいい場面でした。