「なんか……
撮影だってこと忘れて
大きい声出してしまったり
変に動いちゃった時があったので
もう1回撮ることになると思います……
ごめんなさい……」
カットがかかると
彼女は申し訳なさそうに
僕にペコペコ頭を下げてくる。
僕は思わず彼女の頭を撫でようとして
ハッとした。
僕も忘れていた。
周りには
スタッフが沢山いるということを……。
僕は彼女に
「大丈夫大丈夫~」
と手をヒラヒラさせながら微笑んで
撫でようとした手を誤魔化した。
僕は彼女をつれて
映像チェックをしている
プロデューサーの元へ向かう。
「僕たちあまりにも普通にし過ぎてて
ダメですよね……?」
僕がそう問いかけてみると
プロデューサーは顎に手をあてながら
「いやぁ……最高の出来。
すっごい自然。見てみ?」
僕たちに画面を見せてくれた。
プロデューサーが言う通り
僕と彼女の後ろ姿はすごく自然で
彼女は特別出演だから
正面から映らないようになっているけど
僕の方を向いて話している彼女の横顔は
様々な表情が見えて
すごく良いと思った。
「良いですね」
「でしょ?
僕が想像してたより全然良い。
君、初めてにしては演技上手いね!」
プロデューサーに褒められた彼女は
普通に僕と会話してただけだったからか
「ぃゃ…………あの……」
とドギマギしていた。
僕はちょっと面白く思いつつ
肘でつついて
「やるね~!」
と言って
目で"合わせて"と訴えた。