「ラ・ラ・ランド」を撮った若き監督チャゼルさんの新作。
今回もライアン・ゴスリング主演なんですよね。実在の人物・ニール・アームストロングを描く作品です。監督は「ライアン以外演じる人は考えられない!」と豪語したんだとか。
アームストロングとは、1969年7月20日に人類初の月面着陸を果たした人で、「これは1人の人間にとっては小さな一歩だが、全人類にとっての大きな飛躍だ」という名言を残した人物。
宇宙ものの作品だと「スペース・カウボーイ」、「ライト・スタッフ」が好きですが、時代的にはこれは「ライト・スタッフ」の後になるんですね。
ソ連とアメリカどっちが早く月に行くか、宇宙飛行できるかというのを競っていた時代、アメリカでは軍隊のパイロットで優秀な人材をヘッドハンティングして、宇宙飛行士にしようともくろんでいたのでした。
軍でも活躍していた彼ですが、自分への冷遇に疑問を感じ、また家族の中で一大事も起きたことが引き金となり、NASAのジェミニ計画に名乗りを上げることになります。(※史実では冷遇を受けていたのか…は原作を私は読んでいないのでわかりませんが)
まだ宇宙開発もスタートを切ったばかりの段階ですから、ロケットも正直ぼろいし、見るからにやばそう(苦笑)実際に訓練中に不慮の事故が起こったり、ソ連に宇宙開発で先を越されたりで国は焦るばかり。
人の命をなんだと思ってんだという感じですが、それでも黙々と訓練にいそしみ、自分が飛び立つときを待つ宇宙飛行士たち。
しかも「宇宙開発に国費を注ぎすぎ」「それならもっと俺たちにお金をくれ」などという運動も黒人を中心として行われる中で、です。
アームストロングのプレッシャーは尋常ならざるものだったとわかります。最愛の妻でさえ、彼の孤独な思いを共有することはできない…
妻は妻で「もっと平凡な生活を歩むはずだった」と、宇宙飛行士の妻同士で語りあう場面も。そりゃそうだよな。
それぞれの心情を描きつつ、抑えた表現ながらも、ところどころの音楽の使い方はやっぱりチャゼル監督だな~と感心しました。
全体を通してもちろん心の揺れは多少あるにせよ、アームストロングは自分をコントロールできるストイックな人なんだろうなというのは強く感じました。そういう人じゃないと宇宙まで行けませんものね。
妻役・ジャネットを演じるクレア・フォイもよかったです。女性の強さ、優しさが出ていたと思います。
宇宙飛行の話ながら、実は「家族」についての物語なんですよね。最後の最後までそれを感じさせてくれ、クールなアームストロングだからこそ、その行動に余計胸を打たれました。
「ラ・ラ・ランド」のような華やかさはないかもしれませんが、この映画は正統派というか、じっくりと一人の男の生きざまを見せてくれます。