署長は話を続けた。
『結論から言いますと誘拐されたのは事実ですが、乱暴はされていません。』
でも、女子生徒が誘拐されたと聞いたら、犯人に性的暴行されて当然と言う
思春期特有の発想しか出来ない連中は署長が隠して居るのだと思っていた。
『と、私が言っても信じてもらえないのは経験上分かっていますので・・・・。』
そこまで言うと同行していた警官に目配せした。
すると警官の一人が教室から出て廊下で一人が教室に残り出入り口の前に立った。

その異様な光景にクラスの全員が圧倒されていると
『そこで、皆さんには犯人の肉声を聞いて貰います。
 なお、今回の件と関係無い所などは予め音声処理をしていますが、
 そこには供述している犯人のボス的存在の人物などの名前ですので気にしないでください。』
『―――――からは、身代金受け渡し後その少女の処理は好きにする様にとーーーー』
ここで、真一が反応した。

『署長さんこれを聞かせないとダメですか? これでは友美が可哀想です。
 友美の潔白を晴らすだけなら俺が知っている事を全部話せば良いだけでは無いですか?』
すると友美が
『良いの。私は何とも・・・・。』
『そんな訳ないだろう? 強がらなくても良いのだよ。俺が・・・・。』
『どうしますか? 友美さんが聞きたく無いのなら辞めますよ』
と署長が言うと友美は
『署長さん、質問しても良いですか?』
『どうぞ』
『真一さんは、今回の件を全て知っているのですか?』
『多分ですが、今回の一件は警察より詳しいかも知れません。
 その事は真一くんの噂話とも関係してくるので話の延長上で話す事になるとは思いますよ』
『そうですか・・・。じゃあ真実を知らないのは当事者の私だけと言う事になりますよね?』
『そうですね。でも、犯人の肉声を聞くのは真一くんも初めてだと思いますよ。』
『でも、知っていは居るのですよね?』
『そうです。』
『じゃあ署長さん聞かせてください。
 そして、真一さんも私の事を思って言って頂けるのは凄く嬉しいのですが、
 私だけ知らないのは気が収まりませんのでお気になさらないでください。』
真一も友美にそこまで言われると何も言えなくなり、それ以上なにも言わなかった。
クラスの生徒は今のやり取りが何なのか分からず唖然としていた。

すると署長が
『では、友美さんからも許可を頂きましたので続きを聞いてもらいます』
『言ったので、―――――の意図は分かった。だから、その後は・・・・。
 言わなくても分かるだろ。でも、何もしていない。
 あくまで身代金を受け渡し後にと言っていたので、あの娘には何もしていない。
 だから、あの少年にも言って置いてくれ、い命だけは取らないでくれとーーーーー。』
署長はそこまで聴かせると音声を停止した。そして、真一に目線を送った。
署長が言わんとしている事は分かったが反応しなかった。

『これが犯人の供述の一部です。だから、噂話になっている様な事は無かった。
 あくまで事実は友美さんが誘拐されたと言うだけだ。身代金さえ支払われていない。
 その前に解決したからです。これで信じてもらえただろうか?』
すると一部の生徒を省きクラスの多くは納得した。
『尚、今聞いてもらった内容などを他人に話す事は辞めて欲しい。それは家族でもです。
 一方的に聞かせて置いて悪いのだけど、友美さんが事実を違う噂話で苦しむのは違うと
 思ったので緊急処置と思って欲しい、皆の協力を願います』
署長は頭を下げた。
『次に真一くんの噂話に至っては完全なデマです。
 事実は先ほど話した友美さんの誘拐事件を解決したのは真一くんなのです』
それを聞いた瞬間クラス全員が真一の方を見た。
真一は、恥ずかしくて顔を赤らめた。
『真一くんは以前から友美さんが学校から下校する時に限って怪しい車が止まっている事に
 気づいており、事件当日、真一くんは胸騒ぎを起こし友美さんに連絡しても連絡が付かず、
 友美さんの家に行って誘拐の事を知りました。』

署長は少し事実を曲げて話し始めた。
『犯人からは警察に知らせるなと言われていた友美さんのご両親は
 身動きが取れないのを見て自ら助ける出そうと思ったそうです。
 本来なら絶対ダメな事ですが友達の窮地を知って冷静な判断が出来なかったのかも知れません。
 でも、真一くんには助けられる自信もあった。
 それは真一くんのAR、そう麻友さんの存在です。
 皆さんは知っているかも知れませんが真一くんのARは特別です。それだけの力もあります。
 だからと言って褒められた事でもありませんがね。
 そして友美さんが閉じ込められている所を突き止めた真一くんは迷わず友美さんを
 助けに行きました。
 当然犯人は抵抗したのですが人間とARのどちらが強いかは皆さんも分りますよね?
 犯人もARを所有していましたが麻友さんに勝てる訳もなく友美さんは無事に
 助けだされました。でも、黒幕は別に居たのです、それが誰かを言うのは控えますが、
 その人物が意図的に人を使って友美さんと真一くんはの噂をばら撒いたのです。
 それが誰かも分かっていますが、私がこの様に話した時点で意味を成さないとは思いますが、
 次同じ様な事が起きた場合はそれなりの処置をしたいと思います。』
署長はクラスの数人の顔を見た。
目を伏せて居るので一目瞭然だったがそれ以上のアクションは起こさなかった。

『これが真実で噂はあくまで噂だったと言う事です。
 何か質問がある人は答えられる範囲内でお答えしたいと思います。質問がある人はいますか?』
するとクラスの一人が手を上げた。
『はい、そこの人どうぞ』
『先ほど聞いた犯人の肉声で『あの少年にも言って置いてくれ、命だけは取らないでくれ』と
 言っていましたが、その少年とは須藤くんの事でしょうか?』
『その答えは私が言うより、当人に聞いてみた方が良いでしょう。真一くんはどう思います?』
真一はその場に立ち
『そうだと思うよ。友美を誘拐した犯人を目の前にしたら、
 冷静になれなくてちょっとやり過ぎたかも知れない。
 友美も無事だったし何もする気無いのにね。度胸が足りない犯人だっただよ』
署長は苦笑いしながら
『だそうです。これで良いですか?』
その生徒は『はい』と答えて座った。真一もほぼ同時に座った。
『他に質問がある人は居ますか? 無い様ですね。
 では最後に、これから先今回の事件の事で2人の事を悪く言ったりした人は警察で
 指導させて貰います。
 今までは真実を知らなかったので信じた人も居たかも知れませんが真実を知った今、
 面白おかしく話すのはイジメにほかなりません。私からは以上です。
 皆さんの大切な勉強の時間を割いて貰ってありがとうございました。』
署長は一礼して教室を出て行った。

それから担任が今回の事件については話題に出さない様に、
そして話も広げない様に自分の心の奥にしまっておくようにと言って今回の騒動は終わった。