出典・映画.com
「ムーンライト」の監督の新作ということで見てきました。相変わらず音楽の使い方もスタイリッシュでカッコいいですね。
この映画の舞台は1970年代だそうですが、人として正当に扱われず「ゴミ扱い」される黒人の子供たち、生きる喜びを持てぬまま、悪の道へ足を踏み外す人が多いのも事実…。
それでも愛する人を見つけ、あたたかな家庭を持とうとする、そんな願いでさえ踏みにじられるのだ。「黒人である」という事実だけで色眼鏡で見られ、えん罪で刑務所に入ることも。ごく普通に生活する善良な市民がどうしてこんなことに…と怒りを覚えざるを得ない。
若いカップル・ティッシュとファニー、幼なじみのふたりは成長し、ごく自然に惹かれあって結ばれます。ラブシーンは見ているものまでドキドキさせられ、セクシーかつロマンティックであるだけに、2人を襲う残酷な運命に言葉を失います。
ティッシュはデパートの香水売り場で働いているのですが、それひとつとっても黒人の男性は「彼女が娼婦にならないか」と心配しながら近づいてくる。試しに香りをかぐのでも、自分の手の甲に香水をふりかけて確かめる。白人の男性はティッシュの手の甲にふりかけて、彼女の体臭も含めて遠慮なく嗅ぎまわる…
そのほかにもティッシュをちらっと見かけただけで、「性の対象」として強引に近づく白人男性もいたりするのだ。もし白人同士であれば、一方的にという確率はかなり減るのではないだろうか。
エンディングは淡々として、ティッシュとファニーはこの後どうなるのだろう、と余韻を残しつつ終わる映画です。その分アメリカに大きく横たわる黒人差別、わかっていたこととは言え、重苦しさが鑑賞後もずしんと心の中に残ります。