注文したお酒が来ると
「お疲れ様~~」
と乾杯をした。
社長は最初から仕事の話はしなかった。
「テヒョンくん
やっぱりすごいイケメンだったね」
「……………」
「君はすごいと思ったよ」
「………え?何が………ですか?」
「素敵な彼の心を射止めるんだもの」
「………………」
「○○さんはもちろん
外見も可愛らしいけど
それだけじゃなくて
きっと彼は
君の働いている姿とか見て
その一生懸命さとか
そういう所に惹かれたりしたんだろうな……
ま、分かんないけどね。
あれだけ綺麗な人がいる世界にいながら
こんなにも距離があるのに
君の元にわざわざ来るんだから……。
今日彼に会って
どうして泣いてたんだい?
良かったら話してみなさい。
楽になるかもしれない……」
社長は穏やかな顔を向けてくれた。
私は一呼吸置くと
「実は………」
と話を始めた。
「お昼にコーヒーを買いに行った時
彼のグループのメンバーに
偶然会ってしまったんです……
それでテヒョンくんを呼んでくると言われて
焦って……
反射的に逃げてしまったんです………」
「だからコーヒーがあぁなったってわけね。
納得。」
社長は頷いていた。
「どうしてオフィスの場所が分かったのかは
分かりませんが……
どうして逃げたんだって彼に聞かれて……
自分でも分かんないんですけど
なんか涙が出てきてしまって………」
「まぁ無理もないよ。
韓国で君は沢山不安な思いをしてきて
頭の整理をつける前に
僕にニューヨーク連れてかれちゃってさ……。
自分を責めちゃダメだよ?」
社長の優しい言葉に
またうるっとしてくる。
「こんな異国の地で
君を探すくらいだから
きっと彼……
君に本気なんだと思う。
居場所が分からない人を待ち続ける程
彼、女の子には困らなさそうだしね……」
社長の言うことはご最もだった。
彼はスキャンダルがあったくらいだし
近づいてくる女性が多いのは
間違いない。
それにも関わらず
連絡手段も絶ち
行方もくらませていた私に
手紙を送ってきたり
直接的に接触をしてくる彼の行動は
私をどうでも良いものとして扱っているとは
とてもじゃないけど思えなかった。