その後は
彼が家まで送ってくれると言うから
お言葉に甘えて送ってもらった。
その道中
気づいたら彼にずっと手を握られていて
内心ドキドキしていた。
彼の手は体温が少し低いけど
安心感がある。
彼は華奢な体型で
女の私は負けちゃうかなって
正直思うこともあるけど
手からはやっぱ男の人なんだと感じた……。
「大学は忙しいのか?」
「ん~
もう少ししたら忙しくなりそう。
そろそろ就活しなきゃ…」
「やりたいことあんの?」
「別に……」
彼は突然プッと吹き出した。
なんで笑ったのかと思って
キョトンとしていると
「ホントお前って願望ねぇよな…」
嫌味で言ったのかは知らないけど
私は可愛げもなく
「悪かったね」
とそっぽを向いた。
そんな他愛もない会話をしているうちに
あっという間にアパートに着いた。
「ここ?お前ん家」
「そう」
「へ~」
彼は建物をキョロキョロ見ていた。
別に古くも新しくもない
何の変哲もないアパート。
「たまに遊び来てもいい?」
彼がそんなことを言い出すから
ちょっと焦った。
「え~やだよ」
また可愛げもなくそう言うと
彼は軽く笑って
「じゃ予告なく来てやるから安心しな」
と意地悪を言った。
「じゃ、またな」
「うん。送ってくれてありがと。
気を付けて…」