すると善太郎は
『やっぱりそうか・・・・。
 だが真一くんも知っての通り麻友くんは戦闘などに特化したARじゃぞ、
 そんなARを手に入れて真一くんは何をする気なんじゃ?』
真一にはイマイチ言っている意味が分からなかった。
『あの・・・・。言っている意味が分からないのですが、
 もしかして、俺が麻友を使って世界征服でも企んでいると思っているのですか?』
図星を突かれた善太郎は口ごもりながら
『まぁ・・・・。そんな感じの事じゃ・・・・。』
苦笑いをしながら答えた。

『確かに男と生まれたからにはそれも良いかも知れませんが、俺はそんな馬鹿な事はしません。
 これでも、人の痛みは分かる方だと思っています。
 他人が傷つく事はしたくありませんし、麻友にそんな事させたくもありません。』
善太郎は真一の言葉を聞いて決断をした。
『優作、ワシは決めたぞ。ワシは夢を見たのじゃ。ARを作る夢をな・・・・。
 そして、それを作って持ってきたのはワシが古くから知っている真一くんと言う学生じゃ。
 あまりにもワシが見た夢のARと似ていたので
 自分が作ったと誤解してしまって周りに迷惑を掛けてしまった。
 で、合っているな。真一くん、麻友くん。』
一瞬真一は善太郎が言っている意味が分からなかったが善太郎の思いが分かったので
『麻友、それで合っているよな』
『はい、そう認識しています。』
優作は
『お父さん・・・・。それで本当に良いのですか?』
『良いも悪いも、それが事実なんじゃから』
『そうですか・・・。』
一度言い出すと後には引かない父の性格を知っているので諦めムードで笑った。

善太郎は何か晴れ晴れした様子と言うより、娘を嫁に出した父親みたいな境地で
『じゃあワシが正気に戻った所で話を進めるかの』
と言い自分のデスクから数枚の書類を出してきた。
真一は出された書類を見ながら
『この書類の束は・・・・。』
『麻友くんの手続きじゃよ』
善太郎が申請書類を出したのを見て優作が
『私は測定機材などを持って来るついでに部下を集めておきます』
と言って部屋を出て行った。

善太郎はどこか寂しそうに
『真一くん、麻友をよろしくな・・・・。』
と小声で言った。そして
『じゃあ説明するぞ』
善太郎は真一の前に書類を差し出し
『まずは、この書類【自作AR安全審査申込書】だが、
 これは審査出来なので書かなくて良いが、その代わりに【特殊AR使用許可申請書】を
 書いて貰うぞ、次に【代理調査申請書】と【AR特許新願書】を書いて終わりじゃ』
真一に次々と書類を書かせた。

ようやく真一が全書類を書き終わった頃に優作が戻ってきた。
『真一くん、これから【指紋】【声紋】【虹彩】と写真を撮らせて貰うよ』
優作は機材を操作し始めた。
真一は言われるままに、次々と登録していった。
全部終わると優作は先ほど書いた書類と指紋などのデーターが入ったROMを部下の人に渡し急いで処理する様に言った。

優作たちが登録作業を終えたのを確認した善太郎は真一の目の前に座ると
真剣な面持ち話し始めた。
『ここからが君の未来にも関わる事だから心して聞いて欲しいのじゃが、
 麻友くんは【ARL】が最高位のLevel7だから一般の人は持てないのだ』
『はい。麻友から聞きました』
『そうか、じゃあ詳しい事は知っているな』
『はい』
『そこでだ、真一くん我が社で働かないか?』
『はい?・・・・。どう言う事ですか?』
『先程も言ったが、麻友くんは【一般人】は持てないのだよ。
 だから、我社の社員になれば問題は解決するのじゃ』
『あの、社員になっても一般人に変わりは無いのでは?』
『確かに、一般社員俗に言う平社員なら一般人扱いだが、
 AR関連会社の場合ある程度の役職がある場合は一般人扱いにはならないのじゃよ。
 そうじゃないと研究や開発に色々支障が出るからな。』
『そうなんですか』
『と言っても、中学生の君がバイトは出来ないとは思うけど・・・』
『バイトなら出来ますよ。現に今も学校から特別に許可を得てバイトしていますから』
善太郎は優作と顔を見合わせ
『そうか! それは好都合。では、どうだ我が社に来ないか?』
『それは良いですが、俺がここで出来る事なんて無いですよ。』
『君は自分の才能をどう考えているのですか?』
麻友と同じ事を優作も聞いてきた。

