出典・映画.com

 

これもそろそろ上映回数が減ってきたので、見れないかなと思っていましたが…よかった、見れました!そして見てよかったと思いました。

10年ぶりのご本人主演・監督だそうですが、すごいねぇ~この年齢で撮る映画だから説得力と含蓄に富んでいる。久々に映画館でかなり泣いてしまいました。東森監督作品では「ミリオンダラーベイビー」と同じぐらい好きです。

 

デイリリー(百合の一種だと思う)の栽培に魅せられ、人生をかけて美しい花を作ってきたアール(イーストウッド)。品評会で優勝をし、そのスピーチでもユーモアあふれ、多くの人に愛されていたのですが、時代の波というのか、「インターネットで花の販売」をする業者に負け、10数年後自分の農場はたたむことになります。いかにも今っぽいですね…。

 

 

仕事を失い、家族との関係も悪化したまま、妻と娘は口を開けば不満ばかり。家に戻れるはずもないアールに「運び屋をやらないか?」とメキシコ人の男性が声をかけてきます。自動車の運転で「あるもの」を運ぶだけで、たんまりとお金がもらえる。怪しいこと極まりないのですが、アールはそれに乗ります。「いかれたジジイ」と言われながら…(笑)

 

 

自動車を運転しつつ、ラジオから流れるオールディーズを一緒に口ずさむアールは、実にお気楽おじさんに見えます。メキシコ人同士が熱く口論している時もひとりガムをくちゃくちゃ噛んだり。あるメキシコ人男性には、「お前ほんとにメキシコ人か?ナチスの総統みたいなしゃべり方だな。俺は朝鮮戦争にも出征してたんだから怖いものはないんだ」とバッサリ。

 

仕事ぶりが気に入られて、麻薬組織のドン(アンディ・ガルシア)の豪邸に呼ばれれば、若い女性に接待を受けてウハウハ。「おいおい!おっさんよ~いい気なもんだなぁ」と途中まで私はケラケラ笑っていました。

 

だけど心の底では妻と娘と和解したいとずっと思っていて、後半この設定がきいてきます。泣けるんだな…本当に。奥さんの言葉は愛憎悲喜こもごもで。アールの「何でも買えたけど時間だけは買えなかった」という言葉もグッときます。

 

 

ブラッドリー・クーパーが麻薬取締の敏腕捜査官ですが、彼とアールとのやり取りも人生の先輩と後輩という大前提で。本来敵であるはずなのに全然そんな感じじゃない(笑)そのあたりも心温まってしまうのでした。

 

 

年を重ねてなお盛んなイーストウッドさん、今後の作品も期待しちゃいます。本作は87歳で運び屋をしていたという実際の人物(NYタイムズマガジンに記事が掲載されたようです)に着想を得たとのこと、お見事です。

 

シネマトゥデイのイーストウッドのインタビューです。→こちら

 

実の娘・アリソン・イーストウッドがまさに娘役で共演してますが、以前は父娘関係もよくなかったようです。今は修復しているようで何より。