『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』
原作は93年に放送された『ifもしも』というオムニバスドラマのうちの1エピソード
アニメ版は『まどかマギカ』や『化物語』でおなじみシャフト
まだ『君の名は。』の歴史的ヒットが記憶に新しいうちに公開されたこの作品。
ニュースサイトとかでは「君の名は。のヒットに続くか!」なんて触れ込みも多かったり。
(実際共通する箇所が多かったり・・・w)
そして公開されるも、瞬く間にネットで酷評の嵐・・・!
真意を確かめるべく自分も早々に観てきました。
以下感想、ドラマ版アニメ版の結末までネタバレあり。
80点
とても面白かった・・・!
ただ君の名は。みたいにストレートに分かりやすいエンタメ作品と違い、
全く正反対なアプローチの作品に仕上がっていた。
なのでよく分からなかったという人が出て来るのも仕方ないかなぁと思いつつ・・・
しかし決して中身が無いとか駄作とは違うと断言する!
この映画は
「お互いに思いを打ち明けられずにいる男女が、
もしもボックスを手に入れifの世界を突き進むも
そこは結局ifであり現実ではない。
そして最後に手にした本当の現実とは何だったか」
を描いたジュブナイル映画の快作であった。
◆1993年ドラマ版
原作の『ifもしも』は話の途中に分岐点が存在し、
展開Aと展開Bの2つを描くというシリーズのルールがあるお話です。
ヒロインのなずなちゃんは一学期の終わりに望まない転校が決まってしまい、
最後に思い出を作ろうと密かに思いを寄せる主人公典道とその友人の祐介
この2人が水泳50m勝負をすると聞き勝った方と花火デート(本当は家出)をしようと決める。
(ここ分岐点)
ちなみに同時進行で、花火は下からと横からで平べったいのか丸いのか
どう見えるのかと言う話も進行する。
展開A
典道は足をケガしてしまい勝負に負ける。
なずなは祐介にデートも持ちかける、
祐介も密かになずなの事を思っていたけど、子供特有の素直になれず逃げてしまい男友達と花火に行きます。
裏切られてしまったなずなは典道とバッタリ会う、ここでなずなが本当は典道と行きたかったと打ち明ける。
しかしなずなは母親に見つかり無理やり連れ帰されてしまう、典道はなずなを裏切った祐介に腹を立てぶん殴る。
もしも自分があの勝負に勝っていたら・・・
展開B
典道が足をケガする事なく勝負に勝つ。
なずなは典道にデートを持ちかける、
2人はバスに乗り込み駆け落ちである事を明かす、その後2人きり駅のホームで時間を過ごす。
最終的に戻ってきて学校のプールに忍び込み2人プールで楽しく遊びする。
最後になずなは「今度会えるの二学期だね、楽しみだね」と言い残し去っていく。
と、ここまでが93年ドラマ版のザックリとしたお話。
タイトルである打ち上げ花火とはひと夏の淡い恋の事を差し、
下から見るか?横から見るか?は展開Aと展開Bでどう見えるかを指す。
しかし花火は下も横も見え方は同じ、どこから見ても丸い。
そうどっちの展開に転んでもなずなの転校は変わらず同じ・・・、
ひと夏にパッと打ち上がり咲いて散った恋のお話というとても素晴らしい作品だった・・・。
◆2017年アニメ版
アニメ版ではドラマの展開や台詞や画面の画角など細かいところまで再現している。
展開Bの2人きり駅のホームで時間を過ごす辺りまではほぼ一緒の内容。
ドラマ版は展開ABのルールを分かってる前提で描かれているが
アニメ版でいきなり過去の分岐点に戻ったりしてはおかしい、
そこで「もしも玉」というアイテムが出て来る。
(劇中では玉としか呼ばれないけどパンフにてそういう名前がある事が判明)
もしも自分があの勝負で勝っていたら・・・、ここで玉を使うと
展開Bへと進む、一見するとタイムリープして過去に戻っているかの様に見えるが、
実はここが現実の世界で無い事を知る。
現実とは違うifの世界へと進んでいた。
なのでこの作品、厳密にはループ物とは少し違う作品なんですよ。
もしも玉はドラえもんの秘密道具、もしもボックスと同じような物と思えば分かりやすいかな。
ドラマでは駅のホームから帰る展開だったのが、
ここでなずな母に見つかり、急いで電車に乗り込みさらに逃げるif展開へと発展していく。
このまま東京まで逃げようか、
東京で2人で暮らそうか、
水商売とかで稼いでいこうか、
それとも芸能界入りでもしようか、
と典道となずなは色んな“もしも”の話をする。
何度か玉を使用しどんどんifの展開へと突き進んでいく、
進むに連れて世界がどんどん現実とかけ離れた異世界へと変化を遂げていく。
この異世界描写こそアニメならではの演出、
シャフトならではの面白い仕上がりとなっている。
その後ある事が起こり、もしも玉が弾けて壊れる、
すると粉々になった玉の破片にはいくつものif展開が映し出される。
もしも祐介がなずなとデートに行っていたらこうなっていたかも知れない。
もしも典道となずなが東京まで行っていたら・・・
もしも典道となずなが2人で東京で暮らしていたら・・・
もしも典道となずなが・・・
たくさんのifもしもが映し出された破片、その一つを典道はキャッチしてた。
そこに映し出されていたのはお台場で2人が楽しそうにデートをし、キスをする姿が映し出されていた。
崩壊していくifの異世界で2人はキスをする。
打ち明ける事の無かった恋心が成就する。
そしてifの世界が終わり現実に戻ると
二学期が始まった最初の学校の風景だろうか、クラスの出席を取っている。
そこには典道となずなの姿が無い。
映画はここで終わるのだけど
最後に2人が居ないと言うことは最後にifではなく叶えた現実が
2人お台場に向かった事の証明では無かろうか?
