出典:映画.com

 

見事アカデミー賞作品賞を獲った「グリーンブック」。ずっと気になっていましたが見てきました。

この映画は「白人が見て(自己)満足する」みたいに書かれている評論もあったんですが…私はそうは感じませんで。

 

というのも黒人のドン(著名なピアニスト)にやとわれたトニーは、NYブロンクスの出身でイタリア人。移民何世?とかになるのかな。詳しくはわかりませんが、家族ではイタリア語で話したりするし、パスタとピザをこよなく愛する、一見粗暴に見えながら実は心優しいキュートな男性です。

 

 

「イタ公」って言葉があるぐらいだから、当然アメリカではイタリア人差別もあるでしょうし、トニーもそういった苦労はしてきたに違いない。その彼でさえ、最初は黒人を激しく差別していたんですよね。差別される側がさらに差別をするという。奥さんのドロレスはそんなことはなくリベラルな人なんだろうというのは最初の方で描かれますが。

 

そんなトニーが失業し、報酬のよさでドンの南部コンサートツアーの車の運転手になるわけで。旅の始まりはもうハラハラしますね。運転手なのにたばこを吸ったり、荷物の積み込みも拒否したりと、「あんた何様だ」という感じ(笑)

 

でもドンは声を荒げることなく、辛抱強く理性的に彼を受け入れるんです。なんだか先生と生徒みたいに見えたり。それが旅を続けるにつれ、トニーがドンへの見方を変えていく。まずは彼のピアノプレイを見て感心し、才能に舌を巻く。でもその一方で夜になるとひとりお酒を飲んで孤独な姿が心配にもなってしまう。

 

 

ドンはロシア語も堪能で、高学歴で洗練された人物。もちろんピアノの才能が豊か。北部にいればコンサートを開いても高いお金をもらえる。それなのにあえて人種差別が厳しい南部にコンサートツアーを決行する。「黒人差別をする世界を少しでも変えたい」という強い思いがあったから。

 

実際南部でもディープなところに行くにつれ、彼は理不尽な差別を受けます。スーツを買いたくても試着できず・トイレは粗末な黒人専用のところを使うように言われる・そのホテルでコンサートをするにもかかわらず、ホテル内のレストランで食事ができないetc...

 

 

「黒人というだけでNYでもバーに行けば差別を受ける」「(高い教育を受けて)黒人でも白人でもない自分はどうすればいいんだ!」というドンの魂の叫びは、常日頃冷静沈着な人物だけに、心ゆすぶられます。

 

しかしできれば🎄クリスマスにこの映画見たかったかなぁ、という感じです。映画に出てくる時期的に。まぁ仕方ないですけどね。

 

差別がテーマの内容ながら、ドンとトニーの会話は軽妙で面白くて笑えるところも多々。軽快な展開で楽しいです。ケンタッキー州でフライドチキンを食べるシーンは特に好きだったなぁ(笑)