わたしの、領分 | 「劇場放浪健忘録」

「劇場放浪健忘録」

主に舞台観劇の感想を書いてます(^-^)

ツイッターで評判を見るたび、

 

「あ、これ見てみたいな」と思っていながら

 

つい先延ばしにしていた作品、

 

「わたしの、領分」

 

再再演にして、やっと観させてもらいました。

 

 

まずは、ひとこと言わせてください。

 

 

福永マリカ 凄い!!

 

 

もう、朝劇で見ても「マリカちゃん」とは言えない。

 

女優、福永マリカの力を見せつけられた感じです。

 

朝劇、鵺的、関口アナムさんとの二人芝居と

 

あと「ナッポリタン♪」と、

 

いろんな表情を見せてもらっていたけれど、

 

こんなに凄い人だったとは!!

 

 

 

作品自体、

 

今まで見た事がない作品でした。

 

舞台の上の物語は、

 

「お芝居」ではあるんだけど、架空の出来事ではない。

 

多分どこかで、実際に起こっているだろう出来事なのです。

 

ある療育センターで働く若い心理士を中心とした、

 

発達障害児を持つ親、取り巻く人々、

 

悪意を持って近づく人、理解が足りない事で起こる事件、

 

面白おかしく無責任に騒ぐ世間、

 

そして、その若い心理士自身も…

 

 

 

事件を起こしてしまう、かつてセンターに通っていた

 

障害を持つ青年以外の「障害児」は

 

全て同じ人が演じていて、

 

はっきりと演じ分けをしているのに、

 

ちょっと抽象的な感じもする、とても不思議な表現でした。

 

 

そうそう、書く順番が違っちゃったけど、

 

客席開場の瞬間から、

 

もう舞台はある意味始まっていたのです。

 

私は、客席入った瞬間に、

 

「うわ…。」って言ってしまいました。

 

それがまた、本編にググッとのめり込ませる

 

素晴らしい表現となっていたのです。

 

明日行く方は、ぜひ早めに行ってもらいたいですね。

 

 

 

舞台の上がとてつもなく本物過ぎて。

 

 

 

テレビなどで、ドキュメンタリーで

 

このような題材を扱ったものも見るのですが、

 

確かに感じるものはあるのですが、

 

どちらかと言うと「情報」「知識」として

 

捉えてる部分がほとんどのような気がするのです。

 

 

しかし、舞台でやる事によって、まるで

 

自分が体験しているような気がしていました。

 

確かに「疑似体験」ではありますが、

 

「知識」として得るものと「体験」として得るものは

 

相当な違いがあります。

 

決して「楽しい」「面白い」と言う内容では無い

 

今までに見たことのない舞台でしたが、

 

なんだか「舞台であることの意義」を感じた。

 

その分、ちょっと精神的にはキツイものもあったけど、

 

目をそらすことはできなかった。

 

 

追い詰められる親達の感情。

 

現象だけを見てしまえば、「ひどい親」

 

だけど、その情感が伝わってくるから、

 

そんな簡単な言葉は出てこない。

 

私個人としては、この追い詰められ感を感じながら

 

別の事を思い出してた。

 

これ、もう死ぬ事が決まってる病気の家族を持った時の

 

あの追い詰められ感に似てるなって。

 

どうしたらいいのか。何が正解なのか。

 

一旦そこにはまってしまうと、

 

抜け出すのは難しいよね。

 

 

 

すごい昔だけど、

 

私の高校には、ダウン症の子、自閉症の子がいました。

 

でも私達、あまり特別感を感じていなかった。

 

それは、定時制高校で、通っている私達自身、ほぼ全員

 

なんらかの「訳あり」だったからなんだろうか?

 

あの時は、何も考えていなかったけど、

 

あの子達の親御さんも、

 

こんな風に苦しんでいたんだろうか?

 

 

 

なんか、舞台が本物過ぎて、

 

舞台を見たとは思えない感想ばっかり出てくる(笑)

 

 

 

障害者家族につけ込む人、

 

障害者を騙して利用する人、

 

あんなに悪どくは無いにしろ、

 

ずるい事考えたり、邪険にしたりしてるかも?

 

と、心配になってみたり、

 

 

あの無意識に、茶化してしまう事務員さん、

 

あれが普通の感覚かもねと思ってみたり、

 

 

飄々としたドクターが返って頼もしく感じてみたり

 

 

寡黙だけど、深く親身になってくれそうな

 

チーフ心理士の一喝が心に響いたり、

 

 

ベテラン心理士の穏やかさに癒されたり。

 

 

そんな中、若い心理士が一番重い想いを抱えていて、

 

あの、「迷い」とか「悲しみ」とか

 

そんな簡単には言い表せない、

 

深く落ち込んだどうにもできない自己否定。

 

それを包み込む、旦那様の愛情。

 

そして最後には、僅かだけど、未来への光。

 

 

 

いつもの舞台だったら、

 

「あー楽しかった!!o(^-^)o」

 

って、外に向かって発散!!って感じなんだけど、

 

この舞台は、

 

こうして思い出せば思い出すほど、

 

自分の中へ、中へと意識が向くような気がします。

 

そしてこの感じは、

 

「本物を感じさせてくれる舞台だからこそ」だと、

 

思います。

 

 

今日、観に行けて良かった。

 

決して「娯楽」とは言えないかもしれないけれど、

 

より多くの方に観てもらいたい、

 

いや、観てもらうべき舞台だと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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