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飛行服千夜一夜物語

どんなフライトジャケットにも、袖を通した者と歩んだドラマがあるもの。
飛ばなくなったフライトジャケット達との思い出話と、そこに秘められたヒストリーを紹介します。

 こんばんは。


 このブログの中で、フライトジャケットに関する本の名前を記載する事がありますが、結構古い本が多いので、ご存知ない方からしてみれば、「一体、何のことやら…」という感想を持たれることと思います。


 現在はネットから様々な情報を得る事ができますが、より正確な情報を得ようとしたら、何だかんだで書籍に頼るのが一番です。

 ただし、研究や新発見で開拓されていく分野のため、新しい本の方がより正確ではありますが、書いてある事の全てが正しいというわけではありせん。


 よって、皆さんの一助になるよう、今後何回かに分けて、フライトジャケットについて書かれた本について、良い点や注意点を踏まえながら紹介していこうと思います。

 


 とりあえず第一回目の今回は、1990年代前半を代表する2冊を紹介します。

 なお、紹介する順序に意味はありません。



No.1 「アメリカ陸軍航空隊衣料史」

C.G.スウィーティング著、グリーンアロー出版社



【概要】

 1984年に出版された「Combat Flying Clothing」の和訳版であり、1991年に出版されました。

 著者のスウィーティング氏はスミソニアン航空宇宙博物館飛行服部門の司書を務め、長年に渡り豊富な公刊資料を整理、研究してきました。

 「Combat Flying Clothing」は世界で初めてフライトジャケットを体系的にまとめ上げた本として知られています。


 陸軍航空隊の創設期から1945年までのフライング・スーツ、ジャケット、トラウザーズ、ヘルメット、ゴーグル、グローブ、シューズ、電熱服といった、搭乗員用個人装具の概要や開発の経緯、特徴等がまとめられています。

 また、付録として1942年4月当時のClass13(バーツナンバー表)、1945年10月当時のClass13(ストックナンバー表)、1946年までのType Designation Sheet(搭乗員用個人装具毎の標準化、代替標準、限定標準、不用決定等の日付が記載された表)も掲載されています。


 全て白黒ページの研究書であり、ファッション的要素が皆無のため、「A-2やB-3等のカッコいい革ジャンをいっぱい見たい」というだけの方には向きません。

 WWⅡ以前を対象とするコレクターや創成期の飛行服に興味のある方には大変参考になると思います。


【おすすめポイント】

 オープンエンド・ジッパーが存在しない時代のB-2、B-8、B-9フライング・スーツなど、この本でしか見られない貴重な写真が数多く掲載されています。

極めて希少な各種ウインター・フライング・スーツ。左からB-7、B-8、B-9。なおB-7スーツは「FULLGEAR」にカラー写真がある。


 フライング・シューズも珍しい写真が大量に掲載されており、特にA-7スリッパなんかは、とてもカワイイので、どこかにリプロ品を出してもらいたいです。

1937年に標準化されたA-7シューズ(スリッパ)。元はA-6シューズの中に履くためのもの。


A-7シューズはムートンのインサートを付けることが可能。B-7ジャケットのようなコーティング無しのバックスキンのため、汚れには弱い。


【注意・改善点】

 掲載されている写真は基本的に当時のもののため、写真が暗かったり不鮮明だったりします。現存するアイテムのカラー写真といったものはありませんので、大体の概観しかわかりません。

 また、この本には、誤りとは言い切れないまでも、現在では異なった解釈がなされている内容もあるため、注意が必要です(詳細は、そのうちこのブログでお伝えしたいと思います)。


【入手方法】

 この本は既に絶版で中古でしか手に入りません。

 しかし、カラーページが無く、難しい内容で人気が無いのか、プレミアは付いていません。

 定価は3500円でしたが、ヤフオクで1000円台、アマゾンであれば2000〜3000円台で入手可能です。

 



No.2「飛行服発達史」

ワールドフォトプレス


【概要】

 1993年に出版されたムック本。本書は上記スウィーティングの「Combat Flying Clothing」を踏まえた、当時のフライトジャケット研究の集大成とも言える本です。


 A-1ジャケットから、CWU-36及び45/Pに至る様々な飛行服がカラーで掲載されており、大変充実した内容です。

 フライトジャケットだけでなく、それに合わせるトラウザーズについても、特徴やエピソードを踏まえながら体系的述べられています。

 本書はフライトジャケット入門用の教科書として、アメカジファンやミリタリーファンに愛読されてきました。


【おすすめポイント】

 多種多様なフライトジャケット安価にかつ容易に知る手段として、本書の魅力は絶版後も色褪せることはありません。専用のトラウザーズがあることをこの本で知った方も多いと思います。

 実際に着用されている当時の写真やエピソードもたくさん掲載されています。

 フライトジャケットに興味があり、本書を読んだ事がない方は、中古にはなりますが、ぜひ購入してください。絶対に損はしません。

 私自身、高校生の頃から現在に至るまで、数え切れないほど読み返しました。

 とても丈夫な作りで何度読んでも破けることはありません。


 AL-1みたいなNAVYのマイナー飛行服も、ジャケットとスーツの2種類が掲載されています。

 テストサンプルも結構な数が紹介されています。

 昔アヴィレックスが販売していた「B-43」という、謎のジャケットのオリジナルもあります。

 

 フライトジャケットではありませんが、デッキジャケットについても掲載されています。読者の気になるところをよくわかっていますね。


 

【注意・改善点】

 2000年代以降、フライトジャケット分野には様々な新発見(再発見)がありましたが、本書はさすがに内容が古く、記載内容のアップデートが必要と感じます。

 交換後のジッパーや民生品が実物として扱われている等、いくつかの修正点があります。 

 また、初期のナイロンジャケットは紫外線で退色する事が多いのですが、こういった生地は撮影した時の光の当たり方で、目で見た時と違った色になる事があります。

 上の画像は初期のMA-1です。右上のジャケット(LION UNIFORM社製)はシルバーに見えるので、ずっとそういう色だと思っていました。実物はセージグリーンですが、撮影時の光の当たり方で結構色が変わって見えます。


 本書に掲載された飛行服は中田商店のコレクションがメインかと思いますが、「FULLGEAR」のように海外も含めたコレクターの方々の協力を仰げば、もっと多種多様なコレクションを掲載する事ができると思います。

 ワールドフォトプレスには、是非とも改訂版を出していただき、今後もフライトジャケットファンの拡大に寄与してもらいたいと思います。


【入手方法】

 長らく販売を続けていた本書ですが、現在では絶版となっており、中古でないと入手できません。

 発売当初は中田商店のフライトジャケットカタログがついていました。

 元の定価は2500円。絶版になってから若干のプレミアがつき始め、現在、ヤフオクでは2000円台、アマゾンでは4000円台で入手できます。

 既に所有しているフライトジャケットファンも多く、販売期間も長かったので、高いお金を払うほどのものではありません。安く入手しましょう。


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 今回はとりあえずここまで。

 これからもフライトジャケットに関連した本をたくさん紹介していきたいと思います。


 フライトジャケットの楽しみは、ビンテージのコレクションだけではありません。

 リプロ品も魅力的ですし、着ても良いし、全国の古着屋やリプロ品を販売するショップを巡ったり、本や海外の情報をリサーチしたり、航空機やプラモデル、戦史と絡めるのも楽しいですね。

 そんな魅力を発信できればいいなと思います。

 

 それでは、次回もお楽しみに!