「そうと決まれば早速で悪いけど
君の今の住所を教えてくれる?
引っ越しについて検討するから」





社長はサッとメモを用意してくれた。








私は住所を書いて渡しながら

 

「あの……仕事はだいじょ…」



そこまで言うと
被せ気味に



「大丈夫大丈夫。
はいはいコレにも書いて」




いそいそと動き始めていた。









「弁当屋はどうする?」


「あ……そうですよね……」






私は頭で色々と考えた。







せっかく楽しくやっていたのに…と
残念に思う反面

 


明日になると
どんな状況になるか分からないし




お世話になったおばさんのご恩を
仇で返すわけにはいかない。



そう思って決意する。








「今からちょっと
バイト先行ってきてもいいですか?」





社長は



「じゃあ送ってくよ」



そう言ってくれたので



ご厚意に甘えて
一緒に来てもらうことにした。







普段なら断るけれど

今は外に出るのが怖かったから……。  










社長は公園で待ってるから
ゆっくり話してきなと送り出してくれた。









私が突然弁当屋に行ったので
もう1人のバイトの人と
おばさんは驚いていた。






「あの……話がありまして……」


と伝えると






「今手空いてるからいいよ」


とおばさんが時間をくれた。







おばさんには


「家庭の事情で色々と
やらなければならないことができた」


ということを伝えて
辞意を話した。







急な話なので

どうすると良いか委ねますと伝えると





明日貸与したものを返してもらって

手続きは明後日にしようかと

すぐに辞めることを了解してくれた。










「そんなに泣き腫らした顔して……
詳しくは聞かないでおくけど
よっぽどのことがあったんでしょ?」



おばさんは頭を撫でてくれて

また涙が溢れ出た。







「良い子が来たって嬉しかったんだけどね。
こればっかりは仕方ないから……。
またおいで。
お客さんでもバイトでも。
おばちゃん、待ってるから」



私の急なワガママで迷惑だろうに
おばさんはすごく優しくて

私はおばさんにしがみついて号泣した。




機会があったら
またここで働きたいと強く思った。