お昼頃
社長が帰ってきた。
「中華は好きかな?」
社長はニコニコしながら
お弁当を渡してくれた。
「食べて元気出そうよ。
なんとかなるから!」
私は心から
この社長に出会えて良かったと思った。
お昼を食べ終えると
社長がマンションに連れて行ってくれた。
マンション自体は
そんなに大きくはなかったけれど
すごく綺麗で
デザインもスタイリッシュで
一目で気に入った。
「素敵なマンションですね!
社長もここに住んでらっしゃるんですか?」
「もちろん。
1番上の階に住んでるよ。
君の部屋はね、2階」
社長の後ろをついて行くと
廊下の突き当たりの角部屋に案内された。
「指紋認証の鍵だから安全だよ」
社長の指示で指紋を登録して中に入った。
「この部屋あんまり広くないんだけど……
まぁとりあえずね」
中には
使い慣れた私の部屋の家具が設置されていて
想像と違って
すぐにでも生活できそうな感じだった。
「何か今の時点で困ったことある?」
「いや………特にないです」
「一応食材とかもそのままにしてあるから
夕食とか大丈夫かな?」
「ありがとうございます。
大丈夫です」
「じゃあ今からパッキングしてもらって……
明日の朝また来るから
それまでに何かあったら僕に連絡して」
「分かりました。
本当にありがとうございます!」
私は玄関から社長を見送った。
それから夕方まで
海外行きに向けた準備をして
夕飯はあるもので簡単に作った。
そして夜。
ベッドに座ってケータイを見る。
相変わらず何も連絡はなかった。
私はテヒョンくんとのトーク画面を開くと
文章を打った。
文にすると呆気ないなぁ…
なんて思いながら
私は彼のLINEのデータを全て消した。
これで終わり。
私の結論
それは彼との別れだった。
テヒョンくんのことは
正直今でも好きだ。
でも彼を信じて待ったところで
私の存在のせいで
彼は二股と言われ続けて
世間からの批判が増すかもしれない……
だから証拠となる私が消えれば良いんだ。
彼の光に満ちた道に
私は陰でしかない。
私は絶望から引き上げてくれた社長について
彼から遠く離れた所で
新しい道
新たな人生を歩む決心をした。
もう二度と
彼には会えないかもしれないという無念を
胸に残して……。
