俺たちは近くのファミレスに入った。
注文をし終えると俺はすぐに
「なんで連絡くんねぇの?」
単刀直入に彼女に問いかけた。
「なんでって……
普通に怪しいじゃないですか」
俺は確かになと思って
「……まぁそうだな」
と彼女の意見を肯定した。
「シセリさんは
Big Hit Entertainmentて知ってる?」
「いいえ……知りません」
彼女の反応は予想通りだった。
「まぁそうだよな………。
じゃあS.M. Entertainmentとか
JYP Entertainmentとかは?」
「それは知ってます。
有名ですから」
「俺さ
今Big Hit Entertainmentっていう
芸能事務所の練習生なんだよ」
そう言うと彼女は
「え…………」
と驚いた顔をした。
「まだ知られてない事務所ではあるけど
一応うちの社長は元JYPの人間で……。
で俺はそこの練習生だから
事務所とかレッスン室に今缶詰状態でさ……。
俺地方出身だから
ここに友達とかいないんだよマジで。
ま、元々友達は多くないんだけどよ……」
俺の話はかなり驚きの話だったようで
彼女は見たこともないような
唖然とした表情で俺の話を聞いていたけど
「だから手があんなにガチガチだったんだ…」
と小さく独り言を呟いて納得していた。
「あの……デビューとかは……」
「一応グループは決まってて……
まぁ社外秘だから
詳しくは話せないんだけど……」
「……すごいんですね………。
練習とかキツいんでしょうね……。
やった人にしか分かんない
とてつもない辛さなんでしょうけど…。
やっぱりダンスとか得意なんですか…?」
彼女は意外と話に食いついてくれて
ちょっと嬉しかった。
「や……俺は苦手……」
「え……?じゃあ歌…?」
「ラップ」
「あぁなるほど……」
ガッカリしたかなと
彼女の顔色をうかがったけど
ガッカリというより
何か考えている感じだった。