題名:Saga no Gabai Bachan (Nenek Hebat dari Saga)佐賀のがばいばあちゃん
著者:島田洋七  Indah S. Pratidina 訳
出版社:Kansha Books (Mahda Books) (2011年)


$インドネシアを読む-ばあちゃん

島田洋七著『佐賀のがばいばあちゃん』のインドネシア語版です。

島田洋七といえばB&B全盛期のころしか知りませんでしたが、こんな本を書いていたんですねえ。思わず「昔は
よかった」といいたくなるようなお話。貧しくても明るく、たくましく、というインドネシアの多くの人々にとっても身近でわかりやすいメッセージの込められた本です。

小学校の運動会のときに、家族にだれも来てもらえず、教室でひとり、ごはんに梅干しに紅生姜のお弁当を食べようとしている主人公のところに担任の先生がやって来て、「お腹を壊したから、お弁当を取り換えてくれないか」と言っ
て、エビフライやソーセージや卵焼きの入った豪華版お弁当と取り換えてくれる場面なんて、ついホロリとしてしまいそうです。

こういう先生、今でもいるのかなあ。

主人公が小・中学生だったころ、つまり1960年代の話なのですが、20年前に原爆で破壊された町、広島が、そのころには佐賀の子どもたちにとっては憧れの大都会になっていた、という部分にもなんだか感慨深いものがありました。原発事故に見舞われた福島は、20年後にはいったいどうなっているんだろうか、と。

この本は英語版からではなく、日本語の原書から直接インドネシア語に翻訳されています。訳者は、私が以前、日本で翻訳書を出したことが縁で知り合った編集者で、一ツ橋大学で修士号を取得し、今では編集の他に翻訳・通訳者としても活躍している才媛のIndahさん。素直で読みやすく、メリハリのある、素敵な翻訳だと思います。