この辺はかなり開けたオチなので色んな解釈が出来そうだ。
◆第3のifもしも
ドラマでは展開AもBもなずなと結ばれる事は無く、恋が成就する事なく終わる話であった。
このアニメ版が第3のifもしもだったんだ!結ばれなかった2人が結ばれるifもしもだったんだ!
「ドラマ版のその結ばれない甘酸っぱいひと夏の恋だからイイんじゃないか!」
というドラマ版派の人からするとかなり蛇足な気がしなくもないけども・・・w
◆なぜ酷評の嵐か
この作品ドラマ版から既に台詞で語らず描写だけで語る映像作品ならではな作りであり、
アニメ版もそんなドラマ版に最大限リスペクトを贈り、多くを語らず画だけで語っている。
台詞などでの説明はほぼ無く
「これはこうなんだろう」と解釈していかないとアッという間に置いていかれる。
そうなってしまった人たちが中身は無いなど
有らぬことを書いてネットで広まってる気がする・・・。
とは言え確かに分かりづらい作りの作品にしてるのも確か。
アニメ版でいくらでも分かりやすい作りも出来たはずだが、
『君の名は。』との差別化を図る上で意図的にこういう作りにしたのかも知れない。
『君の名は。』と『打ち上げ花火』はどちらもプロデューサーが同じ川村Pですし。
◆他アニメ版のイイところ
菅田将暉と広瀬すず、2人の演技は素晴らしいと思った。
あまりアニメっぽくは無いけど、キャラと合ってるしこれでも全然アリ。
特に広瀬すず、なずなが母親に連れ帰らされるシーンの緊迫した演技は凄い。
そこらのハンパな俳優だったらこのシーンかなり悲惨な事になっていたはず。
◆逆にダメなところ
やっぱり絵がいつものシャフト過ぎて、普段アニメを見ない層からは受けが悪そう・・・w
なずなちゃんがあまりにも戦場ヶ原さんにしか見えない問題などなど。
ifの異世界シーンがシャフトならではの面白い仕上がりとは言ったけど、
『まどかマギカ』ほどは行かず、いつものシャフトに比べるとまぁ物足りなく感じたり、、、
でもこの作品ではこのくらいのバランスが良かったのかなぁ。
それとちょっと問題なのが、自転車に乗る引きのカットでキャラがCGになるんだけど
そのキャラのモデルがちょっとどうかと思うレベルでクオリティが低い・・・w
あとフルコマで動かすの辞めるべき・・・
あと「もしも玉」の存在が特に言及されないのもどうかなぁと思いつつも、
ドラマ版のルールを都合よく解決させるためのアイテムなので何とも仕方ないのかなぁ・・・w
とりあえず、
序盤はちょっと冗長気味に感じるけど、
if展開が始まってからどんどんとのめり込んで、
最後こういう話だったんだと分かってから一気に好きになった。
このシーンがどういう意味を持つのかをちゃんと考えて観て、自分なりに噛み砕いて解釈したところ、
かなりしっくり来て、長々と書いた通りとても面白かった。
電車の歌のシーンとか、なずな父の死とかまだちょっと
噛み砕き切れてない箇所もチラホラあるのでまだ評価の変動はあるかもなぁ。
とりあえず1回観ただけなので拾いきれてない所もありそう、2周目行こうかな。
あと、酷評派の人たちも認める主題歌、劇中歌
これは本当に最高でした。DAOKOさん米津玄師さんとてもイイ仕事してました。