『それと同じ事を麻友にも聞かれましたが、
 普通の人よりちょっとメカやプログラムに詳しい程度ですか?』
それを聞いた善太郎が大笑いした。
『真一くんがちょっとなら、我が社のメカニックやプログラマーは何と表現したら良いのかね』
真一が首を傾げていると
『君は多分、世界でもトップレベルの才能の持ち主ですよ。』
優作が言った。
『そうですか?自分では実感無いですけど・・・・。』
『まぁ、才能の持ち主は大概そう言うじゃがな・・・・。』
そして善太郎が
『話は戻るけど、どうかね我が社で働かないかね』
『俺としては、こんな良い会社で働かせて貰うのでしたら、
 こちらからお願いしたいくらいです。
 でも、学校があるので早い時間からは出られないですよ』
『別に来なくても良いぞ。本当に来て貰うのは大学でも卒業してからで良い。
 差し当たって今必要なのは、真一くんが我が社の社員であると言う事実だけだから。』
『じゃあ多分中学卒業したらこちらでお世話になります。』
『高校には行かないのか?』
『正確には行かないと言うより行けないと言う方が正解ですね・・・・。』
『金銭的にと言う事か? それなら心配いらん。そこの社長が行かせてくれるから』
真一は優作の顔を見ると優作は笑顔で
『良いですよ。真一くんが我社に来てくれるなら、
 高校と言わずに大学でも留学でも責任持ちますよ。』
『どうしてそこまで・・・。』
『理由は2つです。一つ目は楠木優作個人としては、私には娘が一人居ますが、
 息子が欲しかったのでそれを疑似体験出来そうだから。
 二つ目は楠木グループ社長としては、真一くんを他社に渡したくない。』
真一は色んな感情が込み上げてきた。
『なんと言えば・・・・。』
真一がどう反応すれば良いか悩んでいると善太郎は促す様に言った。
『素直に喜べば良いじゃよ。で、真一くんどうするかね』
『よろしくお願いします』
真一はその場に立って頭を下げた。

真一の返事を聞くと善太郎は優作に提案した。
『優作、一つ独立の部署増やすから良いか?』
すると優作も同じ事を考えたいたらしく善太郎の意見に賛同した。
『私も同じ事言おうと思っていました。
 真一くんをどの部署に入れても多分3日と持ちませんから・・・。』
真一はちょっとイラッとした。
『俺の為と思っておしゃって頂いているのだと思いますが、それなりに根性ありますよ。
 陰口を叩かれた位ではへこたれませんから!』
『優作の言葉が足りなかったのが悪いのだが、真一くんは誤解しているぞ。
 真一くんが3日持たないと言ったのではなく優作はウチの社員が3日持たないと言ったんじゃ』
『?』
『真一くんの才能は天賦の才能です。周りが付いて行く事はまず不可能です。
 先程のプログラマーは我が社ではトップクラスのプログラマーです。
 その人が真一くんの前では赤子同然だったでしょ? 
 だから、どの部署に入ってもあの様な事が起きるのは目に見えています』
『まぁ本格的に始動するのは数年後じゃろう、でも会社としては建前でも部署を作った以上、
 責任者は居るから真一くんがこの部署のトップで直属の上司はワシで良かろう』
『そうですね。その方が真一くんや麻友くんにとっても都合が良いですし、
 今後どう変化しても柔軟に対応出来ますからーーーー』
善太郎と善太郎が色々と大人の相談を始めたので真一は手持ち無沙汰になり、麻友と話す事にした。
『なんか凄い事になって来たけど、俺は嬉しいかな。
 これで麻友と一緒に居ても問題なさそうだし』
『真一さま宜しいのですか? 私の為に真一さまの将来を決めてしまって』
『別に良いよ。将来決めていた事があった訳でも無いし、叶えたい夢があった訳でもない。
 どちらかと言うと、こんなにも良い会社に入社が決まったのだから良かったくらいだよ。
 それに、麻友と一緒に居られるなら俺何でもするよ』
『真一さま・・・・。ありがとうございます』
そんな事を話していると会長室のドアが開き社員の人が入って来て優作に何かを渡した。
優作は社員の人から受け取った物を真一に渡した。
『じゃあ、これから渡す物は大切な物だから無くさない様にしてくださいね。
 これが【特殊AR使用許可】』顔写真付きの黒いカードと
『これが【仮AR特許証明書】』
A4用紙に何か書かれた書類と
『そして最後に【社員証明書】』
顔写真付きのカードを渡してくれた。