「Vさんとのご関係は?」
「二股と言われてますがご存じでしたか?」
「Vさんとご結婚は
考えてらっしゃいますか?」
まだこの人数で良かった。
私は記者の間を少し強引に抜けて
無言を貫いたまま
足早に本屋へ向かった。
本屋の所まで
しつこくついてきた人もいたけど
建物の中に入ると
さすがについてくることはなかった。
なんとなく
人の目が怖くて
本屋に入っても帽子をとることもなく
むしろ深く被り直した。
落ち着かなくて少しうろうろしていると
白人で長身の社長が
入口から入ってくるのが見えた。
私はそろそろと近づいて
「社長……」
と小さく声を掛けると
「わ!!!ビックリした~~~」
と一歩下がっていた。
「○○さん…?だよね。
気づかなかったよ。
その格好どうしたの…?
なんか怪しいけど……」
「ちょっとワケありでして……」
「そっか…。
ま、とりあえず………ここ出よっか。
僕の会社にする?
それともどっかで美味しいもの食べる?」
社長は私の不審な格好に関して
深く聞こうとはしなかった。
「あの………会社でもいいですか…?」
「もちろん。
今日は僕しか居ないから
丁度寂しいと思ってたんだよ~」
そう言いながら社長は歩き出した。
私は再び緊張しながら外へ出る。
まだ張り込んでいる記者がいて
私は咄嗟に社長の陰に隠れた。
社長の身長に助けられて
記者に気づかれることなく脱出できたので
ホッとしていると
「○○さん、不審者みたい。
ま、後で事情は聞くけど
僕は普通にしてて大丈夫なのかな?」
社長は半分笑いながら問い掛けてきた。
「大丈夫です。すみません……」
社長は空気を読んで
私に合わせてくれた。