過日、千葉県の小湊鉄道に約３年ぶりに乗車。

前回は、いすみ鉄道の城見ヶ丘から北上して上総中野で小湊鉄道に乗り継ぎ、４度目の正直で全線完乗を果たした。

今回は、上総牛久付近でヤボ用があったので、同線の近郊区間に当たる五井～上総牛久間で約30分のショートトリップ。

東京からの総武快速君津行きで９時01分に五井に着くと、小湊鉄道線ホームに元JRのキハ40形を２両つなげた養老渓谷行きが発車時刻を待っている。

５分の好接続で乗り継ぐことができるが、このあと14時まで食事のチャンスがなくなるので、五井で朝食を摂ることにして駅前ロータリーに出る。

海沿いのコンビナートに向かう従業員送迎バスの出入りを見てから、チェーン店で朝定食を平らげ、パン屋のイートインスペースで食後のコーヒーを飲んで時間調整。

9時45分に店を出て、乗り換え通路にある券売機で710円也の切符を買い小湊鉄道線ホームに降りると、ちょうど養老渓谷からの列車が到着。

小湊鉄道生え抜きのディーゼルカーキハ200形。

寅さんがカバン片手に雪駄履きで乗り込んだら似合いそうな、昭和感にあふれたビジュアルで、今回もこの車両との再会を楽しみにしていた。

２両編成で到着したキハ200形は五井で切り離されて、下り方の１両が養老渓谷行きとなって折り返す。

養老渓谷行きとなったのはキハ200形の中で最後に造られたキハ214。

車内は窓を背にしたロングシートが配された簡素な仕様で、床下にあるエンジン部分からの排気管が、車両の中心付近でシートを仕切るように屋根まで立ち上がっている。

最前部の座席に陣取って発車を待っていると、JRのホームに逗子からの快速電車が到着して、すでに車内にいた約10人に加えて、15人ほどが乗り込んでくる。

発車時刻になり、汽笛一声五井駅をあとにすると左カーブでJR内房線と離れ、広々した風景の中をローカル線らしい揺れを起こしながら単線の線路を進む。

館山道をくぐり、場内信号機が見えてくると上総村上に到着。五井と上総牛久の間には６つの駅があるが、上総三又以外は列車の行き違いが可能となっており、それを必要とする需要があることが分かる。

すぐにドアが閉まって、ゆっくりエンジン回転を上げながら駅を離れ、上下左右に車体を揺らして南東に進む。

海士有木（あまありき)、上総三又、上総山田と泊まるたびに１～２人が後ろ寄りのドアから降りてゆき、光風台では５人ほどが下車。反対側からキハ40形２両編成の五井行きが入ってきて、ホームにいた20人ばかりの客が乗り込む。

キハ40形は先ほど五井で見かけたのとは違う編成で、今日は在籍５両中４両が運用に入っているようだ。

小湊鉄道オリジナルのキハ200形に乗ることができたことに感謝しつつローカル線の味わいを楽しんでいると、列車は点在する第４種踏切（遮断機も警報器もない踏切)ごとに警笛を鳴らしながら養老渓谷を目指して走り、五井から約30分で目的地最寄りの上総牛久に到着。

ここから先こそが小湊鉄道の魅力あふれる区間だが、予約したタクシーに乗り換える手筈になっているので、泣く泣くホームに降りて駅員さんとともに遠ざかるキハ214を見送った。

つづく

【176】キハ214