今から十数年前、

「ものすごい武術の達人がいるんですよ」

と仲の良い禅僧が、私に言った。


なんでも、武術の訓練はほとんどせず、ただひたすら座禅をされる中で合気の極意を悟ったそうだ。


生粋の武道マニアである私は、半信半疑でその先生に会いに行った。


会ってみたら、中肉中背のコロコロした優しそうな先生。とても達人に見えない。


 「合気あげ※をかけてください!」

と全力で手首をつかむ。

※座って両手をつかんだ状態から、相手の重心を浮かす技


中学から合気道を始め、筋トレにも励んだ。たくさんの素晴らしい達人と呼ばれる人達の技を受けてきたので、並たいていの技なら止める自信があった。


しかし次の瞬間、自分の目は天井を見上げていた。いつの間にか腰から地面に仰向けに倒れ、しかも両手を通して地面にぬい止められていた。両手を握ったところから倒されるまでの時間が、飛んでしまっていた。


こんな技を食らったのは初めてだった。


その後も忖度なしで様々に抑えてみても、あっけなく倒されてしまう。


しかも理屈が全くわからない。とにかく耐える暇もなく、根こそぎ投げられてしまう。


すっかり魅了された私はなんとかこの技を身に着けたいと思い、先生のもとへ通うようになった。


先生の名前は山田浩嗣先生。普段はヨーガと瞑想の指導をされており、武術を表に出されることはない。広めるつもりもないようだった。


私が学ばなければ、この技術はいつか消えてしまう、という半ば義務感のような思いもあり、指導を受け続けた。


が、全く身につけることができない。習ってみれば神秘的なことは一切なく、ものすごく単純な一つの理屈に基づいているのだが、それが再現できない。


ハシゴがなくて崖がそそり立っている感じだ。


そしていつの間にか、十数年が過ぎてしまった。このままでは身につくことなく終わってしまうと思い、ともに研究してくれる仲間を募ることにした。


そして先生に無理を言ってYouTubeに出ていただくことになった。


動画をご覧頂き、少しでも興味を持たれた方は、ぜひ技を受けてみて頂きたい。


武術の真髄を味わえると思う。