マンションの共通玄関に辿り着くまでに
社長に電話が掛かってきて


少し短くなった社長の歩幅に合わせて
隣を歩いていた。












マンションの出口に到達した時のこと。






社長の英語に混じって
誰かの声が聞こえた気がした。









声の聞こえた方……





後ろを振り返ると



















そこには信じられない人の姿があった。














「ヌナ……」















声の主はかすれた低音ボイスの……







テヒョンくんだった。













「……………ど……うして………」





「それはこっちの台詞」










彼はそう言いながら
ゆっくりと近寄ってきた。






社長にチラッと目を向けると


気を遣ってか
私から離れていく。










「ずっとニューヨークにいたの?」




「……………」





「だからコレ入ってた封筒に
ニューヨークの郵政局の印があったんだ?」





「……………」







テヒョンくんは
自分の首にかかっているネックレスを
指差してそう言った。











私は彼がここにいることが
信じられなかったし


何と言えばいいのか分からなかった。







彼の付けているネックレスは
どうやら私が無言で返したもののようだ。






彼の元に届いていたなんて………。







それに郵政局の印でバレてしまうなんて
考えもつかなかった。