仕事の連絡先に
こんな私情で電話してしまったことに
掛けてから後悔をした。
「あ…………社長……………私………あの……………」
何と話したらいいのか分からずに
シドロモドロになっていると
「もしかして○○さん…?」
少し驚いたような声が聞こえた。
「…………はい。
あの……………今………
お忙しいと思いますので……
また…………あの……」
「いいよ、全然!
何かあった?」
社長は若干食い気味で
嬉しそうにそう言う。
「や………えっと………あの……………
…………………助けて…………ください………」
優しい社長の声を聞いたら
涙が出てきてしまって
気づいたらそんな言葉が出ていた。
「どうした?泣いてるの?」
「………………」
「話聞くから……出て来れるかい?
今どこにいるんだい?」
「………家………です……」
「近くまで行くから
どこに行くといい?」
「でも………仕事じゃ………」
「丁度アポイントも終わって
会社に帰る所だから大丈夫だよ」
普段だったら遠慮していたと思う。
でも酷く動揺していて
誰かに助けて欲しくて
私は社長の言葉に甘えた。
「すみません………
×××××という
本屋の所に……来ていただけますか……?」
「分かった。
大丈夫?一人で来れる?」
「大丈夫です………すみません………」
社長に相談したって何になるわけでもない。
そう分かってはいたけど
一人では心細かった。
私は酷い顔を隠そうと
マスクをつけて
帽子を目深に被って
少し準備をして玄関を出た。
怖くて震えが止まらなかった。
アパートの共通玄関を出た所に
10人くらいの記者が居て
焦った。
震えは増して
どうしようと冷や汗をかいたけど
顔は隠しているし、ここは冷静にと
呼吸を意識して自分を落ち着かせる。